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「6月28日か」
部屋に戻ってからさっき詩織さんから聞いた話を考えていた
自分の誕生日の日に親が交通事故にあう
それって多分想像できないくらい辛いんだろうな
幸せからのドン底だもんな
俺の母さんも死んでるけど病気だった
だからなんとなくもうすぐ死んじゃうってのは皆分かってた
そりゃあそれでも死んでほしくないって思ったし死んだ時はもちろん悲しかった
でもほんの少しだけ心の準備って言うのは出来ていたかもしれない
けど交通事故は違う
誰も予測なんてしてない急に起こるもの
それが例え家族で誕生日を祝って幸せの時だとしても
急に起こってしまう
だから心に残る傷は大きい気がする
ガチャッ
「っ!?」
扉の開く音にビクッとした
でも開いたのは俺の部屋では無かった
その音は俺の隣の部屋から結音の部屋からだった
普段なら気づかないのに今はテレビも付かず音楽も鳴らさず
無音の静かな中でボーっと考え込んでいたから
隣の部屋の音にまで気づいたのだった
「帰ってきたのか」
俺はなんとなく結音の部屋の方の壁に触れてみた
「お前も辛かったんだよな…」
何故か俺はそんな事を呟いていた
あんな話を聞いて感傷的にでもなったのかもしれない
アイツの心配なんかして
でもアイツでも多分泣くほど辛かったんだろうなって思って
「泣く…ほど?…っ!!」
俺は自分の呟いた言葉であることを思い出してしまった
それはアイツの結音の泣き顔
それを見たのは隆と奏斗に姉弟になった事がバレた時
あの時結音は必死に陽菜を探していた
そして見つけたとたんに泣きだした
俺はそれがすげえ驚きだっただから今でもハッキリ覚えてる
あの時陽菜は結音がトイレに行っている間に俺達を追ってきたと言ってた
それに見つけた時結音が「陽菜もお父さんみたいに」と呟いていた
そして今さっき聞いた詩織さんから聞いた健二さんの交通事故の話
これで分かってしまった
アイツが泣いていた理由が
そのまんまだもんな
トイレに行っている間に居なくなってるんだもんな
そりゃあ必死になるよな
2回も同じ目あうとかたまったもんじゃねえし
「あー聞くんじゃなかったな…」
理由が分かった途端に詩織さんに話を聞いたことを後悔してきた
なんかすごくモヤモヤするから
俺の事じゃねえのにアイツの事なのに
こんなにモヤモヤするのはなんか嫌だった




