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「父さん再婚しようと思う」
「は?」
全く成長しない父さんのマズい飯を
俺、親父、妹の陽菜、家族3人で食べていると
その言葉はいきなり耳に入ってきた
「再婚って何ー?」
「もう一回結婚するって事」
「もう一回?」
「そうだな陽菜たちに新しいお母さんができるって事かな」
「新しいお母さん?
陽菜のお母さんはあの写真の人でしょ?」
俺達の母さんは陽菜が生まれて直ぐ病気で死んだ
俺が今の陽菜と同じ小学2年の時だった
「そうだけど
再婚をするともう一人お母さんができるんだよ」
「そうなんだ
ねえ陽菜も新しいお母さんに会える?」
「ああ会えるよ
再婚したら一緒に住んで一緒にご飯食べて一緒にお風呂入って一緒に寝るんだよ」
「お母さんと一緒に遊べる!?」
「ああもちろん」
「やったー!!
陽菜、お母さんと遊ぶー!!」
立ち上がり飛び跳ねながら陽菜は喜ぶ
たぶんちゃんとした意味は理解していないと思う
でも母親の記憶が全くない母親と言う存在をしらない陽菜は
みんなには居てずっと自分には居なかった母親ができると言うのが嬉しいんだと思う
「おお喜んでくれて嬉しいな父さん
…潤はどうだ?」
笑いながら陽菜を抱っこをする父さん
その後静かなトーンで俺に話を振ってきた
「…再婚する気あったんだな」
それが俺の最初の感想だった
父さんは全くそんな気配なんてさせてなかったと思う
だから少し驚いた
驚いてから再婚と言う言葉に色々頭が働いていく
「本当はする気はなかったんだけどな
してもいいと思える人に出会ったんだ
…でもみんなが反対するなら再婚はしない」
父さんはそう言ってジッと俺を見つめる
要するに俺の返答次第ってわけな
だったら答えは決まってる
「別にしてもいいんじゃねえの
もう一人母親ができるだけだろ」
「そんな簡単な事なのか潤?」
何故か興味無さそうに言ってみた
でもやっぱり真剣な話な訳であって父さんはゆっくりと俺に問う
「…正直言って直ぐには打ち解けないとは思う
母さんなんて一生言えないかもしれない
でもまぁ…慣れるんじゃね?」
陽菜と違って俺には母さんと過ごした記憶がある
だからって訳じゃないけど俺の母さんは母さんでしかない
でも父さんが再婚したいと言うなら
父さんがその人の事を本当に好きだと言うなら俺は反対しない
俺だってもう高2だ
今は居ないけど彼女がいた事だってある
だから好きな奴とずっと一緒に居たいって気持ちは分かる
離れたくないって思うんだよな
だから父さんがその人の事が本当に好きで再婚したいと言うなら俺は反対はしない
それに人生で一番大切な事は協調性だからな
慣れるってきっと
「じゃあいいんだな?」
「ああ」
「そうかありがとう潤」
「うん…」
礼を言って俺に笑いかける父さん
でもなんだか真っ直ぐ見れなくて視線を机の上のおかずに移しマズい飯を口に運んだ
「じゃあ今度の日曜日向こうの家族と食事会するから」
「今度の日曜日…って明後日じゃねえかよ!!
それに決めてあるのかよ!!
俺が反対したらどうするんだったんだよ!!」
しんみりムードから一気に変わってケロッと吐いた父さんのその言葉に
俺はツッコまずに入れなかった
「騙して連れて行って向こうで説得しようと思ってたよテヘペロ」
「自分の子どもを騙すって最低だな!!
てかテヘペロとか使ってんなよ気持ち悪い!!」
「まぁまぁそんな怒るなよ潤く~ん
でも父さん2人が賛成してくれるって信じてたからな
だから決めてきたんだ」
「あっそ…
ん?さっき向こうの家族って言ったよな?」
父さんの真っ直ぐなところには正直弱い
そんな事を思った時
さっきの言葉にもう一つツッコみたくなる場所があった
「あちらさんも再婚で娘さんがいる
潤と同い年の子だよ」
「はあ!?女でしかもタメかよ!!」
「それに加えて潤と同じ高校だ!!」
「はあああ!?同級生とか嘘だろ!!誰だよそいつ!!」
同級生の女子が明日から家族ですって
かなりすごい状況過ぎやしないか!?
「聞きたいー?」
「当たり前だろ!!」
「じゃあ…秘密!!日曜日までの内緒!!」
「なんでだよ!!」
俺が大声で喚くも父さんは面白そうにニコニコと笑うだけで
言う気は本当に無いらしい
「うー?」
そんな中話に付いて来ていない陽菜が首を傾げる
「あのな陽菜
新しくお姉ちゃんができるんだ」
「お姉ちゃん!?陽菜にお姉ちゃんができるの!?
やったー!!」
「うんうん2人が喜んでくれて父さんも嬉しいよ」
「俺はあんまり喜んでねえし」
それからと言うもの考えても答えは出ないのに
俺はずっとその女子は誰だろうと考えふけった
学年一可愛いあの子、今少し気になっているあの子、よく話すあの子
俺の妄想が膨らんでいくと同時に興奮してきてしまいその日は寝付くのに時間がかかった




