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ガチャ
「あーお兄ちゃん帰ってる!!」
「おん」
風呂を上がった陽菜がリビングに入ってきた
もちろん一緒に入ってたアイツの姿も陽菜の後ろにあった
「てかお兄ちゃんご飯食べてる!!」
「え?」
陽菜のデカイ声にアイツは俺の方へと見る
すると驚いた表情になった
そりゃあ驚くか
この4日間自分の作った飯も弁当も食わなかった俺が
今アイツの作った飯食ってるんだもんな
「夜中にデカイ声出すな近所迷惑だ
てか早く寝ろ」
「偉そうにー」
ブーッとほっぺたを膨らせながらも陽菜はリビングから自分の部屋へと足を向ける
それの後を追うようにアイツも足を動かそうとする
「おい…茶ぐらい入れろよ」
「えっ?うん…」
「それぐらい自分で入れなよお兄ちゃん!!」
「陽菜には言ってねえだろ
ほらもう10時過ぎてんだ
陽菜は早く部屋行って寝ろ」
「えー」
「いいから寝ろ」
「分かったよー」
不服そうにおやすみと言って陽菜は二階へと上がっていった
そして1人残されたアイツは少し躊躇しながらもリビングの中に入りドアを閉める
それから無言のまま俺の注文通りお茶を入れにキッチンへと入る
リビングはすげえ静かだ
言葉を発さないからアイツがお茶の入れる音と俺が飯を食う音しかしない
入れ終わるとお茶の入ったコップを持って飯を食う俺の所へとやって来て
静かにコップを俺の傍へと置いた
それからどうすればいいか分からないのかそこにただ立ち尽くす
「座れば」
「うん…」
小さく返事すると俺の言うとおり俺が飯を食う目の前の席に恐る恐るも座る
座ってからも俺達に会話はない
俺はただ飯を口へと運んでいく
目の前のコイツはすごく居づらそうに俯きながら座っている
「あっあの…」
沈黙を破ったのはアイツだった
その声に俺は視線を飯からアイツに移した
まだアイツは俯いていた
でも俺はジッとアイツを見つめる
そしたらアイツの視線が上がってきて俺と視線が打つかった
「っ!!」
視線が打つかるとアイツは少し体をビクつかした後
すぐに俺から視線を外しもう一度俯く
でも俺は視線を離さない
アイツから視線を離さずアイツの言葉を待つ
少しするとまたアイツの唇が何か言いたげに少しずつ動いてくる
俺はそれが言葉になるのをジッと待つ
「あっあの…櫻井くん昨日は「 潤 」
「え?」
アイツは自分の言葉が遮られたことに驚いたのか
俺の言葉の意味が分からないのかパッと顔を上げた
そしたらまた俺と視線があった
でも今度は目を逸らさなかった
「潤でいい
櫻井って呼ぶのおかしいだろ
お前も櫻井なんだからよ
俺ら…家族なんだから」
「っ!?」
すごく驚いた表情を見せる
俺の口から放たれた言葉に
その当たり前の事実の言葉に
「分かったらおかわり入れてこい…結音」
「っ!!…うん」
初めて口にしたその名前と一緒に俺は茶碗を差し出した
そうしたらアイツの返事と共に俺はある表情を初めて見た
俺には向けられなかったあの笑顔を
その笑顔はみんなに向ける満面の笑顔ではなかった
でも俺に向かって笑う表情は初めてだった
だから俺はつい視線を外してしまった
外してただ俺は飯を口に運ぶしかなかった
大好物のハンバーグを




