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◆7◇


ちゅんちゅん…………


頭のどこか遠くの方から雀の鳴き声が聞こえる。


「う…………ん」


引きずられるような感覚でゆっくり目を開くと、窓から差し込む日の光の眩しさに思わず顔をしかめた。

しぶしぶ枕元に置かれていた目覚まし時計に手を伸ばす。


「9時か………」


日曜日。

とうとうこの日が来てしまった。

これほどまで待ち望まなかった日は今までなかっただろう、っていうぐらい。


携帯を開くと8時過ぎに理子から一通のメールが入っていた。

内容は、今日は無理してこなくていいからねと気遣うもの。

私は「大丈夫、行けるよ。ありがと」と短く返信すると、のそのそと起きあがった。


今日は約束の合宿の買い出しに行く日だ。

勝手に私情を挟んで行かないわけにはいかない。


………あの日、再び昂のキスシーンを目撃してから昂を目の前にして今まで通りに振る舞うことが出来なくなった。

理子もそれを察して色々と庇ってくれたから、昂に昨日まではそんな様子を気付かれずにすんでいたと思う。放課後の仕事も理子が積極的に手伝ってくれて昂と2人きりにならないようにしてくれたおかげだ。


だけど今日はたった4人で行くのだ。

昂の顔を見ただけで感情に抑えがきかなくなってしまいそうで、どうしようもない不安にかられる。いつボロが出てごまかしがきかなくなるか分からない。


バレるわけにはいかない。

バレたらそこでゲームオーバー。

「友達」という関係の遮断の瞬間。


集合は駅前に午後1時だ。あと4時間近くある。


私はクローゼットに向かうと何着か服を引き出した。その中から適当にTシャツとズボンを選ぶ。

まあ、見て分かるように自分はこんなんだし似合わないのも承知しているから、もちろん女の子らしいスカートだとかキャミだとかそんなものは一着も持っていない。

というかズボンの方が機能的だし動きやすいから楽だしね。


本当に私って女じゃないよなーと自嘲気味に苦笑しながら着替え終えると、カバンに財布と携帯だけ入れ、そっとドアを開けて廊下に出た。


廊下はしんとした空気が漂っている。

お父さんもお母さんも出掛けたのかな?


リビングに行くとテーブルの上に書き置きのメモが残されていた。


--------------------


かおるへ


ちょっとママとパパは楠原さんのご夫婦と一緒に出掛けるので、もし外出するようなら戸締まりをしっかりね!

帰りは夜になると思うから、もし夕飯を家で食べるんなら冷蔵庫のものを温めて食べてください♪


--------------------


……はっ!?楠原さん!?


びっくりして手にしていたメモを凝視する。

だが何度読んでも間違いなくそう記されているわけで。


はああぁぁ〜〜またなわけ?


思わずため息が漏れる。


うちの両親と昂の両親は昔からどっちもどっちっていうぐらいラブラブで両家仲が良かったから、いい年してダブルデートまがいのことをよくやっていた。

ついでに小さい頃はその間私は昂のもとへ預けられていたため、いつも2人で遊んで帰りを待っているといったような感じが当たり前になっていた。


私はもう一度深くため息をつくと、窓の鍵をチェックし終え、足にサンダルを引っかけて外に出た。


ん?なんでこんな早くから出掛けるかって?

お忘れかもしれないけど昂と私は家が隣同士。

今までの経験からしても、昂はきっと流れで駅まで行くのに私を迎えに来ることになるだろう。


一緒に行く=つまり2人きりになるということなわけで………

それだけは避けなきゃならない絶対事項だ。冗談じゃない。


とまあ、ここまで頭をフル回転させて結果、先手をうつことにしたわけだ。


天気は上々。

夏らしい青く澄み切った空に、大きな入道雲が浮かんでいる。セミは合唱しているし、太陽はじりじりと肌を照りつけてきてじっと立っていても汗が服にしみてくる。


明日からもう合宿かあ………

どうせ今から4時間も暇だし、明日の用意のものを買ってカフェでゆっくりでもしてればあっという間に集合時間になるよね。

よし、とひとりで勝手に頷くと、暑さを振り切ってデパートに足を進めた。



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