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作者: 夢子
掲載日:2026/04/29

 フレイヤ・ターニップは子爵令嬢である。


 フレイヤは有難いことに両親の良いとこ取りで生まれた。

 母似の顔は少し派手めだけれど、瞳だけは父似で形も良い。

 その上地頭もよく、勉強がよくできた父に似て優秀。

 音感は母に似たのだろう、ダンスも得意。


 そんな文句のつけようがないフレイヤは、大人になれば当然人目を惹く美人となった。


 フレイヤは生まれた瞬間から顔が整っていて、フレイヤの美しい顔を見て天使が舞い降りたのではないか? と、家族中が騒いだそうだ。


 当然、そんな彼女は誰からも愛された。

 子供のころから空気が読めた彼女は愛嬌もあり、その上子供特有の癇癪もなく我儘を言わないため誰からも愛された。


 誕生日などは家族からだけではなく、一度しか会ったことのない親戚からもプレゼントが届いたり、まだ学園に入る前なのに誕生日にかこつけて高位の貴族家から釣書が届いたりもした。


「フレイヤは誰に似たのかしら……」

「天使の生まれ変わりかもしれないな……」


 たとえば、悪戯した子供に対し冗談で『うちの子じゃない、橋の下で拾ってきた』だなんて言うことがあるが、フレイヤの場合神様の渡る橋から落ちてきたのではないか? と言われるぐらい彼女は特別だった。


 両親でさえ自分の娘にしては出来過ぎていると思うのだ。

 彼女の異端さが分かる。


 フレイヤはどこからどう見ても美しかった。

 横顔も立ち姿も人目を惹き、泣き姿などは多くの人を魅了した。


 フレイヤの髪は金色で、この国の王族が持つ色であるだけでなく、彼女の髪は何もしなくても艶があり光輝いて見えた。

 そして瞳は青空のような美しいブルーアイ。

 どこまでも見通せるような美しい青色の瞳はその一瞥だけで人を魅了した。


 年頃になれば両親のどちらかにそっくりになって容姿も落ち着くかと思ったけれど、フレイヤはそうならなかった。

 その上、育つところは育ち、引きしまるところは引き締まるといううらやましくなるようなボディも手に入れ、特に男性の目を引いた。


 あまりにもモテる娘を心配した両親が何人かとお見合いをさせてみたが、そのうちの一人がフレイヤに魅了されすぎてしまい、お付き合い自体は断ったのだが、そのせいなのか何なのか付きまとうようになり、フレイヤが怖い思いをし、それからはお見合い全て止めることにした。


 学園に通えば何人もの男性に告白され、同性からは妬まれ恨まれるようになった。


 そのことに心が疲れ、両親の勧めから有名なセラピストの下へ通うようになると、そのセラピストに危うく監禁されそうになり、ますます過保護になった両親は子爵令嬢では相応しくない程の護衛をフレイヤに付けた。


 そんなこともあり、フレイヤは愛や恋に夢を描くことは無くなった。

 貴族令嬢としての普通の結婚も諦め、一生一人でいようと手に職を付け就職することを決めた。


 就職先として選んだ先は、女性が多く、男性の目にあまり触れない場所、王城。

 厳しい試験を乗り越え王城の侍女として働き出したのだが、残念ながらそれもすぐに駄目になった。

 何故なら温厚だと有名だった男性上司が、既婚者ながらも迫ってきたからだった。


「フレイヤ、君は僕の運命の相手だと思う、妻とは別れるから結婚してくれ」


「お断りします!」


 フレイヤは王城から逃げることにした。

 同僚の中にはフレイヤのその美しさを妬み、上司を誘惑して捨てたと悪い噂を流し、フレイヤの名誉を貶めようとした者もいて苦しかった。


「もうここは無理……」


 仕事を止め、フレイヤは市井に降りた。

 そして貴族令嬢だけれど、平民が多く働く職場に逃げた。

 何故なら平民の方が裏表がなかったからだ。

 

 デートに誘うにしてもさっぱりとしていて悪い印象は無い。

 交際を申し込まれ断っても、どうにかしたいとだまし討ちをするような陰険なものもない。


 だからこそ市井に逃げようと思ったのだが、それは今考えても正しい判断であったとフレイヤは思う。


(私はなんでこんな風に生まれてしまったのかしら……)


 フレイヤ・ターニップは神から愛された娘、だけど常に孤独だった。

 天は二物を与えずというが、フレイヤには二物以上のものを神は与えてしまった。

 けれどそれはフレイヤにとって重荷であり、邪魔でしかなかった。


 容姿に知性、それに貴族令嬢としての地位。

 それだけだったらここまで心が苦しくなることも無かっただろうが、フレイヤにはそれ以上のモノがあったのだ。


 実は神に愛されすぎた彼女は『人の心の声が聞こえる』という余計な才能まで持っていた。

 上手く使えこなせる者が手にした力だったら良かったのだが、フレイヤはそうではなかった。


 その能力こそが彼女を苦しめた。


(悪意ばかり拾う、こんな力欲しくなかったわ……)


 だから彼女はどれ程周りにちやほやされても決して奢らなかった。


 何故なら相手の心の声が聞こえるため、誉め言葉が本心なのかどうか分かってしまうからだ。


 生まれたばかりのフレイヤを見て、父は母の浮気を疑った。

 何故なら父親である自分にフレイヤがちっとも似ていなかったから。


 それに王家に出る色と言われる金色の髪を持って生まれたことも不信感に拍車をかけた。


 母は母で、先回りし気遣いを見せるフレイヤに対し「有難う」と言いながらも心の中では「何故?」と怖がっていた。


 そして表面上は仲良く遊んでくれた兄だったが、兄は心の中で常にフレイヤに嫉妬していた。

 フレイヤは可愛がられてズルいとそんな心の声が良く聞こえ、兄に甘えることもいつしかしなくなった。


 けれどそんな兄は父に見た目がそっくりで祖父母に可愛がられた。

 建前上祖父母はフレイヤも可愛がってはくれたけれど、心の中では「不義の子ではないか?」と父同様疑っていた。



 お見合いをした相手の心も読めた。

 フレイヤには笑顔を向けながらも、美しい見た目のフレイヤを心の中で凌辱し妄想を楽しんでいる者もいた。


 一番しつこい相手に至ってはフレイヤの一挙手一投足を自分勝手に受け止め、両思いだと勘違いして気持ち悪かった。断っても断っても手紙を送ってくるので、国内で一番入学が難しい学園へ通い、距離を置いた。


 けれど学園でもまた同じ。

 フレイヤの見た目だけに引き寄せられる男性が多くいて辟易した。


 そのせいで同姓に嫌われ友達も出来ず、孤独な学園生活を送った。


 卒業間近になり、両親にはこの先誰とも結婚したくないし、出来れば修道院に行きたいと言えば、怪しげなセラピストの下へ連れていかれた。


 フレイヤを入院させると言って監禁しようとしたセラピストからはどうにか逃げることが出来たけれど、心の傷は深くなった。


 そんなセラピストを紹介した両親は流石に申し訳ないと思ったのか、フレイヤへ結婚を進めることは無くなった。けれど過保護になり護衛をたくさんつけ、フレイヤの自由を奪った。


