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第十九話

「…何で元の姿に……。まさか…。…まっ、まずい! 早く戻んないと!! …ステータス!」

 僕は急いで元の姿に戻ると、彼女のか細い腕を掴んだ。完全には回復していない彼女はそれ以上腕を動かす気力もなく、それ以上は何もすることなく腕を降ろした。

「…私の体になにをした!?」

「……おっ、おい、声が大きいって! 何もしてないから…」

「だったら、この体は……! …元に戻ってる? 錯乱しているのか…?」

「そうだよ…。少し落ち着いて…」

「……」

 彼女は鏡に写った元の姿を見て安心していた。しばらくしてから、彼女の目線がこちらを向いたのと同時にスキルを発動して今度は僕が元の姿に戻ると、不思議なことに彼女の姿がまた人間のような姿になった。どうやら一つわかったが、スネークイーターズがなんらかの悪さをしているようだ。

「…怪我してたからベッドに寝かせただけだ」

「でも…どういう事……? …何か大事な事を忘れてる?」

 僕は彼女の後ろにあるステータス画面に手を伸ばしてそっと閉じた。彼女は難しい顔をして、何か考え込んでいるようだった。 

「いや…だから…なんていうか…」

 とりあえず…僕のスキルの事は黙っておこう…。

「……少し…思い出してきたわ」

「そっ、そう…」

「…貴方…黒騎士じゃないわね……」

「…えっ!?」

「いや…正確には違う…。……誰なの? …どこかで会った事が……」

「俺は…アル…。少し説明するから、まずはそこをどいてくれ…」

「……えぇ…」 

 僕は一応…黒騎士の仮の姿と言う事にして、後は彼女との戦いが終わったあとの話を正直に話した。



「…っていうことだ……。でも…妙なんだよな…」

「……妙?」

「……そんなに時間が経ってないはずなのに一日たってたんだ。…もしかして、フィールド魔法の影響とかかな?」

 僕は何気なく聞いたつもりだったが、返答が何も帰ってこない。彼女をふとみると顔が徐々に青ざめていき口を覆った。

「一日経っていた……!? …っ!」

「おっ、おい…無理するなよ…」

「いっ、いいから、さっさと続きを!」

「えっ、続き? 続きっていっても…。まぁ…そこからは君を宿まで運んできたくらいかな…。結構…大変だったんだぞ…」

「次元が……揺らいだ? まさか…あれは本当の………。…だとしたら…この世界は……」

「…どうしたんだ?」

「……どうしたんだ!? ……わかっているの…!?」

「…わかってるのかって……。……何が?」

「…ここはお前が………。…ちっ、もういい!」

「…どうしたんだよ。…たっく……」

 彼女は深く布団を被り潜り込んでしまった。何回か声をかけたが反応はない。

「……」

 仕方ない…。下に行って報告でもするか…。



 階段を降りて白猫の部屋のドアをノックして入ると、二人が飲み物を飲みながら談笑していた。彼女達は僕に気付くと暖かいコップを差し出してきた。どうやらホットミルクのようだ。

「お疲れ様…」

「…一応終わったよ」

 僕はホットミルクを片手に信じてくれるかもわからない話を言える事だけ切り取りながら淡々と話した。信じてくれるか微妙だったけど、僕の想像とは裏腹に白猫は妙に納得して、何か考え込んでいるような小難しい表情をしていた。

「…なるほどそういうことかい……。そういえば、そんなこともあったねぇ…」

「…そうなのか?」

「十年くらい前に、この近くに勇者一行が来てね…。一人戦闘不能になったって聞いてたが…。まあ、なんにせよ。ありがとうね…。お礼に好きなだけあの部屋使っていいよ」

「びっ、微妙なお礼だな……。ちなみに話は戻るんだけど、勇者一行はその後どうなったんだ?」

 僕は勇者のその後について尋ねた。白猫は少し言葉を詰まらせていたが、暖かそうなホットミルクを飲むと口を開いた。

「……魔王が生きてるってのが、そういうことだよ」

 …全滅ってことか……。

 僕はその言葉を聞いたあと、白猫に素朴な疑問を尋ねた。

「なぁ…白猫さん、仮に魔王がいなくなればこの世界は平和になるのか?」

「…そうだねえ……」

「……」

 もし、この世界がゲームと同じような世界なら魔王を倒せば世界は救われハッピーエンドだろう。王道RPGなら当たり前の展開だ。だけど、この世界はもっと複雑で、むしろ僕がいた世界と同じなのかもしれない…。

「次は力のある竜族が魔王の代わりになるだけなんだろうよ。ちょっと前はよかったんだけどね。神族がいたから均衡が取れててね」

 …やっぱりか。…難しいな……。

「…今はいないのか?」

「内乱が起きてその隙に魔族と竜族にやられちまったのさ。そういえば…確か今日が生誕祭だったような気がするね…」

「…生誕祭って?」

「…神様のだよ。…後で教会にいってみるといい。神の加護がある勇者なら、なにか聞こえるかも知れないよ…。ははっ…なんてね……」

「……」

 …神の加護か……。

「さて、私は寝るから後はよろしくね…。あんまり遅く帰るんじゃないよ」

 白猫は眠たそうな顔をしながらカウンターの上にある丸い鍋に入った。見た目からは寝心地の悪そうな硬い鍋に見えるが、すやすやとよく寝ている。

「そういえば、アリス…。シルフィーってエルフ知ってるか? 部屋にいたエルフの幽霊の名前なんだけど…」

「シルフィー? うーん…。どっかで聞いたことあるような気もするような…しないような…。よくわかんない…。まぁ、ここにいたら邪魔だし、部屋にいきましょう」

「そうだな…」

 僕達は階段をあがり、二階の部屋に入った。部屋に入ると、アーデルの姿はどこにもなかった。僕は焦りながらクローゼットや閉まりの悪いタンスを開けて探してみたが、この部屋にはもういないようだ。



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