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第4話

 強盗事件発生から一月たった十一月初旬の休日、事件は予想外の展開を見せた。それは朝刊の一面トップ記事で知った。


 逃走中の山崎忠志が、警察に追い詰められて民家に侵入し、人質を取って立て籠もっているというのだ。


 和樹はすぐにテレビをつけた。すると朝のワイドショーで、その事件が報じられていた。しかし機動隊に囲まれた民家の門を何人もの警察官が慌ただしくくぐって行く画面が流れていたので、人質はもう解放されていたようだった。


 現場のレポーターが紙をめくりながらしゃべり始めた。


「もう一度繰り返します。昨夜発生した先の銀行強盗犯による人質籠城事件は、犯人の射殺という衝撃的な結末を迎えました。人質の田崎由美子さんも、犯人に拳銃で撃たれ負傷している模様、先ほど救急車で搬送されましたが、怪我の程度は不明です」


 パン工場が休みだったその日、和樹は一日中テレビを付けっ放しにしてニュース番組を見続けた。


 簡易宿舎にいるところを警官に発見された山崎は、逃げる途中に拳銃を発砲し、一人の警官が負傷している。


 たまたま通りかかったバイクを奪って逃走を試みたが、すぐにパトカーに追い込まれ、苦し紛れに逃げ込んだ民家に一人暮らしの老女が在宅していて、山崎は彼女を人質に立て籠もるしかなかった。


 警察が説得と時間引き伸ばしを図っていた時、突然家の中から発砲音と女性の悲鳴が聞こえた。警察は人質の生命が危険に晒されていると判断して突入し、短い銃撃戦の後、犯人射殺という結末に至った。近年稀に見る馬鹿げた騒動である。


 女性は左足の太ももを撃ちぬかれていて、後三十分遅れていたら出血多量で危なかったという医師の見解が、警察の判断を正当化していた。

 

 翌日の新聞には、犯人が射殺されたことが一面トップで掲載されていたが、奪われた金の行方については、何も書かれていなかった。


 翌々日の新聞には、強奪された金の一部である二千万円が、中田の家の床下から発見されたとあった。主犯の山崎が強奪した金のほとんどを分捕り、中田には二千万円ぽっきりを配分したに過ぎないようだった。


 ならば残りの金の行方は?それについては被疑者死亡ということで、まだ不明のままだった。中田も、残りの金については知らないと言い張っている。


 その金の行方を知っているのは、自分だけだと和樹は思った。


 あの時林道で見かけたのは一人だけ、恐らくそれが山崎だったのだろう。他に誰もいなかった。だから共犯者の中田も、あんな場所に金を埋めたことは知るはずもない。


 和樹は思わず身震いした。そして、いよいよ次の休日に掘り出しに行くことを決めた。


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