第九十二話
「…あれ!? ここはどこだ!?」
ステータス画面を見ていたと思っていたら、僕は真っ暗な空間の中にふわふわと漂っていた。でも…ピンクのふわふわした雲もないし、なにより神様の姿が見えない…。
「やあ…」
「だっ、誰だ!?」
僕は身構えた。といってもなにも見えないんだが…。
「まあまあ…。警戒するなよ…」
どこからかはわからないが、聞いたことのない子供のような声が聞こえた。
「……」
「君にはまだ死んでもらっては困るんだ。せっかく面白くなってきたんだから…。…といってもだ。君がここで死ぬのは決定事項でもあったんだけどね…」
「…決定事項?」
「負けイベントと言うやつさ…。あれに勝とうとするなんて…。笑うとこだよ…。はははははっ…」
「……」
…なに…いってるんだ?
「あと…長時間解除状態にしないほうがいいよ…。特に今回みたいな相手の時はね…。スネークロードスネークスは君が思ってる以上に厄介なスキルなんだ」
「…なんで、そんな事知ってるんだ?」
僕が疑問をぶつけると、その質問には答えずにそいつは妙な事を言い出した。
「……でね、そんな君にプレゼントがあるんだ」
「…プレゼント?」
「ああ…。でも、MPはガンガン使うから気をつけてね。あと、五分ってとこだから…」
「…五分? …なんの話だ?」
「目覚めの時さ…。第一ラウンドは俺が終わらせた…。次は第ニラウンド…。……ゲームスタートだ!」
隣でゲーム機のコントローラーを置いたような音が聞こえたかと思うと、眩い光が足元から広がり全身を駆け巡った。
「…っ!」
数秒後に眩い光が消え気がつくと、何故か僕はさっきまでいた森の上空にいた。下を見ると黒いキノコは切り裂かれて、ボロボロになって倒れていた。僕は状況がよく掴めずにいた。
「…なにが起きたんだ?」
黒いキノコは倒れてるし…僕は空中に浮かんでる…。体もいつの間にか治ってる…。
「…ん? なんだ…。…これ?」
僕は自動的に開かれたステータス画面を見た。
〈瀕死状態となった為【???】が変異 スキル【フレースヴェルグ】を自動発動しました〉
「なっ、なんだ、これ!? フッ、フレースヴェルグ?」
僕は詳細を見る為に、説明画面を開いた。そこには説明という割にはあまりにも短い言葉が書かれていた。
〈風の翼が全てを掴み 全てを切り裂く〉
「なんなんだこのスキルは? …ん? 様子がおかしいぞ!?」
下を見ると黒いキノコが突然震えだし、風船のように膨らみ始めた。キノコの体が限界を超え弾け飛ぶと、体の中から叫び声を上げ四体の黒い魔物がでてきて散らばった。
「…なっ!?」
襲ってくるのか!? いやっ、おかしい…。どんどん距離が離れてく…。…まさか、この僕から逃げようとしてるのか?
「…なんで?」
…まあ、そんな事はどうでもいい。あいつらを早く捕まえて倒さないと!
そんな事を思っていると、ステータス画面から急に音声が流れた。
「捕縛魔法を自動発動します」
「…えっ!?」
僕の体は勝手に動き、さらに上空に飛びだした。気付けば辺りの景色が全て見えるような、とんでもない高さまで上昇していた。
「……全くどうなってるんだ」
驚く暇もなく、今度は僕を中心に緑色の光が広がっていき数百メートル程の球体になった。そして、訳の分からないまま今度は片手から緑色の光が分散し、さっきの四体の魔物を捕縛し、上空に引きずり出してくれた。
「……まあ、色々疑問はあるけど…。まずはさっさと倒すか!」
僕は神様からもらった剣を抜こうとしたが、肝心の剣がどこにも見あたらなかった。倒れたところに置いてきたようだ。
「…しっ、しまった!」
…剣がない! まずいぞ…。
「攻撃魔法を自動発動します。…モデル〈ソード〉…」
「…ソード?」
「…ただし、一度発動すると以後変更はできませんが宜しいですか?」
なるほど…。どうやら、武器をくれるみたいだ。
「オッケーだ! 早く、武器をくれ!」
もし、あの夢みたいな出来事が本当だとしたら、もうあまり時間がない…。
「了解しました。発動します」
ステータス画面から音声が聞こえると、僕の両手に風が集まっていき風の両手剣となった。
「………って、これが剣なのか!?」
出来上がった剣は見かけ上は確かに剣の形をしているが実体がなかった。本当に風の両手剣だ。ただ…それはまるで、僕の体の一部のように初めから存在しているような不思議な感覚を覚えさせる剣だった。
「…まあ、悩んでも仕方ないか…。さてと…いくぞ!」




