第六十一話
「ステータスは…。うわっ…」
HPとMPは予想通り一千万超え…。そして、スキルは六属性吸収、七属性攻撃超強化、弱点特攻、オールヒール、状態異常無効化、軽減バリア常時発動、高速移動、ステータス可視化、???。裏スキルは物理有効、雷属性吸収無効化か。
「…って相変わらず化物みたいなステータスだな。…ん? …???ってなんだ
…まあいい。元の世界に戻ってきたみたいだし、面倒なことになる前に森に逃げよう。
森の茂みにつくと誰もいないことを確認し、ドクターペインを発動後、スネークイーターを生成し元の姿に戻った。
「よし、これで元の姿に戻れたし…。さっさと城に戻ろう」
急いで城に戻ると所々壊れて辺りには柱や壁が崩れ落ち、広場には怪我人も沢山いて、うめき声をあげていた。
「…大惨事だな……」
仕方ない…。これ以上被害が広がる前に少し危ないけどリカバリーを使うか…。
辺りを見渡して怪我をしてない体力がありそうな兵士に声をかけた。
「兵士さん…。怪我人を集めてくれ。俺が回復する」
「君は誰だ?」
「通り過がりの回復術士だ。ポーションで回復できなさそうな人を連れてきてくれ」
「…わかった。今からこの広場に怪我人を運んでくる」
しばらくすると数人の兵士達が足を折ったメイドを連れてきた。
「…うっ、痛い……」
「もう、大丈夫だ。よし、治すぞ!」
負傷者達が見守る中、メイドの傷が段々と治っていくと辺りのエルフ達は喜んだ。
「…凄い。本当に治ってるんだな。どんどん頼む…」
それから流れ作業のように兵士達が怪我人を運んできて、結局十数人ぐらい治した。どうやら、この辺にいる兵士達は演習中で外にでていたのでそこまで怪我人がいなかったようだ。
よかった…。あまりひどい怪我人はいないみたいだ…。とりあえずは終わりか…。
そう思っていたら血相を変えて先程の兵士が走ってきた。
「すまない。一緒に来てくれ! 大変なんだ!」
「どうしたんだ?」
「王様が大変なんだ! 早く! 急いで来てくれ!」
崩れかけた城の中に入るのは危険そうだな。時間もかかるし…。それなら…。
「わかった。王様の場所まで飛んでいく」
「飛んでいく?」
僕は魔法を発動して空中へ浮遊すると、兵士の手を握った。
「さあ、案内してくれ」
「すっ、すごい。ほっ、ほんとに飛んでる! …あそこだ。あの一番くずれた場所!」
「…わかった」
上昇し崩れ落ちた屋根からさっと降りると、そこにはたくさん人が集まっていた。シオンさんに僕を捕らえた老人や兵士に医者の姿だ。
「アルッ!? きてくれたのね!?」
「アリスか!?」
ぱっと見わからなかったが、それはお姫様姿のアリスだった。声を震わせながらアリスは泣き崩れ王様に抱きついた。
「お願い。お父様を治して! あなたにひどいことをしたのはわかってる。でも…でも…」
「…わかった。…アリス、少し離れてくれ」
アリスがメイド達に支えられながら離れた後、そこに倒れている王様と思わしき人物の体の状態を見た。それは予想以上にひどく、かろうじて生きている状態といったところだった。
…これはかなり難しい。リカバリースリーよりのリカバリーツーだろうな。
王様の体に触れ、リカバリーを発動してみたがやはり予想通りの状態だった。
なるほど…。色の消えかかった無数のパズルを組み立てろということか…。流石にこれは…。
「…アル? 治りそう?」
「…ごめん。これは無理かもしれない」
「…そう。…そうよね」
「うっ、アリス、アリスがいるのか?」
どうやらアリスの声に反応して王様が目覚めたようだ。
「お父様!?」
「アリス、可愛い顔が台無しだ。すまない。色々冷たい事をいって…」
「お父様、私が悪いのよ」
「アリス…。この国を頼んだぞ…」
「おっ、お父様!? おとうさまぁああああ!」
王様はアリスにそう言い残すと再び意識を失った。アリスの泣き叫ぶ声は僕の心を締め付けた。急いでステータス画面を開いてなにかできることがないかを考えた。
「…くそっ! なにかいい方法はないのか!?」
考えろ、考えろ…。…ん? レベルが5になっている。スキルポイントは21だ。よしこれを…。ダメだ…。リカバリーはスペル…スキルじゃない。
「いや、待てよ…」
…スキルフルを限界まで上げたらどうなる? でも、それをやってしまうともう外せない…。まあ、考えてる暇はないか!
即座に僕はスキルフルを上限限界まであげると名前が変化した。そこにはこう書いてあった。
「…フルスキルフル? まあ…いい。アリス、もう一度リカバリーをやらしてくれ」
「でもっ…」
「時間がない! アリス、俺を信じろ!」
「…うん」
アリスが離れると素早く王様の体に触れてリカバリーを発動した。今にも命の灯火が消えそうだ。
…なるほど。さっきよりピースが大きくなった。それに色も見易くなって組立方もわかる!
「これなら…いける!」
一つピースを埋め込むごとに黄金のバズルのような光が王様に入りこんでいき、失った体を再生していった。
…焦るな。……慎重に…早く! …あと、少し……。…あと、少しだ……。
「なっ、なんじゃこの魔法は!」
「凄い…君は一体…」
…消えるな! ……あと、少しなんだ!
「アル…お願い!」
「………よしっ、これで終わりだぁあああ!」




