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◆1◇

「6番と11番マークしてっ、がら空きになってる!」

「パスこっちあいてるよっ」

「今だっ、スリーうってカオル!!」


絶妙なパスが理子リコから回ってきて、言われるままにシュートを放つ。吸い込まれるように、ボールが「シュッ」といい音を立ててネットの中に入ると同時に「ピーッ」と終了を告げる笛が体育館に鳴り響いた。


「きゃーっ、薫すごい!!ナイスシュート!!あんな土壇場でよくスリーポイントシュートが決まるよねっ、もう天才!!!」

「理子こそナイスパス!入ったのはたまたまだって。理子のパスが良かったからだよ」


理子のパスはスピードがあってカットしにくい上に、的確に胸のちょうど真ん中にパスが来るからシュートがすごくうちやすい。おまけに指示も的確だから、迷わずにシュートをうつことが出来るのだ。


微笑んで理子にそう言うと、理子は不自然に私から目をそらした。


「理子?」

「あーもぉ……だからその笑顔は反則だってばあ…」

「え?何?」

「なんでもないですーっ、たく、天然ってホント困る!」

「は?」


理子が何が言いたいのかさっぱり掴めない上に、なぜか逆ギレまでされている。理子が考えてることは時々よく分からなくなる。


理子こと麻田アサダ 理子リコは私、波風ナミカゼ カオルの親友で中学校からの付き合いだ。身長は160センチよりあって、長い茶色い髪を後ろでポニーテールに結っていて可愛い顔をしていると思う。少し童顔のように見えるときもあるが、どっちにしろ黒髪でベリーショートの私なんかじゃ比較にならない可愛さだ。


「薫っ、理子っ、ナイスコンビネーション!!してやられたって感じっ」

「ホントホント、薫ってばかっこよすぎだから!もう頼もしすぎますよ、キャプテン!!」


理子と話しているとチームメイトの子達が駆け寄ってきてボトルとタオルを渡してくれた。長時間ずっと動き続けてたせいかとんでもない汗の量でTシャツがびしょぬれだったから助かった。今更ながら喉がからからだった事にも気がつく。

てかそこまで大げさに誉められるとかえってこっちが恥ずかしくなるんだけど…。汗をタオルで拭いながら私が苦笑すると、なぜかうっとりとした視線が集まってきた。


………な、何だ?


「本当にはにかんでも絵になるよねー薫って…」

「汗もしたたるイイ男、じゃなくて女だけど!なんか美少年相手に自分がイケナイお姉さんになっちゃったような錯覚を覚えちゃうよね」

「分かるわかる〜!!美人な上にかっこいいしねぇ」


いつのまにか周りに集まってきた一年も、こくこくと頷きながら何故か同意している。


もしもーし、全くもって意味が分からないんですけど…。ここはどこぞやの星ですか?むしろアレですか?私の方が異星人なわけですか?


すると話を打ち切るように、理子が「パンパンッ」と勢いよく2回手を叩いた。


「はいはーい!皆の気持ちはすごくよく分かるけど、とりあえず部活終わらせよ!まだ早いから男バス見れるよー!」


その言葉を耳にするや否や話を打ち切って皆黙ってさっさと片づけを始め、着替えに更衣室へ向かう。その切り替えの良さには毎度の事ながら感服してしまう。浮き足立つどころか何故か怖いぐらいに皆顔が真剣になってるし。

私が思わず吹き出すと、理子がニヤニヤしながら近づいてくる。


「やっぱりアレよねー。うちの学校って何故か男バスにイケメン集まってるしね。特に楠原ナンバラがいるし皆はりきるわよ、そりゃー」

「あー…まぁ、確かに……ね。学校の女の子達も放課後よく男バス見にいったりしてるしね」



うちの学校には体育館が1号館、2号館と2つあって、2つの体育館は渡り廊下で繋がっている形になっている。1号館が女子、2号館が男子と決まっていて日替わりでバレー部と交替して部活をしているのだ。おかげで体育館を男子とハーフ(半分)で使うこともなくのびのびプレーが出来て使いたい放題だから良いんだけどね。


「そうねー、ここにいても2号館から歓声が聞こえるし。いやぁ盛り上がってるな〜」


耳を済まさなくとも自然に女の子達の黄色い声が耳に届いてくる。

私と理子はお互いに顔を見合わせなんとなく笑い合うと自分達も更衣室へ向かった。



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