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ジリジリジリジリ
「んっ…うさい…」
新しい家に住み1日目の朝
頭の上で鳴る目覚まし時計に手を振り落とし
俺の朝が始まった
「8時10分か…へへへ」
普通なら朝目覚ましの時間を見て笑顔になるのはそうそう無いだろう
俺もいつもそうだ
最悪顔を青ざめて飛び起きることもしばしば
だがしかし!!
今日は違う!!
何故ならこの新しい家は学校までチャリで7分だからだ!!
更に飛ばせば5分!!
前の家からは25分かかる
そうだから寝れる時間が増えたのだ
「さいこ~」
俺は幸せ気分でグッと背伸びをした
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おはよう潤くん」
「おはようございます」
着替えリビングに行くと詩織さんが笑顔であいさつをしてくれた
「あーお兄ちゃんやっと起きてきた遅刻しちゃうよー」
「しねえよ
てかお前何してんだよ」
朝っぱらから鬱陶しいくらい元気な陽菜
その陽菜が何やら既に身支度を済ませたアイツに髪をいじってもらってる
「お姉ちゃんに髪くくってもらってるの
いいでしょー」
「ちんちくりんは何してもちんちくりんだ」
「うっさいハゲ」
「ハゲてねえよ」
挨拶のようなその適当な掛け合いをしながら
俺はウマそうな朝飯の並ぶ机に少し違和感を持ちながらもつく
そして手を合わせ朝飯に食らいつく
「はいできたよ陽菜」
「ありがとーお姉ちゃん!!
あーもう行かないと!!
行ってきまーす」
「行ってらっしゃーい」
あー騒がしい
陽菜はアイツに髪を結んでもらったら
時計を見て慌てて直ぐ傍に置いていたランドセルを背負い飛び出した
「私も行ってくるね」
「気をつけてね」
今度は詩織さんに見送られアイツは出て行った
え?
早すぎねえ?
今8時20分だぞ
HR始まるの8時50分だぞ
5分で行って後の25分何すんだよ
「潤くんは急がなくて大丈夫なのかな?」
茶碗と箸を盛ったままアイツの出て行ったリビングの扉を眺めてそんな事を考えていると
詩織さんが声をかけてきた
「だって学校までチャリで5分ですし
まだまだ余裕で…」
「あら潤くんは結音と違って自転車で行くのね
あの子も自転車で行けばいいのに」
「そう…ですよね」
まさに詩織さんの言う通り
なんでアイツわざわざ早起きして歩いて行くんだ
バカなのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ごちそうさまでした」
「あっ潤くん」
朝飯を食って一度自分の部屋に戻ろうとした時
詩織さんに呼び止められた
「はい?」
「お昼どうする?
一応お弁当は作ってあるけど…
持っていく?それとも学食とか行く?」
「弁当…」
そう言えば机の上に男物の弁当が包んで置いてあった
父さんは既に会社に行ってるしそりゃあ俺のだよな
手作りの弁当…母さんが死んで以来食べてねえな
いや何回かはあるな
遠足の時に父さんが作ったよあのザ男弁当
「どっちでもいいわよ
要らなかったら私が保育園に持って行くから」
「持って…いきます」
「そう?じゃあはいっお弁当」
「…ありがとうございます」
なんだろうこの感覚
なんか良い意味で気持ち悪い
「いいえっ
そうそう私今日遅番で晩ご飯までに帰って来られないから
先に食べておいてね」
「分かりました」
「晩ご飯の事は心配しないで大丈夫よ
私が遅番の時は結音が晩ご飯作ってくれるから」
「そうなんですか?」
「遅番の時は私が朝ごはんとお弁当で結音が晩ご飯
早番と普通番の時は結音が朝ごはんとお弁当で私が晩ご飯
いつもこうしてるの
まあご飯以外にも結音に家事を結構お願いしてるけどね
本当に結音には頭が上がらないわ
でもこれからは潤くんたちもお手伝いお願いするわね」
「はい…」
俺の所は近所にいる婆ちゃんが週に2日来て家事をまとめてやってくれてた
でもアイツの家は違ったんだな
そう言えばアイツの婆ちゃんたちは田舎の方にいるってこの前聞いた
結構大変…だったんだな




