第九十九話
「…また…ひどい変な夢見た……」
ひどい悪夢だったが、不思議とグッスリと寝ていた。まぁとんでもない戦いで、疲れていたからだろう。
…ん? 隣に誰かいる…。アリスのやつか…。しょうがないやつだ…。自分の部屋に帰ってもらうか…。
「アリス、おき…。…なっ!?」
驚いた事に隣には帯刀したシオンさんが座っていた。顔を見ると、ゲッソリして目にクマができていた。
「ああ…おはよう…。アル、昨日は本当にすまなかった…。助かったよ…」
「どっ、どうして、ベッドに!?」
「ボディーガードだ…。昨日はなにもできなかった…。いや…なにもできないなら、まだしも…。キノコになって…みんなを…」
責任を感じてるのか…。別に気にしなくてもいいと思うけど…。
「そんな事ないですよ…。シオンさんの名前をだしたら、話がしやすかったし…。本当に助かりましたよ。だから、そんなに落ち込まないで下さい」
「そう…なのか?」
「はい…。だから…。あっ! そういえば勇者の鍵を手に入れたんだ…」
色々あって忘れてた…。そうだ…。シオンさんに伝えておかないと…。
「ほっ、本当か!?」
「実はシャルティーニュ姫だったんです」
「…ん? …どういう意味だ?」
「だから…シャルティーニュ姫が勇者の鍵だったんです。僕達の旅についてきてくれる事になったんですよ」
「……」
僕がそう伝えると、シオンさんは座ったまま眠りについてしまった。いや、気絶したと言うべきか…。
「まあ、顔色ひどかったし…。このまま、もう少し寝てて貰おう…」
シオンさんを寝かせて布団を掛けると、僕は部屋からでて誰もついてきていない事を確認し、空を飛び森の中に向かった。
「よし、ついたな…」
ここにきたのは他でもない。誰もいない場所で修行をする為だ。
まぁ…修行の前に、まずは現状の整理だ…。あの黒い魔物…あいつの正体はわからないけど…とんでもなく強い。おそらく…あの時、僕は…。
「……」
そういえば…なんだったんだろう…。あの時みた黒い夢…。あれは本当に…夢なのか?
僕はスキル画面を開くと、そこには新しいスキル【ドゥラスロール】が加わっていた。やっぱり、これがあるって事はあれはただの夢じゃない。
「試しに使ってみるか…」
現状、考えてもわからない事を考えてもわからない。であれば、一つでもわかりそうな事を理解していく必要がある。
「でも…なんていうか…」
僕は昨日の戦闘に違和感を感じていた。いや、むしろ違和感がないことに違和感を感じる。戦闘なれしすぎているのだ。本当になんていえばいいのだろう…。こんなにも怖さが少ないって、おかしくないか? まるで…。
「ゲームをやってるような気分だ…。これもまさか裏スキルの影響なのか…」
だとしたら、発動してなくても悪影響が出始めて…。いっ、いや、考え過ぎか…。
「…まぁ、どっちにしても油断はダメだ。さて…修行すっか…! …ってっ、うお!」
僕は顔をパンっと両手で叩くと、目の前には見慣れたモグラの姿があった。
「…ノーム? …どうやってここに? まっ、まあ、いいか…ノームなら…。修行の前にまずは…」
MPがそろそろ切れそうなので、魔人化して魔力をチャージする必要がある。僕はアリスから貰ったペンダントを首から外すとノームが僕をつついた後、両手を差しだした。
「いてっ…! なんだよ…これ欲しいのか? …ダメだよ。これはあげれない」
僕が断るとノームは首を振った。どうやら違うらしい。
「…じゃあ、貸せってこと?」
ノームは両手を丸に変えた。どうやら、正解らしい。まあ、貸すぐらいならいいか。
「はい…。すぐ、返してよ?」
ノームはペンダントを受けとり両手で握った。すると、急にペンダントが光を放ちながらふわふわと浮かびだし、ゆっくりと僕の手のひらに落ちた。
「…なにがしたかったんだ?」
僕は手のひらに乗ったペンダントを近づけて色々な角度から見てみたが、なにも変化はないようだった。
特に変わった様子はない…。傷とかもない…。なら…まあ、いいか…。
「さて、そろそろ修行に…」
その時だった。奇妙な声が上空から響き渡った。
「…きゃああああ! …けて〜!」
「…なっ、なんだ!?」




