第九十四話
スネークイーターを解除し、デスマッチを発動する。そして、こいつを異空間で爆発させる。これが…最善だ。十分すぎる時間だ。
「でも…」
でも、僕は生きてられるのか…。異空間で死んだら神様は助けてくれるのか…。そんな不安がよぎりながら、ステータス画面を開いて震えた手で画面を操作した。
「……よし、解…。いたっ…! …ノッ、ノーム!? なんで、お前がっ!?」
僕の顔を優しく叩くと、ノームは宝石に抱きついて光り輝き始めた。止めようとも思ったが、あまりに綺麗なその光は僕の思考を停止するには十分すぎるほどだった。
「…ギャァアアアア!」
次の瞬間、凄まじい閃光が広がり僕の視界を奪った。真っ白な世界の中、僕はとてつもない衝撃波を受けて、訳もわからないまま地面に叩きつけられた。そして、視界は真っ暗になり再び意識を失った。
「…ん? …あれ?」
闇が広がっていた。目覚めているはずだが、なにも見えない。宇宙にでもいるような気分だ。
「……生きてるんだよな…。……恐いな…」
両手をバタバタと動かすと、僕の背中には少し妙な感触がするが地面らしきものがある。もしかしたら、あの閃光で目がやられたのかもしれない。少し冷静になると恐怖がやってきた。
「……よっと!」
僕はふらつきながら立ち上がったが、どっちに進んでいいかもわからない。どこまでも続く深い深い闇を見つめていた。そんな時、手を叩く音と共にどこかで聞いたような声が聞こえてきた。
「いやあ、なかなか魅せてくれるねえ…。俺、痺れちゃったよ…。まさか、本当にスネークイーターを解除せずに倒しちゃうなんてね…」
「……お前…さっきの奴か…?」
「ああ…。そうだよ…」
気のせいかもしれないが、少し声が大人びて聞こえたので少し戸惑ったが、なんてことはない。さっきの変な夢の続きをまた見ているようだ。心配して損した。…とりあえず、文句をいっておこう。
「…お前が第ニラウンドまで戦わないから死ぬかと思ったぞ!」
「はははっ…。それはさ…俺の役目じゃないんだよ…。俺はただの観察者なんだから…」
「…観察者?」
「要するに君のプレイが見たいってこと…。だって、俺があのまま倒しちゃったら、ストーリーがグシャグシャになっちゃうだろ? それに、あれは…」
「…なんなんだ?」
「まぁ…せっかく異世界からきたんだからさ…。君が倒すべきなんだよ…。まあ、君も生きてるし、問題ないでしょ」
「なんとかな…。…ん? なんで俺が異世界からきたこと知ってるんだ!」
「まぁまぁ、それよりもさ…。今回、頑張った君に…プレゼントがあるんだ」
「……次はなんだよ…」
予想通り声の主は話をはぐらかした。僕は少しイラッとして一発ぐらい殴ってやろうかと思っていると、黄色く輝く光がスッーと現れた。
「スキル…ドゥラスロール…」
「…ドゥラ? なんだ…それ?」
「まあ、効果は使ってのお楽しみって事で…」
「いや、知ってるなら教えてくれよ!」
「使い方は自分で考えるんだ…。なるべく君のストーリーには関与したくないからね…」
「教えてくれたっていいだろ!?」
「…だって、つまらなくなっちゃうだろ? 俺は力が見たいんだ…。君自身のね…。…さて、そろそろ目覚めの時間のようだ。…また、会おう」
「おっ、おい!」
僕の静止も虚しく光の粒子に囲まれて、彼の声は聞こえなくなったが、頭のモヤが少しずつ晴れていき、なんというか夢から覚めていくような気がした。
「…うっ…ここは?」
ゆっくりと起き上がり辺りを見渡すと、木々がへし折れて、僕の周りは隕石が落ちたようなクレーターになっていた。ただ、この状況を見る限りとてつもない衝撃を受けているはずなのに、不思議と体は無傷だった。
「…生きてる……」
でも、よく思いだせない…。あの時…なにがあったんだ?
「確か…」
僕が思いだそうとしていると、後ろから誰かが抱きついてきた。心臓が止まりそうになったが、聞いたことのある声に安心して振り返った。
「うぇ〜ん…。アルー…」
「なんだ、シャルか…。びっくり…」
そこには見たこともないナイスバティーなお姉さんが抱きついて泣いていた。ゆっくりと手を解いて、もう一度見てみたが初めて見る人だ。でも…声だけはやっぱり聞き覚えがある。
「うぇ〜ん…。ほんとに心配したんだよぉお〜」
「…誰? ちょっ、ちょっと待って…。…シャルなの?」
「…わたしだよ?」
「いっ、色々と変わってない?」
そう…色々と大きくなっているのである…。本当に色々と…。
「無事でよかったよ〜」
「…シャ、シャル!? そっ、そんな、抱きつくなって…」
「うぇーん…」
ナイスバディーなお姉さんに抱きつかれて照れていると、その子はとんでもない力で抱きついてきた。




