第三十二話
説明を聞くと、つまりこういう事だった。説明を聞くとギルドというのは短期間アルバイトの斡旋所みたいなところで仕事を随時募集している施設なのだ。
「…という事です。おわかりいただけましたか?」
「はい。なんとなくですけど…」
「それはよかったです」
まあ、確かにゲームの世界でもそんな感じかもしれない…。でも、ゲームはクエスト非達成で報酬ゼロになっても、またやり直せばいいかー…なんて甘く思えるけど、リアルで完全成果主義だと相当きついな。
「あの…今の話とは関係ないんですけど、さっきの差別主義者ってなんなんですか?」
「それは…」
それから話していく内に受付のお姉さんの冷たい目の理由も分かった。実は、神族イコール人間みたいな感じで神族が滅ぼされた後に人間は差別されてきたらしい。最近は表面上にはでていないが、今でもいるのはいるそうだ。
「なるほど、よくわかりました…。あの…例えば情報とか買うこともできるんですか?」
「そうですね。そういったこともできます。どういった情報が知りたいのですか?」
「世界の異変とか…」
「…つまり、戦争の状況とかですか?」
「いや、そうじゃなくて…。世界で起こっている不思議なこととか…。…なにかないですか?」
「そうですね。そういった情報は曖昧すぎて厳しいかもしれません」
「そうですか…。…そっ、そういえば、僕もギルド員になれるんですか?」
「はい、誰でもなれますよ」
「……そうなんですね!」
僕はワクワクしながら受付のお姉さんに尋ねると嬉しい回答が返ってきたので、心の中でガッツポーズをしていると、まさか…その直後にガクッと手を下げることになるとは思わなかった。
「…ただし、基本的にステータスを公開してもらわなくてはいけません」
よっしゃああぁぁぁ…! …ん? …公開?
「公開…ですか?」
「…公開したくないみたいですね?」
…ギルドに入りたかったけど、公開するなら無理だな。
「でっ、できれば…」
「まあ、非公開でもできるんですが…。ただ…」
「…ただ?」
「個別にくるクエストはないですし、あとステータスで、制限がかかっているクエストには参加できないのでオススメはしません」
まぁ、履歴書なしで採用しろってのは無理か…。でも、ギルドか〜…。ゲーマー魂をくすぐるな〜…。…一応、登録だけしておこうかなー…。
「あの、非公開で登録お願いします」
「わかりました。それでは、ここにサインをお願いします」
その後、事務的な処理を終えると僕は依頼書を確認した。確かに書いてあるのは近隣のモンスターの駆除など簡単な仕事ばかりで報酬も少なかった。
「それで…どれか受けられますか?」
「うーん。この討伐に書いてある報酬って、なんで二つあるんですか? この約一万ギルとかって…」
「ああ、それはですね。例えばこのボアの討伐で説明するとですね…」
受付のお姉さんはイノシシのモンスターが描かれていた依頼書を指差した。
「はい…」
「まず倒してそれを持ってきてもらえば、こっちの基本的な報酬を即金で五千ギル払います。そして、こっちが討伐してしばらくした後に支払われる報酬…これが約五千ギルです。あわせて一万ギルですね」
「…しばらく?」
どういう意味だろう…。
「…しばらくしてというのはですね。倒してそのモンスターを加工して販売し、お金になるまで時間がかかります。そういった意味です…。ちなみにいうと、お金にならない場合もあります。」
…なるほど…。なかなか面白いシステムだ…。でも…大変そうな割にあわせて一万ギルなら、かなり取られてるんだろうな…。
「…ちなみに上手く売れた場合は、どのくらいが還元されるんですか?」
「ええと…。大体九十パーセントくらい…」
「きゅっ、九十パーセント!?」
結構、還元してくれて…。
「…取られるので、十パーセントくらいですね」
「そっ、そうなんですね…」
…ないなー。…世知辛い世の中だ……。
「でっ、でも、ですね、貴方の持ってくる品質が高ければ、段々と還元率が高くなります」
…ああ、あれね……。私が作りました的な…。うーん…。でも、一体…なにに引かれてるんだろう…。税金がものすごく高いのかな…。
「ちなみに…ギルドはどのくらいとっているんですか?」
「…教えられません」
「…えっ?」
「…教えられません」
受付のお姉さんは最高の笑顔で答えた。これ以上聞いても教えてくれはしないようだ。
「…ここは…ボッタクリですか?」