 その為就職し自立しようと思った矢先、侍女の統括だった上司の男性に言い寄られフレイヤは幻滅した。


 仕えている主人に相談し大事にならずに済んだが、仲が良いと思っていた職場の同僚に悪い噂を流され居辛くなった。


 もう貴族社会は無理だと、市井に降りて生きていこうと決めたフレイヤは、ちょうど募集のあった商人ギルドの求人に飛びつき、そこで働くことに決まった。




「フレイヤさん、初めまして、新規事業部の部長シエナ・ペッシュです。宜しくね」


「はい、フレイヤ・ターニップと申します。宜しくお願い致します」


 配属先の上司が女性でホッとする。

 ふくよかな体つきに優しい笑顔のシエナ・ペッシュは、心の中でもフレイヤを歓迎してくれていることが分かり嬉しかった。


『春先は新規事業が増えるから、仕事が出来そうな子が入ってくれて嬉しいわ』


 本心からフレイヤに期待してくれていることが伝わり、頑張ろうと威力が沸く。

 絶対に役に立とう、この上司の下で一生懸命働こう、シエナの心の声が聞こえるとそんな決意が固まった。


 それでもやはり目立つフレイヤを見る周りの声は五月蠅い。

 聞きたくない声がどうしても聞こえてしまう。

 

『新人の子美人だな』

『見た目だけのコネ入社じゃないの』

『あの子誰かの愛人かしら』

『ああ、可愛い、俺の恋人にしたいな』


 シエナの横に立ち自己紹介をするフレイヤに好奇の目と心の声が向けられる。

 新人なので興味を持たれるのは当然、今までのことを考えれば多少の悪口など気にもならない。


(うん、王城で働いていた時よりはマシね……)


 あの時はもっとひどい言葉が浴びせられた。

 けれどその相手は笑顔なので質が悪い。


 でも今は心の声がそのまま顔に出ている人ばかりで分かりやすい。

 敵味方がわかる、それだけでもフレイヤは心が救われる気がした。


『彼女ちょっと蕪っぽいな……うん、今日は少し寒いし、夕食は蕪にしようかな』


 拍手で迎え入れてくれるメンツの中、誰かの声がフレイヤの耳に届いた。

 勿論それは心の声。

 誰の言葉かは分からないし、周りは今日会ったばかりの人たちなので声色で誰だと判断することも出来ない。


(今の、男の人の声だった? 蕪っぽいって……もしかして私のこと?)


 思わずきょろきょろと相手を探しそうになる。

 挙動不審で可笑しい人になるから止めたけれど、気になって仕方がない。


 猫っぽいとか、鹿っぽいとか、白鳥のようだとか、動物にたとえられてことはこれまで沢山あったけれど、流石に『蕪』と言われたことは初めてで動揺が激しい。


「フレイヤさん、貴女の直属の上司と、一緒の仕事を担当する同僚を紹介するわね」


「あ、は、はい」


 全体への挨拶を終えると、シエナが部署長を紹介してくれた。

 気持ちを切り替えフレイヤは相手と向き合う。

 男性だったので一瞬ドキッとしたが、相手はフレイヤを見て(可愛そうなほどの美人だな、苦労も多かっただろう……)と同情しているようだった。


「フレイヤさん、調査部の部門長、カイロ・ミルフーフよ」


「ミルフーフだ、ターニップ君、これから宜しくね」 


「はい、宜しくお願い致します」


 カイロ・ミルフーフと名乗った男性は美丈夫と呼べる見た目で、フレイヤほどの美人なら色々と大変だろうなぁと心の中で同情してくれている。


 きっと自身も若いころ……いや、この見た目なら今も色々と苦労があるのかもしれない。

 モテる者同士だけが分かる意思疎通が握手だけで出来たようだった。


「それから、こちらがジョン・スミス君、スミス辺境伯家の出身で、我が部署のエースなのよ。それに貴女の指導と相方も務めるわ、仲良くして頂戴ね」


「ジョン・スミスです、どうぞ宜しく」


 スミス辺境伯家と言えば有名な貴族家だ。

 ジョン・スミスはスミス辺境伯家の色といえる赤茶色の髪にアンバー色の瞳を持っていて、逞しさもあり、とても商業ギルドで働くような人には見えない。

 どちらかというと騎士のような風貌、その言葉がぴったりだと思う。

 それに背丈もこの部署で一番大きかった。


 なんでこんなところに辺境伯子息が? と正直思ったが、フレイヤだって貴族令嬢、家格の差はあれど同じようなもの、深く追求するのは止めた。


「はい、スミスさん、どうぞよろしくお願い致します。私のことはフレイヤと気軽に呼んでください」


「分かりました、フレイヤさん、私のことも同僚としてジョンと気軽に呼んでくれて構わないですから」


「はい、有難うございます」


 手を差し出され握手を交わす。

 その瞬間『やっぱり夕飯は蕪を柔らかく煮たシチューが良いかな』とジョンの心の声が聞こえ、表情が変わりそうになる。


 それもジョンはフレイヤの顔を見ながらそんなことを考えている。

 つまりフレイヤを蕪に似ていると言い、蕪を煮ようと考えたわけで、あの声の主はこのジョン・スミスだったのだとハッキリと理解した。


「じゃあ、早速、商業ギルド内を案内しようか」


「はい、ジョンさん、よろしくお願い致します」


 蕪にたとえられたフレイヤは吹き出しそうになるのをこらえ、笑顔で耐えきった。






 ジョン・スミスはスミス辺境伯家の三男坊。

 西の地を守る大事な土地、それがスミス辺境伯の領地だ。


 そんな場所で生まれたジョンは、当然剣も弓も槍も当たり前のように扱えたし、得意だともいえた。

 獲物を捌くことも肉屋に負けない上手さだし、軍を率いるための知識も学んだ。


 けれど今は戦時ではない。

 平和なこの時代にジョンの知識など役には立たない。

 

 それにジョンは、武道では長兄に敵わないし、学問では次兄に敵わない。


 それでも辺境の地に残れば器用貧乏なジョンでも役に立てただろうが、そもそもジョンは争いごとが好きではなかった。


 誰かを殴ったり蹴ったりするたび良心が痛む。

 相手が魔獣でも同じ、魔獣駆除という言葉に胸が痛まない日は無かった。


 子供のころからどこか大人びていて、その上無口で気が許せる友人がいなかったジョンは、馬での遠乗りだけが辺境での楽しみだった。


 それにジョンの趣味は貴族男子にしては珍しく、美味しいものを食べることと料理をすることだった。

 強さが自慢な辺境の土地で、そんな趣味を理解をしてくれる相手はいなかった。


 料理を仕事にできたら……

 そんな思いもあったが、辺境伯の息子が料理人になることは認められず、親の立場を気遣い趣味にとどめることにした。


 誰にも何も言われない場所に移りたくて、一人暮らしを始めてみたが、料理や掃除など自分ですべてこなす生活は思ったよりも楽しく、自分にはこの生き方が合っているとそう思った。


