13
「あーどうすっかなー」
俺は昼休みから家に着いた今も尚
隆たちをどうやって家に呼ぶか悩んでいた
勢いで呼ぶと言ってしまったからには呼ばなくてはいけない
呼ばないと隆が煩い
恐らくいや絶対
「はぁ~…ん?」
玄関で靴を脱ぎため息を付きながら自分の部屋へ戻ろうとした時
昨日初めて聞いたピアノの音色がリビングから聞こえてきた
でも昨日とは打って変わって聞いてられないほど下手くそな音色
辛うじてきらきら星を弾こうとしているのが分かるくらい
アイツは徒歩で登校しているから俺より早く帰る訳がない
よって総合的に分析すると
いやするほどでもねえけどこれは陽菜が弾いている
俺は一応挨拶がてら覗いてやる事にしリビングへの扉に手をかけた
ガチャッ
「あっおかえりーお兄ちゃん」
リビングに入ると案の定
ピアノの前に居たのは陽菜だった
俺に気づくと楽しそうな笑顔で出迎えた
「ピアノにハマったのか陽菜」
「うん!!すごく楽しいよピアノ!!」
「糞下手だな」
「当たり前だよ!!昨日始めたんだもん!!
でも頑張って練習してお姉ちゃんみたいに弾けるようになるもん!!
ほらお姉ちゃんに楽譜貰ったんだから!!」
そう言って昨日アイツが弾いていた曲とはレベルが違うであろう
簡単そうな楽譜を嬉しそうにドヤ顔で見せてくる
「まあ頑張れよ」
「うん頑張る!!
よしっ!!お姉ちゃんが帰ってくるまでにここまでできるようになろう!!」
やる気満々で陽菜はまた下手くそな音色を奏でる
どうかそのやる気が3日で消えないことをお前の兄は願っているよ
てかそんな事よりあれだな
陽菜の奴懐き過ぎじゃね?
なんでだ
どうしたらそうなる
「なあ陽菜
お前アイツの事好きか?」
「アイツ?お姉ちゃんの事?」
「…ああ」
お姉ちゃんと言われると返事にちょっと渋りそうになったが
会話を続けるために一応肯定をしておいた
「うん陽菜大好きだよ!!
お姉ちゃん優しいもん!!」
「優しいね…」
「それにピアノ上手で陽菜にも教えてくれるし
お姉ちゃんのご飯も美味しいし
陽菜の髪結んでくれるし」
「あーそう」
陽菜は嬉しそうに言うけど俺には全く刺さらない
あー俺の中では学校のアイツが本物だからな
陽菜もあれ知ったら絶対に嫌になるのにな
「お兄ちゃんはお姉ちゃんの事嫌いなの?」
「なんでだよ」
「お姉ちゃんとお喋りしたこと無いでしょ?
それにお姉ちゃんを見る時お兄ちゃん睨んでるもん」
おおこいつガキの割には良く見てるな
でもそれは俺のせいじゃなくでアイツが悪いわけであって
…って言うのは陽菜には言えないよな
だからここは
「あれだよ思春期なんだよ」
「あーまた出た思春期!!
思春期って何?陽菜分かんないよ!!」
「ガキは分からなくていいんだよ」
「陽菜ガキじゃないもんハゲ!!」
「ハゲ以外に言えるようになれよチビ」
「もう意地悪なお兄ちゃん嫌い!!」
キーキー叫ぶ陽菜を放置して俺は部屋に戻った
「大好きねえ…」
あり得ないな
あんな家でネコ被ってる奴の何処がいいのか
てかネコ被るなら普通外だろ
意味分かんねえ
「あー俺も大好きな姉ちゃん欲しいぜ」
アイツ以外なら誰でもいいや
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
特にやることもなく部屋でダラダラ過ごしていたけど
夕方頃に喉が乾き飲み物を取りに下へと降りた
ガチャッ
リビングに入ると陽菜とアイツが居た
2人は楽しそうに話しながら洗濯物をたたんでいた
俺は特に声をかけることもなく
そのまま台所の冷蔵庫に向かい中から適当に飲み物を選ぶ
そしてそのまま何も発さず部屋へ帰る
「お兄ちゃん!!」
帰りたかったが帰れなかった
「なんだよ」
「お兄ちゃんも洗濯物畳むの手伝ってよ!!」
「はあ?洗濯畳むのに3人も…っ!!」
面倒くさいからアイツと居たくないから断ってリビングを出ようとしたけど
俺はある物が目に入り動く足と口が止まってしまった
ある物とは俺のパンツ
これから畳まれようとカゴに入っている俺のパンツ
アイツに畳まれるかもしれない俺のパンツ
無理!!
それはダメだろ!!
ありえねーだろ!!
「止まれ!!」
「「 !? 」」
俺はすかさず叫んでいた
その叫びに2人は体をビクつかせ驚き手が止まる
「もう何なのお兄ちゃん!!
いきなり大きな声出して!!煩いでしょ!!」
「洗濯物は俺が畳むからお前らはやらなくていい」
「えーどうして?」
「どうしてもだ!!」
その中には俺の下着が入ってんだよ
陽菜や父さんの下着だけじゃなくて俺のが入ってんだよ!!
どうでもいいような陽菜や父さんの下着だけじゃじゃなくて
…陽菜や父さんの下着だけじゃなくて
……俺以外の
………アイツの下着も
「っ///」
「もう意味分かんないよー
ん?なんでお兄ちゃん顔赤いの?」
「べっ別に赤くねえし!!
おい陽菜!!今日から毎日お前が1人で洗濯物畳め!!」
「えー今お兄ちゃんが1人でやるって言ったのに
それになんで毎日陽菜が1人でやるのー!?」
「それは…その…あれだよあれ…」
「あれじゃ分かんないですー」
憎たらしい顔しやがって
これだから小学生ってのは生意気で嫌いなんだよ
てか察しろよな
少なからずお前も女子だろ陽菜
俺は男なんだよ
健全たる男子高校生であって
彼女が約1年近く居ねえんだよ
それなり溜まってるんだよ
男だったら誰だって相手が誰だろうが少なからず反応すんだよ!!
って1人でそんな事思ってても口に出すわけにはさすがにいかねえ
何か何かないのか俺!!
「あれって言うのはな…!!
そう!!家事の分担だよ!!」
「家事の分担?」
「そうだ分担だ
親が共働きだからな家事はみんなで分担しないとな
だから今日から陽菜は洗濯物係だ」
よく絞り出した俺!!
至って普通の理由でしかないぞ!!
何も如何わしくない!!
「お兄ちゃんは何係?」
「ああ?俺?
俺は…風呂掃除でもやるよ」
「じゃあお姉ちゃんは?」
その言葉で反射的にアイツの方に自分の視線が行く
するとあの食事会以来にアイツと目が合った
アイツは少し驚いた表情で俺の事を見ていた
その表情も初めて見た
でも目が会ったのは数秒だった
アイツが速攻で目を逸らした
あーアイツらしいね
これがアイツだよ
俺は知ってんだよ
本当のアイツを
俺をイライラさせてくれるんだよな
「…晩飯でも作っとけばいいんじゃね」
「分かった!!それなら陽菜頑張る!!」
「おお頑張れ…」
俺は適当に陽菜に返事をしてやると直ぐに部屋へと戻った
ドンッ
部屋に入るとベットへと身を投げる
あーイライラする




