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第十八話

「それで…どうするんだい? 泊まるの?」

 白猫は眠そうな目をしながら、だるそうに起き上がった。

 ぐっ…。しっ、仕方ないか…。

「…わっ、わかった……。泊まる…」

 アリスは涙目になりながら、僕の左手をつかみ大きく揺さぶった。

「いやあああ! いやよ!! ここに泊まるくらいなら別のとこに泊まる!!!」

「どっ、どこも宿屋あいてないだろ! それに彼女のこともあるし…これ以上は…。ゆっ、幽霊は俺がなんとかしてやるから、ゆっ、ゆらすな!」

「ほっ、本当に?」

「ほんとかい?」

 僕は大きなため息をついた。完全に幸せは逃げただろう。

「はぁ…。気は進まないけど、やってみるよ。危ないから絶対に入らないでくれ…」

「その人は連れて行くの?」

「……まぁ…その…。そこまでは怪我も酷くないし…。早くベッドに寝かせてあげたいだろ?」

 流石に目覚めたら危ないよな…。これでも…四天王だし…。

「お嬢ちゃん、しばらく私の部屋に入ってな…」

「うん…」

 アリスが白猫の部屋に入ると、白猫は近づいてきてゲスな笑みを浮かべた。

「かわいい子だね…。でも…犯罪だけはやめておくれよ…」

「…あのなぁ……」

「お嬢ちゃんには、黙っておくから…。さあ、坊や…よろしくたのむよ…」

「……なんか釈然としないけど…。わかったよ…。はぁー…」

 僕はアリスを一階に残して、あの部屋に入り鍵をかけた。僕は彼女をベッドに寝かしつけると、肩を回しながらソファーに座った。


「これでよしっと…」

 …いや、全然よくないな……。全くイベントやらないなんていったのはどこのどいつだ。

 僕は自分に怒りながら、ステータスを確認した。マリシアウルネクスト…こいつは点滅していない。ということはしばらく大丈夫だろう。

「よっと…」

 僕はスネークイーターズを解除して、魔物の姿になりプレイデッドを発動した。時間は次回解除までにしてある。

「……」

 仮死状態になったみたいだな…。おっと、いたな……。…あの幽霊だ。

 椅子の方を見るとあの黒髪の幽霊が座っていた。僕はあの恐ろしい顔を露わにして話しかけた。

「おい! ここにいると迷惑なんだ! でてってくれ!」

 幽霊はゆっくりと振り返ると、怒った様子で髪を逆立てた。だが、今の僕には流石の幽霊も勝てないようだ。

「迷惑って私がなにしたのよ! …って、ぎやああああああ!!! ばけものぉおおお!!!」

「おい! 聞いてるのか?」

「たっ、たべないでええ!」

 少し怖がらせすぎたか…。

 幽霊は飛び回った後、部屋の角で怯えて丸まっていた。幽霊を驚かすとは一体どんな顔なんだろう。僕は冷静になって話をしてもらう為、顔を鎧で覆った。

「たっ、たべないから…。でも、なんで成仏しないんだ?」

「…成仏? なにいってるの…。私が死んでるみたいに?」

「死んでるんだよ!」

 僕は理解してもらう為、目の前にいる幽霊の体へ手を伸ばしてみた。水の中に手を入れてるような感触だ。

「えっ!? ええっ!? 通り抜けてる!? まっ、まさか? 私…死んでるの?」

「ああ…」

「…じゃあ、貴方は死神なの?」

「いや、違う。まぁ、役割としては同じかもしれないけど…。成仏させにきたというか…。ところで、なんでここにいるんだ?」

「私は…。そう…思いだしてきたわ…。貴方に似た黒騎士に殺されたの…。そして、奴の弱点を誰かに伝えたくて…」

 もしも彼女に肉体があれば涙を流していたのだろう。そんな悲しそうな顔だった。

「…剣が本体で雷が弱点なんだろう?」

「…なぜそれを?」

「俺が倒したから…。倒したからこんな姿になってるんだ」

「…恐ろしい呪いね」

「いや、これは自分のせいだ。まぁともかく君の未練である黒騎士は俺が倒したから安心して成仏しなよ。こんなとこにいつまでいても面白くないだろう?」

「そうね…。ありがとう、化物さん…」

 僕は化物さんと呼ばれガクンと肩を右肩を落とすと、彼女は口を覆いながら笑っていた。

「ばっ、化物さんはやめろ。僕の名前はアルだ」

「ふふっ…ありがとう、アル……。もし、エルフの王都にいくことがあったら祭壇の横の石像に隠し通路があるの…。そこには宝具が多分…。いえ、きっとあるからよかったら使ってちょうだい…」

「おい、もしかして、あんたもエルフなのか!? 名前は?」

「名前はシルフィー…。よかったら覚えておいて…」

 彼女は微笑んだあとスッと消えてしまった。僕はなんとも言えない気分で立っていた。

 …なんか可哀想な子だったな……。まぁ、黒騎士は僕が倒して未練もなくなったし、これで成仏してくれるといいな…。


「…よし、元に戻るか」

 解除して、ドクターペインでスネークイーターズを作成っと……。

「…ん? ……変な音がまだ聞こえる。何だこの音…」

 まさか、まだ幽霊が……。

「…って、なにしてんだあの女…!?」

 ベッドに寝ていたはずの彼女は、ソファーに寝ていた僕の鎧をボコスカ殴っている。というか、驚くのはそれだけではない。角も羽も生えて元の姿に戻っている。

「…貴様ぁあ!!」


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