第二十六話
「……」
結構歩いたけど…。中は意外と広そうだな。奥の方は暗くてなにも見えないけど…。
「…ん?」
すると、少し離れたところが、ゆらゆらと揺れていた。一瞬、人影かと思ったが、そもそもこんなところに人がいるわけない。
「…何なんだあれ……?」
ゆらゆらっていうか…。なんか近づいてきてないか…。まさか…モンスター…。まっ、まさかな…。…いや、モンスターじゃないか!?
そこには頭に草がたくさん生えた大根のようなモンスターが目を光らせていた。火力をあげてよくみると、僕の周囲をたくさんのモンスターが囲んでいた。
「ギュ〜…」
「黙って通してくれると、助かるんだけど…」
どうやら、言葉は通じないみたいだ。僕は手のひらから大きな火の玉を上空に浮かせた。数十体ってところか…。周囲の状況を確認しながら、剣を素早く抜き、敵のステータスを確認した。
HPは100…。そこまで強くないけど…。でも、裏スキルを持ってるかもしれないし、できれば倒したくはないな…。
「…ギュ!」
「くっ…!」
僕が油断してそんな事を考えていると、背後からの攻撃に気付けずに頭突きをもろに食らってしまった。ダメージはそこまで受けてないが、僕は体勢を崩してしまった。
まずい…。逃げるか…。でも、こんな暗闇の中じゃ、逃げ切れないかもしれない…。
「…ん?」
「…ギュ…ギュ…」
…どうしたんだ? このモンスター…。
さっき体勢を崩したときにたまたま攻撃があたり、葉っぱの部分を刈り取ってしまったモンスターがいたが、目をつむり寝転んでいた。HPは減っているが、死んではないようだ…。
「ギュ〜…」
しばらくみていると眠そうな顔をして、地中の中に入っていった。僕は左手を前に出して、魔力をた溜めていった。
「なるほど…。弱点ってことね…。ファイヤーボール…はまずいか…。じゃっ、ウインドカッター!」
「ギュ、ギュ…!?」
風の刃が彼らを吹き飛ばしながら斬り刻んでいった。僕は敵が怯んだうちに、間合いを詰めて、剣と魔法を使い、どんどん刈り取っていった。すると、予想通り大根型のモンスターはどんどん地中の中に潜り込んでいった。
「これで最後…!」
「ギュゥ……!」
「ふぅ…。終わったな…」
戦闘を終えて少し休憩した後に、しばらく歩いていると石で作った螺旋階段が見えた。上からは月明かりがさしている。
「やっと、ゴールか…」
それを登っていくと地上にでることができたが、登っている時に妙なデジャブが浮かび上がってきて、僕は立ち止まった。
「なんだ…今の…」
まただ…。ここに一度来たことがある気がする。でも、それは夜じゃなかった…。太陽の光が指していた気がする…。
「……そんなにわけないか…」
疲れてるみたいだ…。早く…ここから出よう…。
「けほっ…。どうやら、村の外にでたみたいだな…」
どうも出口は古井戸を偽装して使っているみたいだった。辺りをよく見ると、上蓋のようなものがあったが、壊れて真っ二つに割れていた。
「汚れちゃったな…」
せっかく買ってきて貰ったのに申し訳ないな…。
「おわびにコーラでも買って帰るか…」
僕は服についた落ちない汚れを必死に手で叩いていると、後ろからただならぬ気配を感じた。この気配は…。
「…待ってたわよ」
「…アーデル……!?」
部屋にいたときの姿とは違う。スネークイーターズも解除していないのに、彼女は元の魔人の姿に戻っていた。
「…幽霊でも見てるのかって、顔してるわね」
「……どうしてここにいる?」
「貴方にぶっ殺されたからかしら…。それとも殺されなかったからかしらね」
「…俺は殺してなんか……」
「…私も私の事を知る必要があるのよ。貴方と同じでね…。だから、ずっと貴方が一人になるのを待ってた…」
「…へぇ……。…っ! …抜けない!?」
僕は剣の柄をゆっくりと手探りで握ろうとしたが、あちらの方が上手だ。氷の魔法で剣は封じられ、鞘から出すことができない。彼女はその隙に僕の喉元をつかんだ。
「…今回は私の勝ちね? …負けましたは?」
「…っ!」
…やられる!?
そう思ったが、彼女は僕の予想を裏切り、何故か喉元を掴んでいた手の力を弱め、僕の顎をクイッと引っ張った。
「…負けましたは?」
「……」
「…ねぇ?」
「……」
…どういうつもりだ。…というかこいつ……。…ってか、めちゃくちゃ煽ってくる…。
「…なんかいったらどうなの? それとも…負けましたもいえないの?」
「…ぐっ…負けました」
「はははっ…面白かった…。じゃあ、後は…罰が必要ね……」
彼女は僕の口元に唇を寄せてきた。僕は驚いてあたふたしていると、額に思いっきり衝撃が走った。
「…騙したな……」
「…お互い様よ」
彼女は無邪気に笑っていた。この姿だけ見ると、この前のような殺気は感じ無い。本当に悪ふざけしているだけにしか見えなかった。とりあえずは、警戒を解いてもいいのか?
「…どうやって…その姿に戻った?」
「…何故か夜だけは戻れるのよ。でも…貴方が犯人だったのね」
「犯人ってわけじゃ…。…勝手になったんだ……」
「まぁ…いいわ…。この姿のほうがちょうどいいでしょ…。それより…実は貴方にお願いがあってきたの…」
「…お願いって? …って、それ俺のお財布!?」
「半分もらっていくわ。この姿だと色々不便でね…。でも、こうなったのも、元々は貴方のせいだし、仕方ないわよね?」
「…お前が襲ってきたからだろうが!」
「…はて…なんのことかしら? おっと…そろそろいかないと…。はいっ、返すわよ!」
「……おっ、おいっ!」
「…じゃあ、また会いましょう…」
彼女はカエルの財布を僕に投げ、スッと上空に飛んでいき、闇夜に消えていった。そこに残ったのは静けさと虚しさだけだった。
「……」
……あいつ…次は負かす……。
僕は雑貨屋でパンとコーラを買ったあと宿に帰った。なんだが、色々ありすぎてドッと疲れた一日だった。




