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第四話

 風が吹いた。ゆっくりと目を開けると、さっきいた場所とは明らかに雰囲気が違う。沢山の木々が天高く生い茂っている。そんな場所に僕は出ていたようだった。 試しに振り返ってみたが、さっきの光の扉は見当たらない。

「…ついたみたいだな。…さて…ここからどうするか……」

 辺りを観察すると、草や木が人の歩くスペースを奪って生い茂り生えていた。道らしい道もなく、どうやら整備はされていない。つまり、この近くに人が住んでいる感じはないようだ。

「しまった! …モンスターでるのか聞いとけばよかった」

 まさか人を殺めてレベルアップは嫌だぞ…。

「…うーん…まずは村にいくか……」

 …だけど、どっちにいけばいいんだ? この辺はゲームと違う。NPCがいればどこに行けばいいのか教えてくれるのに…。まあ、まずは現状把握だ。視界に入った中で一番高い木に登ろう。

「……」

 …だが、どうやって登るんだ? 木登りなんかしたことないぞ…。…というより力がなさ過ぎてできない。

「…ダメもとで登ってみるか。…よいしょ…おっと!? …あれ?」

 僕は木の表面に思いっきり爪を立て力を入れた。そうすると柔らかいスポンジのようにズボッと指が入っていった。

「…腐ってる? まさか…」

 僕は全力でジャンプすると次の瞬間、辺りの景色が一望できるほどの上空にいた。前髪がグジャグシャに乱れるほど風が吹き荒れていたが、そこでみる景色はなんとも最高だった。だが、そんな感傷に浸る間もなく、一つの疑念が湧いた。

 …これが普通の人間のできることなのか?

「……違う…よな…?」

 でも、さっきから落ちる気配がない。浮かび続けてる。だとしたら………魔法が使える前提での普通の人間か…!

「…魔法が使える……。 やったぞ…!! でも…おかしいな…。あんなに練習してもダメだったのに……。……まっ、まぁいいか…」

 たぶんあのポンコツ女神のせいだったんだろう。そういうことにしとこう…。…さてと…お次はどんな魔法を……。……な〜んか引っかかる…。なんだ…? ゲーマーとして…何か重要な事を忘れてる…気がする……。

「…まっ、まさか!? スッ、ステータスはどうやってみるんだ!? …ステータス!」

 僕が焦りながらそういうと、透き通った青色の四角いステータス画面がパッと目の前に現れた。僕はステータス画面から、ある項目を探して見つけると、背筋が凍りまくった。

「…あっ、あぶねえ……」

 MPは98…97…やっぱり減り続けてる。

「調子に乗って空を飛び回っていたら魔力切れになって死ぬところだった。気付いてよかった……。…ん? …なんだあれ?」

 よく見ると遠くの方に白い煙が立ちあがっていた。煙の長さから考えるとついさっきつけたって感じだ。

「…誰かいるのか? …近くまでゆっくりこのまま飛んでみるか……。…ん? …あっ、あれ? …はっ、はやっ、ぎゃあああああ!!!」

 僕は目的地までゆっくり走るような速さで飛ぶイメージをしたが、まるで制御ができないジェットコースターに乗っているようなとんでもない速さで飛び出した。僕はあまりのその速さに地面に足がつくと腰が抜けてしまった。



「はぁ…はぁ…。しっ、死ぬかと思った…」。 

 なっ、なんて、速さだ。MPは…90か…。

「あっ、あんまり減ってないな」

 …使用時間が短いから? …うっ、気持ち悪い…。

 ハァハァいいながら苦しんでいると、ピロンとどこからともなくへんてこりんな電子音が聞こえてきた。

 …なんだ、今の音は? 

 辺りを見ても特に変わった事もなかったので、もう一度ステータス画面をみると何故かステータス画面の一部が点滅していた。

「…裏スキル? なんだこの項目は? さっきまでなかったぞ?」

 僕はその項目が気になり、ポンっとタッチすると小さな画面がポンっと現れた。

「…これは……」

 さっきまで見ていた画面となんのかわりもない画面だ。そのはずなのになんだか異常な不気味さを感じる。

「……なになに…裏スキル、インビジブルビジブル…。これは本来見れない自分の裏スキルの特徴がみれます…」

 なるほど…。使えないスキルが見れるというクソスキルか…。

「…ん? まだあるぞ…。アンスキルフル…。下手くそか…。これは想像した魔法とは絶対に違う魔法になります」

 …どういうことだ? …もっと詳しくみたい。

 僕はアンスキルフルの項目をタッチすると、説明画面がスッと飛び出してきた。

「……ふーん。…なるほどな」

 要約するとこうだ。魔法とは想像する事…。つまり、イメージ力が大事だが大きな火の玉を出そうとすると小さくなり高熱の火を出そうとすると低熱になる。つまり、さっきの魔法も怖かったのでゆっくり走るくらいの速さを想像したからとてつもないスピードになったのだ。


「……はっきりいってクソゲーに近いぞ…これは…」

 実際、命の危機になったときにあえて弱い魔法を想像しないといけない。想像してはいけないことを想像せずに想像できる人間はいないだろう。

「…それに……」

 きっと…これは無意識下に考えている事も反映されている。

「…試しにもう一度浮遊してみるか」

 魔法を発動するとぎこちないが、今度はゆっくりと空中を浮遊する事ができた。もちろん、さっきのジェットコースター並みの速さを想像して、ジャンプくらいじゃ遥か上空まで飛べないことを想像している。

「おっと…」

 ただ…やはりというべきか…ゆっくりは飛べているものの…この状況に慣れれば慣れるほど制御が乱れてきている…ような気がする。

「このスキル…。想像以上に使えない…」

 …制御不能だ。

 昔、テレビでみたけど心を無にする矛盾とにている。心を無にすると同時に潜在意識では無にしようとしている。つまりは無になってないのだ。 

 結局、これは魔法を使うごとに使えなくなっていくスキルってことか…。

「なるほどな…」

 僕はゆっくりと地に降り満面の笑みでにっこりと笑った後、思いっきり地面に向かって叫んだ。

「…クッ、クソスキルがーー!!!」


 

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