 王都での生活も五年目。


 仕事にも慣れてきて、環境にも慣れてきて、充実した毎日。

 たまに辺境の地から手紙が届くこともあるが、優秀な兄二人が結婚し残っているため、特に大きな問題もなく領地は安定しているようだ。


 催促が五月蠅く気まずいと思いながらも、距離があるという理由からジョンは五年間一度も実家に帰っていなかった。


 そんな平穏な日々を過ごすジョンだったが、ある日新人の相方が出来ることになった。


「フレイヤ・ターニップと申します。宜しくお願い致します」


 新事業部に来て部長と挨拶を交わす女性を見かけ、それが自分の相方だと分かった。


 彼女は色が白く、肌はつるんとしていてとても綺麗な女性だった。

 部長からは前もって今度の新人は貴族令嬢だとは聞いていたが、確かにあれほどの美人ならば下手な相手とは組ませられないだろうと悟る。


 彼女が笑顔を振りまけば勘違いする者が現れる可能性もあるし、あの見た目では告白しようと突撃するものも出るかもしれない。


 ここは同じく貴族従業員のジョンが隣にいて牽制役になるべきだと察知した。


(まあ、背だけは部署内で一番高いしな……)


 平凡な自分ではどこまで抑制効果があるかは分からないが、辺境伯家の息子というネームバリューは多少は役に立ちそうだったし、体が大きなジョンはその見た目だけで良い壁になりそうだった。


「私のことはフレイヤと気軽に呼んで下さい」


 フレイヤはその見た目とは違い気さくな女性で、自分の名を気軽に呼んでくれと言ってくれた。

 その上男性であるジョンに握手まで求めてくれて、彼女のその手の柔らかさから今日は蕪を煮込んでスープにしようと思いつき、彼女のお陰で夕飯のメニューが決まったともいえた。


(帰りに野菜屋のロマネスのところに寄って蕪を買って……クリーム煮が良いか、いや、あっさりとコンソメ味も良いかな……蕪はサラダでも美味いし、オリーブオイルで炒めても美味しいからなぁ)


 そんな妄想を浮かべての翌朝。

 残念ながら昨日の仕事帰りに蕪が買えなかったと落ち込んでいると、フレイヤに声を掛けられた。


「……あの、ジョンさんは、蕪がお好きなのですか?」


「えっ? あれ、俺、今、蕪が食べたいとか独り言を言っていたかな?」


 職場で「蕪蕪」と呟く危ない奴だったかと、自分の無意識にちょっとだけ恐怖を感じる。


「えっと、小さくですけど、蕪と聞こえたもので……」


「そうだったのか、それはすまなかった、五月蠅かっただろう」


「いえ、全然!」


 どうやら頭の中で蕪のことばかり考えていたジョンは、隣の席に座るフレイヤに聞こえる音量で「蕪、蕪、蕪」と蕪の名を恋人でもあるかのように呟いていたらしい。

 友人がいなかった弊害なのか、恥ずかしすぎてちょっとだけ顔に熱がたまるのが分かる。

 でも気持ち悪い奴だと思われていないのが救いだった。

 フレイヤは自然な笑顔で笑っていた。


「えっと、聞こえましたけど、でも、その、全然気にならない程度でしたから……それより、その、ジョンさんは蕪がそんなにお好きなのかなって、そっちが気になって」


「いや、まあ、好きは好きなんだけど、いつも仕事帰り行く八百屋で昨日は蕪が売り切れで買えなくってね……そのせいか尚更蕪が食べたくなってしまって、蕪のことばかり考えていたようだ……」


「そうなんですね……」


(まさか君の顔を見たから蕪が尚更食べたくなったとは言えないしな……)


 諦めたくても蕪みたいな令嬢であるフレイヤが隣にいるのだ。

 蕪のことが脳裏から離れない。

 それに仕事中なのにいろんなメニューが浮かんでしまうし、買えなかったショックが何度も蘇る。


「じゃあ、あの、今夜の夕飯のメニューは蕪なのですか?」


「いや、それがいつもの八百屋は今日が定休日でね……」


「まあ、そうなんですか、それはお辛いですね」


「いや、まあ、そんなこともあるからね……」


 食べたいときに限って……というのは良くあることで、今は冬場で蕪が美味しい時期だ。夕方になれば当然売切れていても仕方がない。


 だったら他の店に行けばいいと思うだろうが、仕事帰りに寄れる八百屋など限られている。


(今日も大根で我慢をするしかないか……)


 昨日、売り切れの蕪の代わりにジョンは大根を買った。

 自宅に合った鶏肉と合わせて煮つけ、それはそれで美味しくいただいたのだが、今日フレイヤと会ってやっぱり蕪が食べたいと思ってしまった。


 でもまだ大根は半分残っている。

 寒いしキャベツと合わせスープにでもしようか、それともひき肉を使って生姜を入れたスープにするべきか。

 そんなことを考えているとフレイヤにまた声を掛けられた。


「あ、あの、ジョンさん、良かったら私の家にある蕪を持って帰りませんか?」


「えっ……?」


 出会ってまだ二日。

 相方ともまだ呼べない程度の知り合いの誘いに、ジョンは固まるしかなかった。








「ねえ、カーラ、私って蕪に似ているかしら?」


「お嬢様が蕪……? カブ……? えっと、蕪ってアレでしょうか、あの野菜の蕪ですか?」


「ええ、そうよ、その蕪よ、私って蕪に似てる?」


「……」


 初出勤を終え一人暮らしを始めた自宅へ戻ったフレイヤは、家政婦のカーラに疑問をぶつけた。

 制服を脱ぎ、カーラに身支度を整えられながら、フレイヤは鏡の中の自分が蕪に見えるかと自分の顔をジッと見つめていた。


『このお美しいお嬢様が蕪に似ているですって……?!』


 カーラはフレイヤの元乳母で、王都で一人暮らしをするフレイヤのために両親が声を掛け家政婦として働いてくれることになった人だ。


 夫のノルマンも一緒にこの屋敷に来てくれていて、フレイヤの家で執事として働いてくれている。

 あとは料理人と女中仕事を請け負ってくれている夫婦がこの屋敷にはいるが、皆幼いころからの知り合いでフレイヤの心を傷つける相手ではなかった。


 そんなとても一人暮らしとは呼べない状態だが、心配する両親が許した最低限がこの暮らしだった。

 貴族令嬢についている使用人の数としては少なすぎるが、フレイヤの心を考えればこれぐらいがちょうどいい。


 心配する両親に自立したいから護衛はいらないと無理を言ったが、本当の一人暮らしをし、料理も洗濯も一人でこなすジョンのことを思うと、全然自立とは呼べず恥ずかしいぐらいだった。


「えーっと、その、顔の……輪郭が? 蕪に似ていると言えば、似ていますかしら? あとはそうですね……色白なところとか? でしょうか? お嬢様の肌はとても美しく白くて綺麗ですからねぇ……」


