第四十話
「くっ…。はははは…」
「……やっぱり、さっきの話はなしにしようかな…」
「すっ、すいませんでした!!!」
怒られる前に僕は急いでもう一本コーラを開けてコップに溢れんばかりに入れた。
「…まぁ、今回はそういうことにしよう」
「…じゃっ、じゃあ、乾杯!」
「ああ、乾杯」
コップの音が響き渡り、甘くシュワっとしたものが喉を通り過ぎた。やはり、何度飲んでも美味しい。
「…でも、好きで話してるわけじゃないって事は呪いかなにかなんですか?」
僕は真面目な顔をして聞いた。そんな魔法もあるのかもしれないからだ。
「…まだふざけてる?」
「ちっ、違いますよ! 本当に…!」
「……この前に滞在していた国の古い言語が抜けないんだ。にゅっとか…にゃっとか…やたら多用するし…」
「そっ、それは…大変ですね…」
なんだ…。そんなことだったのか…。
「はぁ…」
その後は、しばらくコーラを飲みながら談笑して、お礼をいった後に僕は神様に会うために教会へ向かった。そんなときだった。物陰に気配を感じ、振り向こうとすると、どこかで聞いた嫌な声が聞こえた。
「なかなか面白い事してるわね…」
「…その声…アーデル! …お前、どこにっ……。…なっ!?」
建物の隙間に気配を感じ振り返ろうとしたが、さっきから体を動かそうとしても動かない。まるで、体が石になったようだ。首元にずっと伸びた彼女の冷たい手を感じる。
「…今回も私の勝ちのようね?」
「…ぐっ!」
「おっと…変身はしないほうがいいわよ。こんな町中で…。仕方ないわね…。…今回は引き分けにしといて上げるわ」
「……なにが目的だ?」
耳元で囁く彼女を横目に見ると、特に武器なんてものは持っていないが、安心はできない。彼女がぼくの知らないこんな力を既に持っているってことがそもそもヤバい。
「あら…話が早いじゃない? そうね…。単刀直入にいうと、私とある大会に出て欲しいの…」
「…なんでそんなものに……。体が動くぞ…。よくもっ…!」
彼女の胸ぐらを掴もうとしたが、僕は辺りの異変に気がついた。落ちかけの荷物に転けそうになっている人、氷のように止まった噴水…。止まっていたのは僕だけじゃない。この世界が止まっているんだ。
「…全く…話は最後まで聞くものよ?」
「……どうなってるんだ? …お前がやったのか?」
「いえ…私ではないわ…。この空間が過負荷状態になりつつあるの…。…でも、これは貴方が探しているものと違う。…サブイベントってやつね」
「……」
これがサブイベント…?
「…まあ…私に取ってはメインイベントなんだけど……。…どうしても貴方の協力がいるのよ」
「……ちなみに協力しないとどうなるんだ?」
「ゲームオーバーってやつかしら…。でも、どうなるかなんてわからないわ…。案外…ここはなにならないかもね…。貴方は無限に絡み合った世界を…私は一と零の重なった世界を旅しているのだから…」
「…どういう意味だ? …もっと詳しく教えてくれ!」
「…ここでの会話なんてほぼ無意味なものよ。…貴方は忘れてしまう。そろそろ時間ね…。協力してくれるなら、ここを旅立つ前に闘技場に来て…。じゃあね…」
アーデルが肩をポンッと叩くと、辺りは動き出した。まるで、悪い夢からさめたようだ。それに、本当にアーデルがいった通り、何もなかったかのようにさっきまでのことが記憶から薄れていく。
「…闘技場くらいしか覚えてないな」
……あとで、時間があったらいってみるか……。
街の真ん中にある噴水を越えたところに教会は建っていた。教会は、前の教会とは違い壁の色も綺麗で建物自体も大きく作られていた。歴史を感じない作りは最近できたか、もしくは改修されたのかもしれない。
「さて、どうするかな…」
正直…入りたくない…。変な目で見られるのは目に見えてるからな…。
「…待てよ……」
辺りに誰もいない事を確認して教会の裏側に行くと、そこは日陰になっていて草がのび放題だった。僕はしゃがみこんで草を抜き始めた。
「おいー神様ー…。聞こえるかぁー」
「はい、聞こえてますよ」
よし、うまくいった。どうやら教会の近くにいれば会話ができるようだな…。草抜きをしてれば怪しまれないだろう…。
「なあ、聞きたいことがあるんだが六つの悪魔って知ってるか?」
「…六つの悪魔? なんですか…それ?」
僕はシオンさんからさっき聞いたおとぎ話を神様に伝えた。
「…ってことなんだけど……。…かっ、神様じゃないよな?」
「わっ、私じゃありません! そんな恐ろしいことしませんよ」
「よっ、よかったよ…」
流石にそんな目に合うのは嫌だからな…。
「うーん…。でも、その話…。もしかして、創造主と悪魔との戦いの事ですかね」
…創造主? …この世界を作ったものの事か?
「でも、悪魔との戦いって…。一体どういうことなんだ?」
「あなたが理解しやすいようにいうと、ラスボスとラスボスの戦いです」
なっ、なんだそのゲーマー心をくすぐる熱い戦いは…。




