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第九話

「…久しぶりに宿に泊まるよ……」

 …そういえば…旅行とか行けてなかったな……。

「…そうなの? 普段は野宿が多いのかしら?」

「…野宿って……。一応…室内だけど…戦場で寝泊まりかな……」

 大抵会社という戦場で寝泊まりだからな…。

「あなた…見かけによらずやっぱり強いのね…。部屋が与えられるなんて軍隊長レベルってこと?」

「…いや、大広間で寝てるだけだよ」

「なっ、なんだ。ただの一般兵か…」

「…ボディーガードやめる?」

 彼女はあからさまにがっかりしていた。彼女は少しうつむいた後に僕をジッーと見ていた。

「……いえ、あのゴブリンを倒したのなら相当強いはずよ。お願いするわ…。そういえば、自己紹介がまだだったわね…。私のことは……アリスって呼んで…。…あなたの名前は?」

「名前か…。名前は…」

 基本的にゲームをやるときは、ナナシかゴンベエか、面倒くさいクソゲーのときは、ああああなんだが…。…なににしよう? 本名は言いたくないけど…。やはり、ここはリアルの名前をいうべきか…。   

「…名乗れないってわけ?」

 アリスの耳が垂れている。若干不機嫌になったのだろう…。…というか可愛い。

「いや、そういう訳じゃなくて…。実は名前がないんだ…」

「…ごっ、ごめんなさい ……」

 アリスは僕の言葉を勘違いしてしまったようで表情を暗くしていた。僕はRPGゲームに当てはめて誤魔化すことにした。

「…ぼっ、僕の部族は新しい大陸に来ると名前を変えるんだよ……!」

「…変わった部族もいるのね……。…偽名ってこと?」

「…偽名とは少し違うけど……。二つ目の名前って感じかな…」

「ふ〜ん…。…ほんとの名前と同じじゃダメなの?」

「…うーん……。そういう人もいるけど…。僕は…違うというか…」

「…なるほどね…わかったわ! どうせカッコ良すぎる名前でもつけてるんでしょ?」

「いっ、いや…誰にも呼ばれないから適当な名前をつけてたんだ…」

「…へぇ…どんな名前つけてたの?」

「……ああああとか…」

 アリスは聞き間違えたと思ったのだろう。目をパチクリさせた後にベッドの上で固まったまま問いかけきた。

「ごめんなさい…。…もう一回いいかしら?」

「…ああああ……」

「……さっき…下で名前書いときなんて書いたの…?」

「……ああああ…」

「……」

 アリスは口を開けたまま絶句していた。僕はさっきよりも表情を暗くさせてしまった事に気付いて急いで軌道修正した。

「…そっ、そうだ! アリス、君が僕の名前をつけてよ」

「わっ、わたし!? …少し……。いえ…かなり…荷が重いんだけど……」

「まっ、まあ…ニックネームみたいな感じでいいからさ」

「…ん〜…困ったなぁ……」

「…まぁ…つけるの面倒くさかったら、ああああでもいいか…」

「わっ、わかったわよ! …じゃっ、じゃあ……。……アルとかだめかな?」

「アルか…。アル…。…いいね。それにするよ」

「…本当にいいの? その名前で?」

 この国に住んでいる彼女がつけてくれた名前なら変な名前じゃないはずだ。今後、名乗る事もあるし…。意外と良いものをもらったかもしれないな…。

「うん、ありがとう…」

「どういたしまして…。じゃあ、貴方の名前が決まった記念に今からパッーと……」

 彼女が立ち上がったと同時に僕はベッドに近づいて、サッと青色の毛布を抜き取り、少し狭いソファーに寝っ転がった。まぁまぁの寝心地だ。

「…悪いんだけど、疲れてるから先に俺は寝るよ。うーん…。あっちのソファーを使おうかな…。毛布一枚もらうよ。じゃ、お休み…」

「えっ、もう寝るの? …うん、お休み……。私は外でご飯食べてから寝るわ」 

 …ん? 電気も消したみたいだな…。さて、ここからがお楽しみタイムだ。

 冒険の素人ならこの後に甘い展開を期待しただろう。確かにそういう展開もある。だけど、それはゲームの話だ。…まぁ、仮にゲームでも、もう一つの展開が予想できる。サブイベントの発生だ。確かにこの世界の情報は欲しい。だが、イタズラにイベントを増やす気はない。最速クリアを目指す為には自分の現状を把握する必要がある。




「…どういうことなんだろう……」

 僕はステータス画面を開いて、次に裏スキルを確認した。ズラリと並んだスキルは青いステータス画面の中で不気味に光っていた。

「…うーん……」

 …どうもこのスキルには、常時発動タイプと任意発動タイプが存在する。メランコリーライフやインビジブルビジブル、マリシアウルネクスト、アンスキルフル…今はスキルフルか…これらは常時発動タイプだろう。

「…で…これは……」

 そして、プレイデッド、バリアブルブック、パーバスセット、これらは任意発動タイプにあたる。厄介なのは常時発動タイプ…。はっきりいってクソスキルだ。

だが、このパーバスセット…逆さまの鬼のアイコンが描いてあるスキルを使うと、とてつもなく有効なスキルに変わる可能性がある。


「さて、まずはパーバスセットを外すか…」

 僕はスキル画面を開きパーバスセットを外そうとした。しかし、ブーっとアラームが鳴り、外れてない。

「…ん? 押し間違えたかな…」

 もう一度行ってみたが、また音が鳴るだけだった。僕はその音を聞いていると、フツフツとある感情が湧いてきていた。

「…ふぅ……。…おりゃ、りゃ、りゃ、りゃりゃ、りゃぁあー!」

 

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