「ああ、確かに! その方も私の肌が白いから蕪みたいだと言っていたわ」


「ああ、そうですか、やっぱりそうだったのですねー、良かったですわ」


 カーラはあからさまにホッとした様子を見せる。

 心の中で『お嬢様を侮辱した言葉だったら許さない!』と憤っていたので、色白だから蕪という部分に安心したようだった。


『こんなに可愛らしいお嬢様をいじめる者がいたら呪ってやりますわ!』


 仕事初日から虐めにあったのではないかと、過保護なほど心配してくれているカーラ。

 そう言えば両親も良くフレイヤを心配していたなぁと、今になってそんなことを思いだす。


 危険な目に合ったけれどセラピストの下へ行ったことも両親がフレイヤを心配してのことだったし、婚約者を早めに決めようとお見合い相手を連れてきたのもフレイヤを心配してのことだった。


「カーラ、本当の一人暮らしって大変なのね……」


 今になって両親の心配が分かる。

 フレイヤはきっとジョンのように本当の一人暮らしなど一生出来ないだろう。


 お茶を入れるぐらいが精一杯だ。

 それに自宅に一人ぼっちとか怖くて耐えられない気がする。


「あら、お嬢様、もしかしてどなたかとそんな話をされたのですか?」


「えっ? う、ううん。あの、私の仕事場の先輩が、仕事が終わったあとに家に帰ってからやることを考え……いえ、教えてくれたんだけど、凄いなって感心していたの」


「まあ、そうでしたか」


「ええ、そうなのよ」


 実際は仕事中にジョンの心の声が聞こえただけで、話を聞いた訳ではない。

 帰りに蕪を買って、帰ったら蕪と鶏肉のクリーム煮を作ろうと、ジョンは料理の手順や帰ってからの流れを考えていた。


 洗濯や掃除、風呂のことなど、一人暮らしなジョンは自分でやらなければいけないことが沢山あって、同じ貴族家の子供なのにしっかりと自立しているジョンの言葉(心の声)は、親から逃げたいなと思いながらもその恩恵を受け続けるフレイヤが余りにも子供っぽいと感じさせた。


「私も一人暮らしをしてみようかしら……」


 思わずそんな言葉を呟いてしまう。

 本当の自立は全て自分でこなすこと、そう思ったからだ。


「お嬢様! 何を仰っているのですか、お嬢様にそんなことさせられる訳がないでしょう!」


「カ、カーラ?」


「お嬢様が一人で暮らしたら何があるか! 旦那様も奥様も心配で生きた心地がしなくなります! 坊ちゃまだってどう思うか!」


 これまでのフレイヤの危険度を知っているからか、カーラのその顔は蒼白そのものだ。

 カーラが心の底からフレイヤの心配しているのが分かり、軽口を言ったフレイヤの胸は痛んだ。


「カーラ、カーラ、落ち着いて、冗談よ! 私だって貴族の娘としてちゃんと自覚があるわ。一人で暮らすだなんてどれ程危険か分かっているから、安心してちょうだい」


「そうでございますか?」


 カーラが本当に? と怪しんでいる視線をフレイヤへ送る。

 王城を辞め市井に降りたフレイヤは、カーラからの信用度が低いようだ。


「本当に、一人暮らしなんてしてお嬢様に何かあったら……」


 カーラがフレイヤを見ながら、誰かに殺されるところや、暴行される姿を頭の中で想像し始めたため「お腹が空いたわ」と言って慌てて止める。


 想像だと分かっていてもフレイヤにはハッキリと見えてしまうため、自分の殺される姿はあまり気持ちの良い物ではないし、見たいものでもなかった。


 それに一人暮らしの危険度はフレイヤだって十分に分かっている。

 なにせフレイヤは監禁されそうになった過去もあれば、誘拐されそうになった過去もある。

 自分の見た目が人を惹きつけることは誰よりも理解できていた。


「お嬢様、今日の夕食は蕪のパスタでございます」


「……蕪……」


 食堂に着くと、カーラの夫ノルマンが給仕を始めてくれた。

 蕪のチャウダーに、蕪のサラダ、そして蕪のパスタと、今日は蕪尽くしで思わず笑ってしまう。


「ウフフ、これは共食いにはならないわよねぇ」


 くすくすと笑いだしたフレイヤを見てノルマンが「どうかいたしましたか?」と首を傾げる。

 蕪料理の多さに驚いただけだとと伝えれば、暫く蕪料理が続きますよと笑って答えられた。


「料理長のレックが安かった蕪を大量に仕入れたそうなのですよ」


「ウフフ、そうなのね、蕪は美味しいし好きだから毎日蕪でも構わないわよ」


「有難うございます、伝えておきますね」


 美味しい蕪料理に舌鼓を打ちながら、思い浮かべるのはジョンの姿。

 

(ジョンさんも今頃蕪を食べているのかしら?)


 そう思った翌日。

 フレイヤはジョンと会って、同情した。


 どうやらジョンは目当ての蕪が買えなかったらしく、貴族らしい表情はそのままに、心の中は物凄い落ち込んでいてフレイヤまで絶望を感じるぐらいだった。


『今日は野菜屋のロマネスは休みだしな……』


 その上今日は、ジョンが良く行く八百屋が休みのようだ。

 見た目は出会った時のまま、けれど心は闇の中。

 そんなジョンを放っておけるはずもなく、フレイヤは勇気を出してジョンに声を掛けた。

 

「あ、あの、良かったら私の家にある蕪を持って帰りませんか?」


「えっ……?」


 困惑気味のジョンだけど、心の中には蕪の絵が広がっていて嬉しそうだ。


 仲のいい友人など一人もおらず、ましてや自宅に誰かを誘ったことも無いフレイヤだったけれど、蕪好きで蕪無しの落ち込みに憂いているジョンをみると、何故か放っては置けなかった。









「えーっと、フレイヤ嬢? とても有難い申し出だが、その、ご令嬢の自宅に突然訪問するなどは不敬になるだろうし……」


 辺境地で令嬢の自宅へ突然伺うと言えば婚約目的か、婚姻申し込みの時ぐらいだ。

 そんな考えがジョンの脳裏を過ると、フレイヤが赤い顔で首を勢いよく横に振った。


「あ、その、申し訳ございません、気軽に誘ってしまって、その、私は市井に降りたつもりでおりますので、貴族令嬢として誘っている訳ではなく、あの、隣にいる者として、同僚として、お裾分けという意味で、良かったらと思いまして……」


「お裾分け……」


 ジョンが過剰に反応してしまったからか、フレイヤは真っ赤になってしまった。

 確かにこの場は平民が多く働くギルド内。


 見るからに貴族令嬢なフレイヤ相手だから慌ててしまったが、同じ女性でも蕪の誘いが上司のシエナだったら何とも思わなかっただろう。


 それにフレイヤは「蕪蕪蕪」と呟くジョンを哀れに思って声を掛けてくれたのだ。

 善意に対し、いらぬ勘繰りをするなど言語道断。恥ずかしい限りだった。


(勘違いも甚だしい、穴があったら埋もれるべきだろうな)


「……フレイヤさん、有難う……その、帰りに蕪を頂いてもいいだろうか……?」


 ジョンは自分の愚かさに頬を染めながらフレイヤにお礼を言った。

 貰い赤面とはこのことを言うのだろうか、ジョンもフレイヤも朝から顔が真っ赤だった。


 今のフレイヤを見ても赤カブが食べたい……などとは勿論思わない。ようにする。


(平常心! 精神統一! 心頭滅却!)


