第九十話
僕達は警戒しながら森の奥を目指した。途中、何十体かキノコのモンスターがでてきたが、同じように拘束してリカバリーを使い、キノコから解放してあげた。
「…シャル! 土の魔法で敵の動きを止めるんだ!」
「…うん! …ロックボール!」
シャルはキノコ達の足元めがけて、岩の塊をぶつけた。泥濘んだ土がキノコ達に覆いかぶさり、動きが遅くなった。
「…よし! ノームは背後のやつをそのまま、拘束! …よしっ、いいぞ! 俺が防いでる間にこいつも頼む! シャルは辺りを警戒して!」
「うっ、うん…!」
中心に近づくにつれて、更にモンスターが増えていったが、僕達は慎重に慎重を重ねて静かに目標に近づいた。
「…ふぅー……。…シャルが気付かなかったら、今のは危なかったよ。シャル、ありがとう…」
「へへへっ…」
シャルは自分の頭を手で押さえて、はにかんでいた。僕はふと視線を下におろすと、やつは少し気が抜けているようだった。そんなやつには…気合を入れて上げないとな……。
「ノームもよくやってくれた。…よし、ご褒美にナデナデしてやる…!」
「わたしもナデナデしてあげるね!」
ノームの頭をグシャグシャと撫でると頭を押さえて嫌がったが、シャルが撫でると何故か喜んでいた。この違いはなんなのだろうか。…あとめちゃくちゃ引っかかれた。
「よし…。みんな、軽快して進もう…。シャル、なるべく敵のいないルートの誘導を頼む」
「うん…。まかせて!」
そして、更に進んでいくと前方の森の景色が赤や黄色や紫といった異常な色の集合体になっていった。まるでここに入るなと言わんばかりの色だ。
「…なっ、まさか……」
「…こんなことって……」
なっ、なんて数だ…。
景色の一部かと思っていたが、そうではなかった。キノコ達がまるでなにかを守るようにして、辺り一帯を埋め尽くしている。もしこの数全てに動物が閉じ込められてるのだとしたら…。考えるだけでも恐ろしい。
「ノーム…。ここらへんが近づける限界だ…。気付かれてもいい…。全部拘束してくれ」
僕が小声で呟くと、ノームは周りが黄色い光で輝きだし、地面を通し拘束魔法を拡大させていった。辺りはまるで新しい木が次々と生えるようにキノコ達を拘束していった。
「…凄い。本当に全部拘束してるよ…」
「…やるじゃないか」
僕が頭を撫でてやると、ノームは手を胸に置いて、エッヘンというポーズをとった。今度は素直に喜んでいたが、元気が無いようだ。
「…ノーム…元気ないね」
「…大丈夫か? …ここで休んでても、いうっぐぐ……。…なにすんだ! …えっ?」
「……」
「…元気みたいだね!」
ノームは僕の肩に乗ってデカい鼻を僕の口に押し付けてきたので、文句をいうとノームがなにかいったような気がした。その習慣、妙に繊細なイメージが浮かび上がってきた。昔、ゲームで使っていた黄緑色のメモリーカードだ。
「……ノーム…? …お前…………」
「…痛かったの?」
「いっ、いや…なんか…ノームに前にもあった気がして……」
「…前にも召喚したんじゃないの?」
「…いや……。…そうか……。…ごめん…そうかも……」
ゲームで何回も召喚したな…。…そういえば……。
「しっかりしてよ…。…これからどうするの?」
「…まあ、元凶を先に叩こう。それで戻らなかったら、リカバリーで戻すから…。…シャル、キノコ達のステータスを確認しながら進んでくれ。俺もHPとかは見るからさ…」
「…わかったよ」
シャルは先頭に立ちキノコのモンスター達を確認しながら、ドンドン前へ進んでいった。この辺のキノコ型モンスターは、本体の可能性は低いのだろう。
「…ん? …なんだ…このどてかいキノコは…!?」
目の前を見ると十メートル位ある黒色のキノコが拘束魔法を解こうとして暴れていた。こいつが暴れるたびに地面が揺れ、妙な音がさっきからしている。…っていうか、こいつだけ拘束魔法が檻の形が変わってない。こいつを縛り付けるにはサイズが小さすぎるみたいだ。
「HP…十万って…他のやつに比べて各段に高いよ。それに変なスキルも…。これが本体なんじゃ…。…っきゃあああー!」
パキッと音をたてたかと思うと、シャルの悲鳴と共に黒いキノコを拘束していた土魔法の拘束がとけはじめ、今にも襲いかかろうとしていた。僕は剣を抜きシャルの前に立った。
「…シャル…後ろから援護を頼む! 弱らせるぞ!」
「…りょっ、了解だよ!」
「ノーム、こいつに拘束魔法はダメなのか!? ……って、ヤバい…! …シャル! ノーム! …こいつから離れろっ!」
「…わっわっわ!」




