第九十三話
僕は拘束されている目の前の魔物の一体に一気に近づき叩き斬った。
「はぁっ!」
ダメージを与えた後、僕は目を凝らして相手のステータスを確認した。
ダメージ十万…。残りHP二百四十万か…。この両手剣なかなかの攻撃力だ…。それに移動スピードも各段に上がってる…。よく見えないけど背中から羽のような風が吹きでてるお陰かな…。…よし! これなら倒せる! このままこいつを倒そう!
「…おらぁああああ!」
僕はそのまま目の前の敵を容赦なく斬り続けた。そして、黒い魔物はHPが尽きると断末魔をあげて消え去った。
「…ギィアアア!」
「よし、まずは一体…」
でも、おかしいぞ…。剣速が速すぎて数え切れなかったけど、今のは百回以上は斬ったはずだ。ダメージの通りが最初と比べて悪すぎる。この黒い魔物に弱い箇所とかあるのか?
「……」
まあ、今考えても無駄か…。実践の中で攻略の糸口を探すしかない! 僕のMPは残り三万…。恐らくこの減り方…。一分一万程度消費している。早く倒さなければ!
「あと、三体…。…あれ? どこに行った?」
周囲を確認すると残りの三体は暴れ回り、スーパーボールのように風の牢獄の中を跳ね回っていた。それだけならまだ良かったが、妙な魔法陣が見える。
「…なっ!?」
…まずい! 拘束されていても魔法は使えるのか!?
敵の方をみると弾丸のような塊がマシンガンのように僕をめがけて降り注いだ。僕は当たらないように球体の中を超高速で駆け回っていると、僕の動きに着いてこれず同士討ちをしたようだ。
「…ギィッ!? …ギィアアア」
……よし、今なら!
「…くっらえっ!」
目の前の敵を一体叩き斬ると、黒い魔物は風をまといながら吹き飛び、風の牢獄にあたると粉々になって消えてしまった。
「…ギィッ、ギィアア!!」
「…えっ!?」
…いっ、一撃で倒した!? HPもあったのに…。なっ、なんで…。…ヤバい! …弾丸が!
僕はなんとか弾丸を避けながら、右側に急旋回した。黒い魔物は次々に攻撃を仕掛け、休ませる時間を与えなかったが、僕は相手の攻撃を必死に避けながら考えた。
「…っ!」
…そうか…スピードか! この剣は僕自身の速度が上がれば恐ろしい攻撃力になるんだ…。
「ギィィイアアア!」
「くっ…!」
まずい! 敵が突撃してなにかを発射してきた。なんだ!? …弾丸じゃない。大砲みたいな玉だ。
僕は左に旋回し離れたが、その途端に後ろの方からとてつもない音がした。振り返ると数メートル程の爆発が起き熱風が伝わってきた。どうやら敵の一体は弾丸を撃つのをやめて、今度は爆弾を発射し始めたみたいだ。
「…っ!」
厄介だな…この攻撃…。それにもう一体の方もなんだか様子がおかしい…。なんで攻撃してこないんだ…。くそっ…。なにか嫌な予感がするけど、まず先にこいつを倒さなければなにもできない。でも、爆弾じゃあ下手に近づけないし…。
「…そうか! もっと速く動けばいいのか!」
よし…。予想通り爆弾を見当違いな所に発射してる…。連続発射も無理みたいだ…。チャンスを見つけるんだ…。やつが次に発射したタイミング…。
「…ここだぁあああああ!」
一瞬の隙をつき、僕は敵の胸元に飛び込んで叩き斬った。黒い魔物は、次の爆弾を発射する間もなく塵になった。
…あと一体だ。
周囲を確認すると、最後の一体は球体の中心に佇んでいた。離れているのでよく見えないが、僕に攻撃する気もなく全く動きがない。
…不気味だ。本当に嫌な予感がする。
「…まあいい。これで終わりだ」
僕は最高速度で近づき最後の一体を叩き斬った。これで終わり…そのはずだった。
「…あれ? …消えてない」
振り返ると魔物はダイヤのような鉱石の中に入っていた。僕はすぐに魔物のHPを確認すると、わずか千程度しか減っていなかった。
「…っ!」
全然、ダメージをくらってない。こいつ…なんて硬いんだ…。それになにか様子がおかしい…。…いつ、MPをこれだけ使ったんだ…。
「……なんなんだこいつ…」
最後の黒い魔物は大した攻撃をしていないのに、MPのほとんどを全て使い切っていた。そして、もう一つ不気味な点がある。だんだんと体が膨れ上がり、宝石が気味の悪い色に染まっているのだ。
「おいおい…まさか…」
ステータス画面が急に起動し、カウントダウンを始めた。嫌な予感しかしない。
「ミ…な…ゴ…ロ…シ…だ……」
「…こいつ…自爆する気か!?」
じっ、時間がない! あと、二十五秒だ! …くそっ! 堅すぎてこのまま倒すのは無理だ! 風の牢獄を解除して海に捨てにいくか!? いや、風の牢獄を下手に解除して地上に逃げられたら最悪だ…。…どうすればいい。
「……くそっ! 考えろ…考えるんだ!」
あと、十八秒…。…どうする!? …そうだ! このまま風の牢獄を発動したまま逃げればいい。…いや、ダメだ! MP全てを消費しているような捨て身の攻撃…。とてもじゃないけど、十二秒じゃあ逃げ切れない。この辺り一体…もしかしたら大陸自体が消し飛ぶ…。
「…………だったら…一つしかないよな…」




