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ここはなにかが欠けている

本日の問題児。

作者: 浮月重月
掲載日:2026/07/31

冒険者組合の窓口には、実に様々な人達が訪れてくる。

例えば、解決して欲しいご依頼の申し込み。


薬師の方なら、薬草が不足していて必要量の回復薬が期日までに作れない、

緊急採集依頼を出してほしい、とか。

では、見習いさん達に声をかけ頑張っていただきましょう。


商人の方だと、使用している交易路のひとつで害獣被害が増えているので、

集中的に駆除を強化してもらいたい、とか。

はい、腕自慢の方々に情報を流しますね。獲物がいますよって。


冒険者の独身男性達からは、好きなので結婚して欲しい、とか…

これはうちの組合長が仕組んだ受付嬢争奪杯だったけど。

…思い出したら少しイラッとしてきた。


で、目の前のご依頼ですが。

なんと、恋文の代筆を依頼されましたですよ。そして報酬は高額。

こんなのって普通、冒険者に頼む事かしら。



依頼主の方は、匿名の結構可愛らしい少女。上品な服装と仕草を見る限り、

親御さんは大商人とかそれなりのお貴族様なのだろうなと思われる。


実はご依頼は、依頼者が匿名で提出することも許されている。

無論、組合側では受諾したご依頼に違法性がないか把握するため、

どこの誰なのかは依頼主に内緒で調査がなされる、らしい。

(そういう班が存在する、とは上から聞かされている)


この女の子も、隠しておきたい秘密のひとつふたつみっつはあるだろう。

さすがに恋文に違法性も何もない、と思うし。


ご依頼の件だけど、ある男性に一目惚れしてしまったという、

実に初々しい、聞いたこちらが照れてしまうようなお話だった。


どこのどなたかは分からないけど、笑顔が素敵でさわやかで…と、

美辞麗句を延々聞かされたんだけど、まあそこは省略するとして。

自筆の絵姿も渡されたけど、誇張がないなら確かにいい男ではある。

しかし、随分と絵が上手いね、依頼主さん。


町中でよく見かける方なので、またお会いして思いを告げる事は出来る、

だけど自分は悪筆なので、そんなところで幻滅されてもつらい、

なので、美しい文字が書ける方、美しい表現の出来る方を、

是非是非紹介して頂きたい、という事だった。



その日の夕方には、依頼主の家には問題なし、進めて良いと指示が出た。

予想通りこの町でも上位に入る、大商会のお嬢さんらしいとの事。


で、肝心の受注側だけど…。


美しい文字の書ける人って、どう探したもんだろう?

美しい表現、のほうは現役でも元でも貴族籍を持つ女性ならいけそう。

実は、婚約や結婚でこじれたとか、貴族に嫌気がさしたとか、

そうした理由で冒険者になった貴族の方々は割といる。


で、貴族の場合は入学必須の王立中央学院で詩歌なども学ぶらしいので、

平民よりは気取った…いやいや、琴線に響くような表現が出来そう。

美しい文字の方は…今までの依頼票記述と見比べてみようかな?

うん、どうにか出来る気がしてきた。



何人か候補を選び、人当たりが良い二つ星魔術師さんの女性に声をかけた。

ちなみにこの依頼を受注した彼女は男爵家だそうな。


依頼主と顔を合わせ、話もまとまり、条件も了承されてご依頼成立。

手紙を書いてもらって、その内容には依頼主も大満足。

魔術師さん、この際詩集でも出そうかしら、とか言って笑っていた。



うん。

依頼は成立したし、手紙は書かれて件の絵姿の男性にも渡せたらしいし、

想いも通じたと聞いていた。冒険者組合が出来る事はもう、ない。


いや分かる訳ないじゃない!?

依頼主の方、実は娘さんじゃなくて女装した息子さんだったなんて!


「寝床を共にしたら、見慣れたモノがついていた。なんとかしてくれ」?

絵姿の男性が事のあらましを聞いて窓口に突撃してきました。


知らんわ。

チンオナゴ。

この受付嬢さんは問題人物を引き寄せる。

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