第七十二話
シルフィーは感慨深い表情でシオンさんを再び見つめていた。こういうときは一人になりたいだろうと思い、プレイデッドを解除しようとすると、シルフィーは慌てた様子で、声をかけてきた。
「ちょっと、待っててば! 身の上話ばっかりしてて本題忘れてた。…私がした話、覚えてる? 宝具の話…」
「…祭壇の横の石像に隠し通路があるとかってやつ?」
シルフィーはシオンさんから離れ、僕の方に近づいてきた。気のせいかもしれないが、少しだけ目が輝いているように見えた。
「ええ、エルフの王国のどこかにあるらしいの。もしかしたら、それなら私に触れられるかもしれない。お願い…。探してきて…」
「わかった。すぐに知ってそうなやつに聞いてくる。…だから諦めるなよ」
「わかったわ。あなたが諦めない限り、私も諦めないわ!」
僕はその言葉を聞くと安心してプレイデッドを解除した。
「…どうだった?」
「実は…」
僕はベッドから起きあがり、シオンさんにシルフィーとの会話を説明した。ただし、偽名のところは、よくよく考えると僕も知ってるのはまずいのではと思い、黙っておくことにした。
「…ってことで、どうやら…その宝具を探さないといけないみたいなんですけど、祭壇なんて聞いたことあります?」
「…聞いたことないな。シルフィー様を一刻も早く助けたいのに…。私は、ギルドを当たってみる。…君はアリス姫に聞いてきてもらえないか?」
「…了解です。…ところで、ふと思ったんですけど、なんで…お世話係なのに様付けなんですか?」
そう…。これは今までシオンさんが勇者だと思いもしなかった理由の一つである。むしろ、さっきまでシルフィーこそ、実は勇者じゃないのかと思っていた。
「なんで…君がそれを…。いや…シルフィー様に聞いたのか!?」
シオンさんは驚きと喜びに満ちたような顔をしていた。僕はシルフィーの顔を少し覗いた後に頷いた。
「そうです」
「…シルフィー様は命の恩人でもあり…姉のような存在でもあり…武芸の師匠でもあるんだ。君の事は信じているが、今…確信に変わったよ。本当にいるんだね…。ここに…」
「はい…。さっきシオンさんの事に気付いて、シオンさんの頬を触って喜んでいましたよ。生きててよかったって…」
シオンさんは自分の頬を触った後、ポロポロと泣いていた。そのまま、シルフィーの寝ているベッドにもたれかかり、シルフィの手を握った。
「私を…私を…恨んでいなかったんだ。…本当にすみません。シルフィー様…」
「…恨んでなんてないと思います。…でも、一刻も早く生き返らせてあげましょう」
シオンさんは涙を拭った後に立ち上がり、僕の方をまっすぐに見て答えた。
「ああ…。君のおかげで光が見えた。…本当にありがとう」
「お礼をいうのは早いですよ」
「ふっ…そうだな」
「…じゃ、作戦開始です!」
僕達は二手に別れ情報収集を始めた。僕は城にいるアリスに会いにいくと、城の中から飛びだしてきたアリスが土煙をあげながら猛ダッシュで走ってきて僕の目の前に止まった。
「今、何時だと思ってるのー! 十四時よ! 十四時! お腹ペコペコよ!」
「ごめん。実はさ…」
僕は今までの経緯を説明する事にした。ただし、シオンさんが勇者ということは黙ってある。
「…ぐすっ。そんな…ひっぐ…ひどい事って…」
アリスは鼻水をたらしながら、ボロボロと泣いていた。
「…ってことで祭壇を探してるんだけど、それらしい場所…この辺にないかな?」
「ちょっと…待って…。落ち着くから…。ふー…ふー…。祭壇…祭壇ね…。うーん…。…エルフの王国にそんな場所あるなんて聞いた事ないけど、もしかしたら、大臣ならなにか知ってるかもしれないわね。ちょっと待ってて…」
「ああ。わかった…」
アリスは城に戻り、しばらくしてまたでてきた。今度は土煙は上がっていないようだ。
「結論からいうとそんな話…おとぎ話くらいしか聞いた事ないって…。私もおとぎ話くらいしか知らないしどうしよう…」
「ちょっと待って…。おとぎ話ってなに?」
「おとぎ話だから、気にしないで…。どうせ役にたたないから…。お城の文献で過去の地理を探してみよ?」
「ちょっと待って…。…アリス、おとぎ話の話を聞かせてくれない?」
「えっ!? …別にいいけど本当に有り得ない話だよ」
「…聞きたいんだ」
「じゃあ…。…むかし、むかし、あるところに勇者様がいました。勇者様は世界を平和にした後、世界を見守る為に自らの武器と魂を祭壇に封印する事にしました」
「…それで?」
「勇者様はそこに通じる扉をエルフの王国へ作りました。そして、扉を開く為の鍵をある国に渡し、扉を見つける為の道標をまた別のある国に渡しました」
「…ある国ってどこなの?」




