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◆4◇


「あ〜〜〜っっ!!まじありえねえ、かっしーの野郎!!何だよこの半端ない仕事の量はっ!!明日からまじ死ぬって、俺ら」

「本当に…少しでも先生のこと見直した自分が馬鹿だった」


学校からの帰宅途中―――……


私と昂の家は学校から電車で二駅、歩いて10分のところにあり、勿論今でも引っ越すなんてこともなく家は昔のまま隣同士なので久しぶりに一緒にこうやって帰っているわけなのだが……

せっかく昂と帰れる貴重なチャンスだというのに、どっかの誰かさんのせいで台無しだ。

帰り道は文句&悪口大会で大いに盛り上がる事になってしまった。


まあ、別に甘い空気なんてはなから期待してなかったけど。

期待したところで昂には彼女がいるから、どうかなるわけでもないしね。

昂の彼女は相変わらず高校に入ってからもころころと変わってるみたいで、今は噂によると男バスのマネージャーと付き合ってるらしい。何だかんだ言ってしっかり傷ついちゃってる自分に腹が立つ。少なくともこの想いに気付くまでは、こんな隠れ乙女キャラみたいじゃなかったのにさ…

いっその事告白でもして派手に玉砕してやろうとまで考えたんだけど、最近やっとなれた「友達関係」を同時に失ってしまうのは正直怖くて出来ないでいる。

ていうか、私なんかが告白したらそれこそ永遠に語り継がれる笑い話になりそうだし……


「…い、おい!…薫?聞いてるのか?」

「へ?ああ、ごめん。なに?」

「どうした?珍しくお前にしちゃぼーっとしてるけど…」

「……そう?先生への文句が溜まりすぎちゃったのかも」


くすっと笑ってごまかして見るが、昂は訝しげに私の顔をじいっと見ている。

そんな顔をしていても格好よく見えてしまうのだから憎らしい。本気で人間って不公平だよ、神様。


「ほらっ、明日からどうする?部活終わってから作業するしかないよね?休み時間って10分しかないし、昼休みは昼練あるでしょ?」


私は負けじと目をそらさずににっこり笑う。

顔がきっと赤くなってるのは暗いしバレてないよね?


「……あ、ああ。部活はいつも大体6時ぐらいに終わるから、8時位までは居残れるんじゃないか?そこはかっしーに交渉すればなんとかなるだろ。」

「そうだね。じゃあ買出しは?いつ行く?」

「ボールにボトルにテーピングだっけ?二人じゃ絶対持ちきれないから麻田とアカツキに手伝って貰おうぜ。薫は?いつなら行けんの?」


暁とは男バスの副部長のアカツキ直哉ナオヤ君のことだ。昂並みに高い身長と割といい顔をしているので、昂と一緒に並ぶと妙な迫力があったりする。比較的いつも無口な人かと思ってたんだけど、話してみると結構面白い人で最近はクラスも同じだしよく話す事が多くなったかな?


「私は基本的にはいつでも大丈夫だよ。学校帰りでも平気だし。だけど部活帰りに行くのも疲れそうだし今週の日曜日とかはどう?昂は大丈夫?」

「ああ、俺はそれでいいよ。じゃあ日曜日にしようぜ。暁には伝えておくから」

「分かった。私も理子に伝えておくね」


気付けばいつのまにか家の前まで来ている。


「じゃあ、また明日な。色々大変だけどぼちぼち頑張ろうぜ。かっしーをびっくりさせるぐらいの勢いで」

「あはは!うん、がんばろー。じゃあまたね」


別れの挨拶を言い合うと、お互い自分達の家に入っていった。

「バタン」と玄関の扉を閉めてずるずるとしゃがみこむ。


はあああ〜〜〜〜〜緊張した……

2人きりだったの本当に久しぶりだったからな?もしかして小学校以来?


顔に手をあててみるとやっぱり……肌が熱くなっているのが分かる。


私は落ち着こうと一息吐くと、今までの空気を振り切るかのように「ただいま」と大声を出してリビングへと向かった。



***** ***** ***** ***** *****



翌日学校に行き、朝練が終わって教室に向かう途中で早速理子に話を切り出してみると快く了解の返事をくれた。


「ふう〜ん、でもお邪魔じゃない?」

「邪魔?」

「そうだよ!だって私と暁君がいなかったら楠原とふたりっきりで日曜日にデートだったって事になるわけでしょ?なのにいいのかなあ〜?なんて思ってみたり」

「はあっ!?」


デート!?何を言ってるんだ!?


ついでに付け足しておくと理子には何故か私が昂の事を好きだってことがばれていたりする。何で分かっちゃったんだろう?

そんなに私って分かりやすい態度を気付かぬうちにとってしまっているんだろうか??


「きゃああっ、薫ったら可愛いっ!!顔真っ赤になってる〜!ホントに薫っていつもクールな癖にいきなりこんな顔するなんてそのギャップは反則技だよぉ〜〜!!楠原もこの顔見たら絶対抱きしめたくなっちゃうって!!」

「だっ……!?そんな事あるわけないよ!!!大体アイツ彼女いるし」

「彼女?ああ、男バスマネージャーの『ウザザカ』の事?」

「う、うざざか……?」

「そうっ!私ホントあいつのぶりぶりした態度駄目なんだよね!マネージャーの癖に仕事は全然出来ないし、その上楠原に対する態度は他の部員と天と地の差って言うぐらい違うし!女子の間でもすごい嫌われてるから、ウザイってことで櫻坂サクラザカの名前から通称『ウザザカ』って呼ばれてるんだよ。」

「へ、へえ〜…」


知らなかった……女の子って怖いかも……


「ったく、楠原の奴もホント趣味悪いよね。なんであんなのと付き合えるのか理解出来ないわ。私だったら絶対薫を選ぶのにな〜!」


そう言いながらぎゅっと理子が私に抱きついてきた。


「ちょ、ちょっと理子っ…こんな事してたら裕樹ヒロキ君がヤキモチ焼いちゃうよ?」


それに廊下でこんなことをしてたら目立ってしまう。

必死に理子の巻きついてくる腕を離そうとするが、理子は離れる気配を見せるどころか困った事に更に腕に力を入れてくる。ついでに裕樹君とは同じクラスの理子の彼氏のことだ。


ちょ、ちょっと理子……


「ひろきぃ〜?いいのよあいつの事は放っておいて〜」


うわ…すごい言われ草だよ、裕樹くん……


「にしても薫って無駄な筋肉がついてなくて華奢ですらっとしてる割には、胸がとんでもなく大きいんだよね。着替えるときにいつも思ってたけど。」

「は?え、ってちょっと!!理子っっ!!!何やってんの!?」


胸を触られて慌てて体をひこうとするがあっけなく阻止される。


だからここ廊下だってばっ…!!

てかうわあぁぁあ〜〜っ、皆見てるしっ!!!


時はすでに遅し。

案の定いつのまにか注目の的となってしまっている。


「薫ってEカップはあるわよね?ホントに羨ましいわぁ〜〜抱き心地もめちゃくちゃいいし」


ホントにもう勘弁してください、理子さん…


バストのサイズまで廊下でさらりと暴露され、恥ずかしさに耐えられずもはやこの場から消えたくなった。

抵抗する事も忘れ、じっと耐えていると突然後ろから、


「おい、いい加減そこまでにしといてやれよ。麻田」


と聞き慣れた声が聞こえた。







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