 幼いころ父に掛けられた言葉が自然と頭に浮かんだ。


「はい、勿論です、こちらからお誘いしたわけですし……どうぞ遠慮なく」


 ニコッと微笑まれ、ジョンもニコリと微笑み返す。

 上手く笑えたかは分からないが、フレイヤの顔には怯えなどは何も無かったので大丈夫そうだった。


 それよりも蕪が手に入ることが嬉しくて仕方がない。

 これで今日は夢にまで見てしまった蕪料理が食べられる。


(スープのチャウダーは大根ではなく蕪に変更だな!)


 どうやらジョンはまた声に出していたらしく、隣のフレイヤがフフフと可愛らしく笑っていた。

 それが全く嫌ではなく、料理仲間が出来たようでなんだか心が温まるようだった。




「フレイヤ嬢と同じ部署で働くジョン・スミスと申します、本日はお裾分けを頂けるということで、急ながらご自宅に寄らさせて戴きました。突然の訪問でご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い致します」


 ジョンはフレイヤの自宅という屋敷に着くと、まずはきちんと挨拶をした。

 屋敷の者は使用人だけだと言っていたが、フレイヤの様子から使用人たちとは家族同然の関係だと分かり、彼女の親や兄弟と同じだと思い丁寧に挨拶をした。


 蕪を貰うので当然。

 決して蕪目当てだけの行動ではないのだが、隣に立つフレイヤはどこか面白がっているようだった。


「まあ、まあ、お嬢様の同僚の方でいらっしゃいますか? お嬢様がお世話をお掛けしております……あの、慣れていない職場でお嬢様は()()ご迷惑をおかけしておりませんでしょうか?」


 どうやらカーラの心配はフレイヤの仕事ぶりよりも、周りの男性陣のことらしい。

 部長のカイロからはある程度フレイヤの前職での事情は聴いている。

 彼女の美しさならば周りが黙っていないだろうし、若かりし頃のカイロの苦労話も聞いているだけに、カーラの心配も分かると、ジョンは笑顔で対応する。


「いえいえ、フレイヤ嬢はとても優秀で初日からとても助かっていますよ」


「そうでございますか? なら安心いたしましたけれど……その、不躾ではありますが、スミス様はもしかして、西の辺境伯家のスミス様ではないでしょうか?」

「カーラ?!」 


 慌てだしたフレイヤに「大丈夫」と笑顔を向けジョンは頷く。

 娘というものは幾つになっても心配になるものだと母方の祖母がよく言っていた。

 それにジョンだってフレイヤの魅力を思えば、その気持ちが十分に分かった。


「あの、それに同じ部署ということは、スミス様もお嬢様と同じギルドで働いていらっしゃるというでしょうか?」

「カーラ、何を聞いているの、失礼よ」


 母親のようにフレイヤを心配するカーラ。

 突然大男が大事な娘に連れられてやって来たと考えれば、職務質問は当たり前。

 大事なフレイヤが騙されていないかと、心配する気持ちも良く分かる。

 憤るフレイヤを宥め、何も隠すことも無いジョンは正直に答えた。


「ええ、確かに私は辺境伯家の者ですが、三男ですので家を出ました。ギルドの仕事は地元にいた頃からよく手伝っていましたので、その縁もあって王都の商業ギルドに勤める事になったのですよ」


「まあ、そうなのですか……」


「ええ」


 カーラの表情から『勿体ない』と思っている様子が分かる。

 辺境伯のご子息ならばもっと良い就職先があるはずでは? と思うのは当然。


 ジョンもそれは分かっているが、気楽な今の生き方が一番好きだった。

 体がどんなに大きくとも、魔獣も殺せない盗賊も討伐できないジョンは小心者。

 それを自分自身が一番分かっていた。


「私は辺境にいたころから商業ギルドの手伝いを一番良くしていたんですよ、気性にあったのでしょうね。ですので内情は良く知っていますが、王都の商業ギルドも辺境地の商業ギルドも賑やかでとても楽しい職場ですよ」


「それなら安心ですわ、それにスミス様がお傍にいて下さるのならお嬢様も安心でしょうし」

「もう、カーラ、やめてったら……」


 身内の前では子供っぽくなるのか、仕事場との雰囲気とは違い、フレイヤは頬を赤く染め少し口を尖らせている。


 きびきびと働く職場の彼女とは違い何とも可愛らしい。

 今は幼い少女のようにあどけなく見えるなとジョンは思った。


「お嬢様、蕪のご用意が出来ました」


「ええ、ノルマン、有難う。ジョンさん、お待ちかねの蕪ですわ、どうぞ夕食を楽しんで下さいね」


「ああ、有難う、これでやっと蕪が食べられる、フレイヤさん、君のお陰だ、本当に有難う、感謝するよ」


「いいえ、そんな、偶々ですから……」


 本心からお礼を言えばフレイヤは真っ赤になり俯いてしまった。

 お嬢様が楽しそうで……とカーラが後ろで感動していたので、きっとそれが恥ずかしかったのだろう。


 執事までひっそりとハンカチで目を拭っている。

 それほど今までのフレイヤには色々とあったということだろう。


 美人というのは大変だなと同情が沸く。

 それに蕪を貰ったお礼に自分が出来ることはと考えれば答えが出る。

 辺境伯家の名はきっと彼女を守ってくれるだはずだ。


 別れ際、蕪を片手にジョンはフレイヤに手を差し出した。


「フレイヤさん、いや、フレイヤ、私たちは仕事の相棒だが、これからは友人だとそう思ってもいいかな?」


「えっ……?」


 下手な下心など何もないが、流石に蕪を貰った程度で友人気取りは無理があるかと思ったが、フレイヤは笑顔で手を差し出してくれた。


「ジョンさん、是非、お願いします。あの、私、異性のお友達なんて初めてで、とても嬉しいです」


「ああ、俺も異性の友人は初めてだ、遠慮なくジョンと呼んでくれ」


「はい、ジョン、そうさせて戴きます」


「ああ、宜しくな」


 異性どころか友人と呼べる相手がジョンには殆どいない。

 自宅に呼んだ相手もいないし、一緒に遊んだ友人などいたとはとても言えないため、フレイヤこそが初めての友人、そう呼べる相手だった。


(辺境伯子息が彼女の友人と分かればすり寄る愚か者も減るだろう……)


