第九十一話
僕が必死に叫んだ数秒後に目の前のキノコは数メートルある巨大な土の槍を作ると僕達に何発も連続で打ち込んできた。
「…くっ!」
「…どっ、どうするんだよ!?」
シャルやノームは土の槍を作り上げて応戦し、槍同士をぶつけて必死に防いでくれていた。ただ、これじゃ近づけない。
「…なっ、なんてやつだ!」
「こっ、こんなバカみたいな攻撃いつまでも防ぎきれないよ!」
僕は風魔法を発動して剣にエンチャントし、別の軌道から飛んできた槍を叩き切った。完全に防戦一方だ。
「まっ、待ってくれ。こっ、こっちも忙しいんだ!」
なにかいい方法は…。……ん? …攻撃が止まった? …今ならいけるか?
「…どうしたのかな。…MP切れ? いや…でも、まだ全然あるけど…動きが止まってる…。……チャンスだよ!」
「…まっ、まつんだっ! 近づいちゃダメだ…」
「…どうしたんだよ?」
「……おかしい…。…嫌な予感がする」
「……でっ、でも…」
目の前の敵を見ると黒い巨大なキノコは両手を上げて振り下ろした。こういう場面はゲームで、何度も見た気がする。
「…上空か!」
「…うえ? なっ、なんなんだよ…! …あれ……」
段々と付近が暗くなり、僕はそれに気付いた。それはまるで隕石のようだった。当たればひとたまりもないようなそれに、僕はなかなかの絶望を味わっていた。
「…なっ!?」
…なっ、なんだ、あのどでかい槍は!? 数百メートルあるぞ!? …ふっ、防ぐか!? いやっ、とっ、とても防ぎきれない。…くそっ! イメージできるか!?
「…くっ、砕けろぉおおー!」
僕はダイヤの巨大な槍をイメージして、上空に打ち込んだ。ダイヤの槍は巨大な岩に次々とめり込んでいき、なんとか破壊する事ができたみたいだ。いや、砕いただけというべきか…。
「…きゃぁああー!」
「…くっ、くそっ!」
…岩が降ってくる! こっ、このままじゃ…。
「しっ、死んじゃうよー!」
…そうだ! 風魔法と雷魔法で粉々にして上空に吹き飛ばせば!
「…吹き飛べぇえええー!」
上空に上がった雷混じりのサイクロンは土の造形物を粉々に吹き飛ばした。なんとかこの場はしのいだようだ。
「…すっ、すごい!」
「気をつけろ! 次がくるぞ!」
…くそっ! こんな事ならスネークイーターを解除しておけばよかった! 解除する時間もない!!
「なっ、なによ、あれ!?」
「…くっ!」
なっ、なんだ…あの無数の細い槍は!? あっ、あの数は避けきれない! こいつらだけでも逃がさないと…。ダイヤの壁を…。いっ、いや、違う! これは!?
「うぐっ……」
……狙いは、僕一人か………。
鈍い音が全身から聞こえた後、無数の槍が体を貫き、僕はゆっくりと地面に倒れた。薄れゆく意識の中で、後ろから小さな悲鳴が聞こえた。
「…きゃぁああああ!」
かなりヤバいみたいだな…。まあ、そりゃそうか…。だって、手も動かせないんだから…。
「…逃げろ。シャル…」
「あっ、あなたをおいてくなんて…」
「……ノーム!!!」
僕が最後の力を振り絞って叫ぶと、ノームは僕の目をみた後に暴れるシャルを抱え込んで逃げてくれた。……いい仕事だ。
「…ノーム、離して! このままじゃ、アルが死んじゃうんだよ!!」
シャルの声が小さくなってきた。…逃げきれればいいけど……。こいつを足止めしないと…。早く僕も回復しないと……。ダメだ…。ボッーとしてリカバリーがうまく発動できない…。甘く見ていたな…。こういうことか…。リカバリーの難しさって…。
「……」
痛みは感じないけどなんだか眠たくなってきた…。まあ、ここまでの冒険で、多少…この世界はよくなったと思うし、後は違う奴が世界を救えばいいんだ。ここまで頑張ったんだ…。もう、元の世界に戻ろう。
「……」
…ん? …ステータス画面が勝手に開いてるぞ…。…いつ、開いたんだ?




