12
「はぁ…」
今日はなんかすげぇ疲れた
バイトから帰り玄関で靴脱ぐのに座り込みため息まで出た
あんまり寝てないせいかな
今日は早く寝てしまおう
「しょっと」
オッサンみたいに掛け声と共に立ち上がる
そして弁当の入ったコンビニの袋を持ちリビングへと向かう
けど俺の手はドアノブを回さずに止まってしまう
今日の朝もそうだった
リビングに入るのが嫌なんだ
この数日続いたあの光景が無い気がして入るのに躊躇してしまうんだ
無くすきっかけを作ったのは俺なのに
「部屋で食うか…」
結局朝と同じくリビングには入らなかった
俺は直接自分の部屋へと入った
部屋に入り机に弁当を置き先に部屋着に着替えた
「はぁ…」
着替えが終わると今度はベットに座り込みまたため息が出る
ついでにイライラしてきた
胸がまたざわざわしてきたからだ
外に居る時より家に居る時の方がざわざわする
顔を会わせなくてもアイツが同じ家に居ると思うからだ
「あー鬱陶しい!!
なんで俺がこんなに悩まないといけないんだよ!!」
俺は別に悪いことして…してな…
アイツが根暗だから俺が…
全部アイツが…
「ぬあー!!
…先に風呂入ってスッキリしよう」
頭の中グチャグチャになりそうだったので風呂に入ってリフレッシュすることにした
「ん?」
風呂場に近づくと水の音がする気がした
陽菜かアイツが入っているのか確認するためにもう少し近づいてみる
「お兄ちゃんって意地悪だよね!!」
耳をすましてみると中から陽菜のムカつく言葉が聞こえてきた
「どうして?」
そしてもう一人陽菜の言葉に返すアイツの声も聞こえてきた
その声に少し身構えてしまう
でもその声はいつもの陽菜や父さん達に向けられる優しい声だった
俺に向けられるオドオドする声でも昨日の怒った声でもなかった
そんな声に俺は身構えた後どこか少し安心してしまった
てか2人で入ってるのかよ
どんだけ仲良いんだよ
そんな事を思いながらも憎たらしい陽菜の言い分を聞いてやるために
もう少しの間耳をすますことにした
「だってお姉ちゃんの事無視したり睨みつけたりするもん
それにご飯だってもうできてるのに急に要らないって言うんだよ」
「そうだね」
「ホントお兄ちゃんって意地悪!!
今度陽菜がお兄ちゃんにごめんなさいさせるからね!!
悪いことしたら謝らないといけないもん!!」
「陽菜は優しいね」
「えへへ陽菜はお姉ちゃんの見方だよ!!」
「ありがとう
でもねごめんなさいしないといけないのは私の方なんだよ」
「えっお姉ちゃんが?」
「うん悪いのは全部私なんだ
酷い事しちゃったんだよ
櫻井くんは何も悪くないのに
だから私が謝らないといけないんだよ…」
「・・・」
俺は風呂が入れないと分かったのでその場を離れ
先に飯を食いに買ってきた弁当がある部屋へ
ではなくリビングへ向かった
ドアノブに手をかける
一瞬迷ったけど俺はドアノブを回しさっきは入れなかったリビングへと入った
そして電気をつけるとすぐに机の上へと視線をやる
そこには無いと思っていた光景があった
それをちゃんと確かめるためにも近づく
そこにあったのは俺の部屋にある弁当と同じ物
この家で初めて食べた物
俺の大好きな物だった