 これは同情からなのかもしれない、いや、蕪を貰ってのお礼かもしれない。

 でも、それでも、手をつなぎ二人は微笑み合う。


 心が許せる友人が出来た。

 人生初めての友人と呼べる相手。


 言葉にしなくともお互いに嬉しさが伝わった。



「じゃあ、フレイヤ、また明日」


「はい、ジョン、また明日。宜しくお願いしますね」


「ああ、こっちこそ宜しくな」


 手を振り自分を見送る友人を見ながら、心が温まる気がしたジョンだった。







「お嬢様、スミス様はお優しくて素敵な方でしたね」


「フフフ、そうね、だって私の()()()だもの、素敵な人に決まっているわ」


「まあ! フフフフ」


 フレイヤは浮かれていた。

 人生で初めてできた友人、それが嬉しかった。


 幼いころ両親が作ってくれようとした友人たち。

 最初は仲良く出来たけれど、だんだんと心の声を聞いているうちに堪えられなくなり、いつしか交流を止めていた。


 それが尚更彼女たちは気に入らなかったのか、「気位が高く笑いもしない女の子」だとフレイヤのことを貶し、嫌な噂を友人たちの間で流していた。


 だからお茶会に行けばひそひそと陰口を言われたし、誰も寄っても来なくなった。

 だからと言って男の子と話でもすれば「男好き」だと言われる始末。


 友人を作ろうなどと思うこと自体消えていた。


(ジョンさんは……ううん、ジョンは食べ物のことばかり考えているから一緒にいても心が楽なのよね……)


 隣にフレイヤが居ても、男性らしい邪な妄想を一つもしないジョン。

 それどころかフレイヤの顔を見て『蕪』というのだから笑ってしまう。


 異性として意識されないということがこれほど心地よいものなのか、女ではなく人としてと見てもらえていると思うと感動しかない。


 友人になるのなら彼しかいない、彼と出会えて良かった。

 能力もちで色々あったフレイヤだけど今はそう思える。


(彼の行く八百屋に今度連れて行ってもらおうかしら……)


 フレイヤの過去を知りながら、嫌な感情など抱かず、ジョンは気の毒だと辺境伯子息の名を使い守ろうとしてくれた。

 それもそれが蕪を貰ったお礼だと言うのだから笑えてしまう。

 辺境伯の名を蕪と同列に並べるなどジョンしかいないだろう。


 まったく彼はどれ程お人好しなのか……

 ジョンの心の声を聞きながら、そんな善意に甘えるフレイヤのほうがよっぽど悪人のようだった。


「明日が楽しみだわ」


 思わずそんな言葉を呟く。

 ジョンは蕪料理を食べて、明日はどんな気持ちで来るだろうか。


 浮かれているのか、それとも今度は違う食材のことでも思い浮かべるのか。


 人の心が読めて苦労ばかりしてきたフレイヤだけど。

 ジョンに出会ったことでそれも嫌な能力ではないと思えるのだから、自分でも都合が良い感情だと呆れてしまう。


 あんなに嫌だったこの能力も、友人の役に立つのなら使っても良いなとそう思えるほどだった。


『まあ、まあ、お嬢様ったら子供のようにはしゃいじゃって……』


 背後からカーラの声が聞こえ、恥ずかしくって布団に潜り込む。

 明かりが消えカーラが出ていったことを確認すると、やっと顔を出し一人呟いた。


「ジョンとずっと友達でいられますように……」


 それは小さな子供のような願いでもあり。

 フレイヤ本人も気づかない心の変化だった。



「フレイヤ、おはよう」


「ジョン、おはようございます、昨日の蕪はいかがでしたか? お口に合いました?」


 職場に着きジョンの顔を見ると、すぐに蕪のことを聞いてしまう。

 それだけ気になっていたといえるけれど、心を読まなくても返事は分かる。

 ジョンの笑顔が蕪の味の答えだった。


「ああ、フレイヤ、有難う、君からもらった蕪はとっても美味しかったよ。あの蕪はすごく良い蕪だね、大きくて甘くて、今まで食べた蕪の中でも一番美味しかったよ」


「本当ですか? なら良かったです、安心しました」


 友達との当たり前の交流が嬉しくってフレイヤの顔にも笑顔が浮かぶ。


 席に着き、ジョンの隣に座れば、きっと昨夜のメニュー内容が聞こえてくるだろう。

 そう思ったけれど、その予想はすぐに裏切られた。


 ジョンからは動揺? いや、遠慮? というべきか、不安? に近いような、そんな感情が流れてきたからだ。


『どうするべきか……友人だと言ってはくれたが、これを渡したら気持ち悪いと思われるかもしれない』


 何かフレイヤに渡したいものがあるのか、男の手作りという言葉も聞こえてきて、ジョンへそっと視線を送れば、いつも通り、いや、初めて会った時と同じ平常心な表情を浮かべたジョンが隣に座っていた。


(ジョンは動揺が全く顔に出ないのね……)


 すぐに感情が顔に出てしまうフレイヤからすると尊敬しかない。

 けれどジョンのその心はとても五月蠅く『いや、だが』『でも、どうするべきか』と大きな悩みが見て取れた。


「……あの、ジョン」


 フレイヤは勇気を出してジョンに声を掛ける。

 友人が友人を心配する、それは当たり前のことだと自分に言い聞かせる。


「え? ああ、済まない、フレイヤ、どうかしたかい?」


「いえ、あの、ジョンこそ何かありましたか? その、困っているような顔をしていたので……私でお役に立てるのなら手伝いますが?」


「……そうか……顔に出ていたか……」


「ええ、その少しですけど……」


 正直ジョンの顔には動揺は全く出ていない。

 心の声が聞こえなければ、困っていることなどきっとフレイヤには分からなかっただろう。


 友人として役に立てればいいなと、そんな気持ちで声を掛けたフレイヤの前、ジョンの手からは美味しそうなパウンドケーキが差し出された。


「……あの、これは?」


「……林檎のパウンドケーキだ……その、蕪のお礼にと思ったのだが……」


「蕪のお礼に? もしかしてジョンの手作り? わざわざ作ってくれたのですか?」


「ああ、その、素人の手作りだ。味は保証しないし、俺の作ったものが気持ち悪いというのならば断ってくれてもいい」


 ズイッと差し出しながらもジョンはどこか遠慮気味で、だけどフレイヤに悪く思われないだろうかと、心配する気持ちも伝わってくる。


「断るだなんてとんでもない、凄く嬉しいです! 有難く頂戴します、ジョン」


「そうか……口に合えばいいのだが、その、林檎は嫌いではないだろうか?」


「ええ、林檎もケーキも大好きです」


 フレイヤのことを思い焼いてくれた菓子を気持ち悪いなどと思うはずがない。

 それに仕事を終え蕪を受け取って、帰ってからわざわざフレイヤのためにと時間を作って焼いてくれたお菓子に対し、悪感情など持つわけがない。


 これまで下剤入りや、怪しげな薬入りのお菓子など、自称友人という人からは受け取ったことはあるけれど、ジョンのように優しい気持ちで準備してくれて、その上自らの手で焼いてくれたお菓子など初めてで、フレイヤの心は幸せな気持ちでいっぱいになった。


