第九十六話
「確か…このへんだよな…」
「…あっ、あったよ! お城に戻ってる!」
シャルが指を差した方を見ると、大きなキノコは消えて元の城に戻っていた。お城を見る限り特に大きく壊れていない。中にいる人達も無事な可能性が高そうだ。
「よかった…パッと見は大丈夫そうだ…」
「……みんな…無事…かな…」
シャルの表情は段々と暗くなっていった。僕はシャルを元気づける為に、ニッコリと笑って励ました。
「大丈夫さ…。外のキノコは消えてるんだ…。もう、元に戻ってるよ…。それに、俺にはリカバリーがあるんだ。…シャルだって見てただろ?」
「…そっ、そうだね! 早く降りよう!」
「おっ、おい…。暴れるなって…。さあ、ついたぞ…」
「…あれ? あの子は…」
城につくとアリスが外で待っていて、僕達の方に駆け寄ってきた。少し疲れた顔をしていたが、ケガもなく元気そうだ。
「アル、どこにいってたのよ! 心配したんだよ! …っていうか、大変だったんだからね!」
「ごめん…。こっちも大変だったんだ。黒い魔物と戦ってさ…。まあ…なんとか倒したけど…」
「ほんと…! …って、えっ? たっ、倒したの!? そっ、そっか…。それで戻ったのね…」
「…戻った?」
「うん…。城中のみんながキノコのモンスターになっていったの…。シオンさんもキノコになって…。ほっ、ほんと、大変だったんだから!」
やっぱり、そうなってたのか…。
「…って、シオンさんがキノコのモンスターに…!? それって、かなりやばかったんじゃ…。…みっ、みんなは無事なのか?」
普通のキノコ達ならまだしもシオンさんを取り込んだキノコなんて……恐ろしく凶暴なモンスターが生まれたんじゃないのか…。取り込まれた奴らの力に比例して強くなっているとは、限らないけど……少なくとも戦力は大幅にダウンだろう。
「ええ…。なんとかね…。本当になんとか取り押さえたわよ…。…でも、もう終わったのね……。疲れた……」
「…あぁ……。お疲れ様……。」
「はぁ…。もうあんな恐い思いしたく…な……」
「まぁまぁ…。…ん? …どうした、アリス?」
アリスはボッーとしてどこかを見ていた。目線の先を辿ってみると、どうやらシャルのことを見ているようだ。しばらくすると、アリスはチラチラとこちらを見てきた。なにか言いたそうだ。
「…とっ、ところで…この綺麗な人は?」
「……ん? あぁ…シャルだよ。シャルティーニュ姫…。どうやら、薬で体が大きくなれるらしい…。…なっ? …シャル?」
「うっ、うん…」
「へぇ……。……ええー!? どっ、どういう事!?」
「…シャルもこっちにきなよ」
「…うん」
シャルはトボトボと歩き、僕の服をギュッと掴んだ。流石に気まずいのだろう。時折、不安そうな顔を僕に見せるが、アリスはそんなことは関係なく、声にもならない声を上げながら、ただただ目を丸くしていた。まあ、初めて見たら驚くだろうな。
「なっ…なっ…なっ…」
「アリス姫…あなたに謝りたいことがあるの…」
「…えっ? …あっ、謝りたいこと!?」
「その……アリス姫…三十点とかいって本当にごめんなさい…」
シャルの方を見ると深々と頭を下げ、嫌味とかではなく本当に反省しているようだ。アリスの表情をみる限り、本気で謝っていることは伝わっていたようだが、毒のように追加ダメージを受けていたようだった。
「いっ、いや、あの…」
「……アリス姫達が来てくれなかったら、もう少しで…取り返しがつかない事になってたよ…。この国を救ってくれてありがとう…。そっ、それなのに三十点だなんて……。…失礼な事をいってすいませんでした…。…ごめん…ごめんだよぉおお!」
「いっ、いや…その…もっ、もういいわよ…」
うーん…。少し、冗談でもいって和ませるか…。
「まぁ、今のシャルを百点としたら、アリスは客観的に見て、三十点ぐらいだからな…。まぁ、シャルがそれ以上謝ったらアリスが可哀想に…。…っ痛い、痛いっ、痛ったたた!」
「…アル、どうしたの? 急に騒いで?」
「それは…おっ、おまえが…」
アリスは僕の背中をシャルから見えないように思いっきりつねっていた。目がマジだ。これ以上変な事をいうのはやめておこう。
「…ねぇ…アル? …どうもしてないよね?」
「…はい……」
「……そう…それならよかった。……それで…本当は私…何点かしら?」
「シャル…聞いてくれ……。アリスは……。…って、えっ!? …シャ、シャル、煙がでてるぞ!?」
「あっ…そろそろ時間切れ…」
訂正しないとまずいことになると思っていると、シャルから白い煙がモクモクとあがっていた。次の瞬間、ボンッと音を立てて元の小学生ぐらいの姿に戻った。
「すっ、すごい。本当にシャルティーニュ姫だったんですね」
「確かにすごいな。…ちっ、ちなみに俺が飲んでも効果あるのか?」
「うーん。コビット用に作られてるから、なんともいえないけど少しぐらいは大きくなると思うよ」
なるほど…。つまり、それを飲めば…。なれるってことか…!
「なぁ、シャル…。俺にも…」
「ちなみにその薬って少しでいいのでわけてもらえますか?」
僕が薬をわけて貰おうとすると、アリスも同じ考えのようで、真剣な目をしながらシャルに聞いていた。




