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次の日の朝
俺は昨日より少し遅く起きてしまっていた
用意をして下へ降りるともうそこには誰も居なくて
机の上に俺の分であろう
ラップのかかった朝ごはんが残っているだけだった
メニューは目玉焼きとベーコン、サラダ
テレビとかに出てくる感じの普通のメニュー
でも俺はあまり食べる気になってこない
何故なら理由は一つしか無い
昨日は詩織さんが居たけど今日は早出でもう居ない
そして昨日の詩織さんとの話からして
これを作ったのはアイツ
それが俺が食べるのを躊躇する理由
あー朝ごはんなんて別に食べなくても死なねえよな
と言うことで面倒くさいからそれを放置する事にしよう
グー
食べないと決めた瞬間
誰もいないリビングに俺の腹の虫が響き渡った
「…時間あるし食べるか」
時計を見るとまだ出て行くには時間があったから机の上にあるそれを食べた
時間があったからな時間が
朝飯を食べ終え食器を流しに置きに行く
その時ある物が目に入った
それは昨日俺が高校に入って初めて持っていった弁当
それを見てまた昨日の詩織さんの話を思い出す
確か早番の時はアイツが朝ごはんと弁当を作るとか
だからこれが昨日俺が帰ってきてカバンから出した空の弁当箱では無かったとしたら
アイツが作った俺の弁当となる
俺は恐る恐るその弁当に手を伸ばした
そしてそれを持ち上げその重量を確認した
「やっぱり俺の弁当か」
予想通りの嬉しくない重量が手にかかった
これは俺の分の弁当であって
アイツが俺に作った手作りのお弁当
どうしてこんなにも嬉しく無いのだろうか
普通女子に作ってもらった弁当は嬉しくて堪らないものではないのか男子諸君
でも俺は今全く嬉しくない
もちろん理由はわかっている
アイツの手作り弁当だからだ
「どうすんだよこれ」
持っていくのか?
アイツの弁当を?
なんか嫌だ
よし置いて行こう
別に俺の分って言われてねえし
もしなんか言われても言い訳できるよな
…いやアイツと話す方が面倒くさいな
アイツに言い訳すんのも負けた気がしてなんか嫌だ
そんな事で俺はその禍々しい弁当をカバンの中に入れて学校へ行くのだった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「潤弁当食べねえの?」
昼休み昨日の弁当とは違いどうも箸が進みが悪い
「…食べてるだろ」
「でも全然食ってねえじゃんマズいの?」
「…美味いけど不味い」
「何それ意味不明
じゃあ俺が味見してやるよ!!」
そう言って隆が俺の弁当から卵焼きを1つ奪い自分の口の中に放りこんだ
「美味い!!
普通に美味いじゃんどこが不味いんだよ」
「言ってんだろ美味いけど不味いって」
「だから意味不明!!」
「潤の好みの弁当じゃないんじゃないの」
「まあ…そんな感じ」
奏斗の言葉は大体当たってる
「でも潤の嫌いなもの入ってないじゃん
それにこの玉子焼き潤好みだろ
昨日のはしょっぱかったけど今日のは甘いし
潤好みに作ってくれたんじゃないの?」
「そんな訳……甘い」
隆の言葉に釣られて食べてみるとその玉子焼きは甘かった
「だろ?もろ潤の好み」
「潤に合わせて作ってくれるなんて本当に良い人なんだね」
「なっアイツがそんな事する訳ねえよ!!」
確かに俺が甘い物好きってのはバラされたけど
それでアイツが俺のためにそんなする訳がない
ただそれがアイツの好みだっただけに違いない
…ってそれもそれで趣味が合う感じで嫌だけどな
「昨日と言ってること違うよ潤
…何かあった?」
「えっ!?あっいやっ何も!!」
奏斗の一言で自分で墓穴を掘りに言っていることにハッと気付き
慌てて誤魔化した
「そう…」
「もう潤我儘だよな
弁当作って貰えるだけでも有難いってのによ
と言うことで食わねえなら俺のパンと交換!!」
「誰も食わねえって言ってねえだろ!!」
隆に奪われそうになった弁当を引き戻し
取られないようにかき込む
「あ~俺の弁当が~」