「大事に食べますね、ジョン、有難うございます」


「ああ……気に入ってもらえたのなら良かった、その、カーラ殿にも宜しく伝えてくれ」


「はい、絶対に伝えますね」


 ホッとした様子のジョンを見て尚更嬉しく感じる。

 どこまでも純粋で心が優しいジョンの隣は、相手の心が読めるフレイヤにとって、これまでにないほどの居心地のいい場所だった。


「ジョンのお料理が食べられるなんて、家に帰るのが待ち遠しいです」


「ハハハ、こんな物でいいのならいつでも焼いてくるから言ってくれ、料理は俺の趣味でもあるし、気分転換にも丁度いいんだ」


 優しい笑顔を見せるジョンになんだか頬が熱くなる。

 この気持ちがどういうものかは分からないけれど、嬉しいものだということだけは分かる。


「……有難うございます……凄く嬉しいです」


 悪意ばかりを見てきてしまったフレイヤにとって、ジョンの心遣いは嬉しいものだった。








 それからジョンとフレイヤの友人関係は順調に続いた。

 フレイヤの屋敷で多く仕入れた食材をジョンにお裾分けすれば、ジョンがお礼に菓子を焼く。

 そんな関係はこれまで気薄な友人関係しか結んでこなかった二人にとって居心地がよく、友達作りのリハビリ期間のような、近すぎず遠すぎず、それ以上の関係を望まない、そんな仲がお互いに丁度良かった。


「ジョン、今日は帰りにサーモンを持って帰りませんか? 料理長のレックがまた大量に仕入れてしまって」


 屋敷の者たちがジョンとフレイヤの仲を応援するかのように仕入れをしているのだが、この二人はそんなことに気付かない。貴族家ならば多めの仕入れはあり得る、そんな感覚だ。


 なので当然ジョンがフレイヤの屋敷による機会は増えていた。

 ただ「良ければウチで夕食を」という誘いはフレイヤからは出ない。

 勇気がないとかではなく、物々交換の友人関係を今は楽しんでいるともいえた。


「有難う、是非寄らせてくれ、サーモンは大好物だ。今夜のメニューを考えるのが楽しみになったよ」


 ジョンの方もジョンの方で「良ければ今度一緒に夕食を」と誘ったりもしない。

 フレイヤの屋敷に行っても食材を受け取るだけ、部屋に誘ってもらおうなどと邪な考えも浮かばない。

 只々食材や料理について話が出来る相手(友人)が出来たことが今は嬉しい。


 友人となったフレイヤとジョンはランチを共にすることは多々あるが、その時は上司のシエナが居たりカイロが居たりと、決して二人きりでは過ごさない。


 貴族としての距離感というものを身に着けているからというのもあるが、お互いに今の距離感で満足しているから、という理由もあった。


「あの二人、物凄く仲良く見えるのだけど……」


 シエナの呟きにカイロが頷く。

 家へ行き、その上食べ物の話をしている二人は、仲の良い恋人同士のよう。


 だけど一緒に過ごしてみれば、彼らが職場の友人以上の関係ではないことは分かる。

 だからこそ何となくじれったい。

 彼らより大人な二人は、もう一歩踏み込んで欲しいと願ってしまうのだ。


「まあ、時間の問題ではないでしょうか? ジョンのあんな楽しそうな顔を見るのは初めてですし……」


「そうね、フレイヤさんも、色々あったみたいだけどジョンのお陰でどここでは楽しそうだもの、そっと見守りましょうか」


 フレイヤとジョンだけがそんな周りの気遣いに気付かない。

 ただ学生の時に味わえなかった友人との青春時代を、今になってゆっくり歩み出したようだった。




「ねえ、知ってる彼女の噂。王城の友達に聞いてみたらどうやら本当だったらしいの、男を誑かして問題を起こしたからここ(商業ギルド)に飛ばされたらしいわ。だって可笑しいと思ったのよねー、あの人適齢期の貴族令嬢でしょう? その上あの見た目じゃない? なのにこんなところで働くなんて何かありましたって言っているようなものだものねー」

「ああ、あの噂ね! 私も知ってるわ、確かあの人結婚している上司と付き合ってたんだっけ? やっぱり派手な見た目の人はやることも凄いのね、私たちとは住む世界が違うって感じー」

「ここでもまたやらかすんじゃないのー、上司はミルフーフ様だもんね、あり得そー」


 仕事が一段落したフレイヤが部署の皆にお茶を入れようとして給湯室へ向かえば、他の部署の女性社員たちが『彼女』の話で盛り上がっていて、フレイヤは入り口の前で立ち止まる。


「今は彼女、スミス様狙いみたいよ」

「ああ、やっぱり? 子爵令嬢様は大貴族様しか目に入らないって感じかしら?」

「仕事場で男漁りって、どんだけ男好きなのって感じよねー」


 彼女とは自分のこと。

 相手の心が読めなくともフレイヤには分かる。


 それに商業ギルドに子爵令嬢はフレイヤしかいない。

 嘘の噂話を聞いても胸は痛まないけれど、心が暗闇に落ちていく。

 

「もうスミス様と仲良くしてるみたいだし、ほんと、見た目が良い女って得よねー」

「スミス様も女を見る目を養うべきよねー、あんな女に騙されて」

「その通りよ、あたし達みたいないい女に気付いて欲しいわよねー」


 きゃははと楽し気に笑う女性たち。

 そこにはフレイヤへの気遣いなど何もない。


 美人には何を言っても大丈夫。


 楽しそうな彼女たちは、フレイヤにも心があるなど分からない。


 いつだってそうだ。

 子供のころのお茶会でも、思春期の学園でも、そして初めての就職先の王城でも、いつもフレイヤは何もしなくても何か問題を起こしそうな女だと噂されていた。


 そして誰かがフレイヤに対し問題を起こせば、いつだって被害者のフレイヤが何かをしたと思われるのだ。


 真実なんて簡単に曲げられる。

 それを知っているだけに、フレイヤは彼女たちの話を聞いても落ち込まない。


(ああ、またか……)とただ諦めがつくだけ。


 きっと明日にはこの話が商業ギルド内に広まっているだろう。

 友人のジョンにだけは聞かれたくは無かったけれど仕方がない。


 だってこれはフレイヤに付きまとう呪いと一緒。

 何を言ったって無駄。


 人目を惹く容姿に生まれてしまった以上、諦めて生きていくしかない錘のようなものだった。


(ここでは仕事にも仲間にも恵まれていたから辞めるのは辛いわね……)


 だけどきっと誰だって噂を信じてしまうだろう。

 見た目が派手なフレイヤならば問題を起こしても当然だと信じられてしまうから。

 今までがずっとそうだったから、きっとここでも同じ。


(ジョン……)


 もう彼が今日の夕食に何を食べるのか知ることは無くなるのだろう。

 そう思うと涙が出そうになったが、フレイヤはグッと堪えた。


「君たち、確証のない噂話を職場に持ち込むことがどんな影響を及ぼすのか分かっていて、ここで無駄口を叩いているのかな……?」


 俯き、扉から離れようとしてフレイヤの横を、大きな男性が通り過ぎ給湯室の扉を開けた。

 そして嘘の噂話で盛り上がる女性たちを一括する。


 それはフレイヤの良く知る友の声。


 勿論ジョン、その人だった。


「あ、あの私たちは別に……」

「噂というか、本当のことを話していただけで……」

「悪口を言っていたつもりはなく……」


 辺境伯子息だと知られるジョンの登場に、噂をしていた女性たちの心が揺れる。

 ヤバい、どうしよう、逃げる? など動揺する心の声をフレイヤは拾う。


 彼女たちも当然商人が多く出入りするギルド内で、大声での噂話がどれほどマズイことか分っているようだった。


 それも噂の元は商業ギルドで働く仲間。

 自分たちの行いの悪さに、彼女たちは今更ながらに気づいたようだった。


「彼女と言うのは誰のことかは詮索しないが、このことは君たちの上司には報告させてもらう」


「そ、そんな」

「待ってください! 私たちは悪くないんです」

「その、噂の人は本当に人を誑かす悪女でーー」


「……ふむ、悪女か……? 何をもって悪女というのかは私には分からないが、彼女は仕事も真面目に熟しているし、こんな誰かに聞かれるか分からないような場所で人の悪口を言うような人でもない。それでも自分たちは悪くない、彼女こそが悪女だと君たちは言うのかい?」

「「「……」」」


 黙り込む女性たちを残し、ジョンが給湯室から出てフレイヤの前に立つ。


「フレイヤ、大丈夫かい?」


『フレイヤを友人として守ると、盾になると誓ったのに、結局嫌な言葉を聞かせる形になってしまった……申し訳ないな……』


 ジョンの優しい言葉がフレイヤの心を包む。


 心配してくれる友達がいる。

 守ってくれる友達がいる。


 そのことがフレイヤの心を強くし温めてくれた。 


 フレイヤは流れそうになる涙を堪え、笑顔を作る。

 助けてくれた友人の前、悲しい顔ではなく、笑顔でいたかった。


「ジョン、有難うございます。貴方が言いたいことを言ってくださったのでスッキリしました。私は好きで商業ギルドに来たので、無理矢理ここへ飛ばされたようなことを言われて心外でした。本当に有難うございます」


「そうか、フレイヤ、役に立てたのなら良かったよ」


「はい、有難うございます」


 その後、ジョンはここでの出来事をしっかりと上司であるシエナとカイロに報告をした。


 フレイヤが気にしていないと言っても、仕事場が仕事場だ。

 まあいいかで流すことは出来ない。


 報告を聞き怖い顔となった二人は、そのまま彼女たちのいる部署へと飛んでいった。


 後日、懲戒解雇となった女性が三名、そして減給となった女性が三名。

 合計六名の名が職場の規律違反を理由に掲示板に張り出されていたが、フレイヤの胸は痛まなかった。




『フレイヤを元気づけるために食事に誘いたいが……流石に家に誘えば迷惑だろうなぁ……』


 いつもの無表情なジョンの顔から想像できない悩み事が聞こえ、フレイヤは思わずジョンへと視線を送ってしまう。

 ジョンのお菓子はこれまで何度も食べさせてもらったけれど、手作りの料理は食べたことが無い。

 友人として是非とも誘いに乗りたいが、実際は声を掛けられていない。


 フレイヤまでもどうしようか……と悩んでいると、ジョンと目があった。


「フレイヤ、良かったら今度、俺の作った料理を食べてみないか……その、弁当でも作ってくるよ」


 いろいろ考えてくれた結果の声掛けに、フレイヤは思わず笑ってしまう。

 友人とはいえ一人暮らしの家にフレイヤを誘えないようだ。

 女性として意識され、気遣われている気がして嬉しい。


 それにフレイヤの答えは「イエス」しかない。

 何も言わなくても自分の気持ちがすべて伝わればいいのにと、自身の脳力をさんざん嫌ってきた癖に、そんなことを思ってしまう。


「お弁当嬉しいです。でも出来たら作りたてを食べてみたいですね。ジョンの料理の美味しさをすぐに味わいたいので……」


「……ああ、そうか、だったら今度ウチにでも来るかい? 昼間なら問題もないだろうし、心配ならカーラ殿も連れてきてもいいし……」


「フフフ、友人同士で会うのですもの、カーラは必要ありません、私一人で伺いますわ」


「そうか、分かった、日にちを決めようか」

 

「はい」


 言外に貴方を信用していると伝えてみれば、それはジョンにも伝わったようで、口元を押さえ、嬉しそうな顔をする。ちょっと少年の様で可愛い。

 それに照れているのか少し耳も赤い、きっとフレイヤも同じような顔をしているだろう、でもそれが嫌ではなかった。


 約束の日にちを決め、仕事に戻ったジョンの心からは『フレイヤのために何を作ろうか』という温かい言葉が聞こえてくる。


『寒いし牛筋肉をホロホロになるまで煮込んでビーフシチューが良いかもしれない、いや、濃厚なラザニアも捨てがたいな、それに煮込んだハンバーグもいいかもしれない、ああ、だが、フレイヤは蕪が好きみたいだから蕪料理もいいかもしれないなぁ……』 


 蕪を最初に渡したからか、フレイヤの好物はすっかり蕪になっているようだ。

 脳内で料理をし続けるジョンの横、フレイヤはだんだんとお腹が空いて来て、この時間が拷問のように感じ始めた。


 グーとお腹が鳴り、ジョンとまた目が合った。

 恥ずかしさを誤魔化すように、フレイヤから出た言葉は一つだけ。


「ジョン、ちなみに今夜のメニューは何ですか?」


 今すぐ誘ってくれとも取られかねないその言葉だったけれど、フレイヤに恥ずかしさなんてない、我慢の限界はとっくに超えていた。


 ジョンの料理が早く食べたい。


 その気持ちはジョンにも伝わったようで、いい笑顔で頷かれる。


「ああ、今夜は蕪料理だ、フレイヤ、良かったら食べに来るかい?」


「はい、是非、お邪魔させて下さい」

 

 料理について語り合う友人関係の二人だったけれど、その日一歩だけその歩みを進めたようだった。

こんにちは、そして初めましての皆様、夢子です。


こちらの小説は連載を投稿中に料理の場面があまりなく、食べることが大好きな私が食べ物の小説が書きたい!と、連載中の、それも体調を崩しているときに書き始めた短編です。w


多分その時は蕪が食べたかったんでしょうね。

なので蕪メインの話になり、自分で作るのが面倒で料理男子の話にもなってしまいました。


できればそのうちまた、料理の小説が書きたくなったら続きが書けたらいいなと考えています。

ブクマ、評価、いいね!など、応援いただけると活力が漲ります。w


出来たらフレイヤやジョンの家族も出したいですし、料理のメニューも蕪以外で美味しいものを食べて欲しいなーっと思っています。


そんな日が来るかは分かりませんが、気軽に待っていただけたら嬉しいです。


短編なのにちょっと長すぎました。

一万字ぐらいを目指していたのですが、二万字超え。

楽しかったのでいいのですけどねー。


終わったばかりの連載【捨てる神あれば拾う神あり~踏み台令息は失恋を得て成長する~】

https://ncode.syosetu.com/n1430kf/

こちらも読んでいただけたら嬉しいです。


では、ここまで読んでいただき有難うございました。


2026.04.29 夢子


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