第百六十一話
「その名で呼ばれるのは久しぶりだな…」
「忘れもしない。私がお前のシリーズを作り続け…やっと…やっとだ…。やっと、私の体に相応しいものができたというのに…」
「……」
「…お前は! お前はぁあ! なぜ殺したぁああああ! しかも、データを全てぶっ壊しやかってぇえええ!」
「……あいつの願いだったからだ…」
「私の願いはどうなる!? お前が勇者の…あのスキルを持っている可能性があったとはいえ…。お前を処分しておけばこんな事には…。…クソぉおおおお!」
やっぱり、ゼロはシオンさんのコピーなのか…。…って、まずい!
首のない魔物は血管のようなものを僕の足に絡ませ、身動きできないようにしていた。急いで切り取って逃げようとしたが、奴は雷の魔法を自身ごと巻き込んで発動し、僕に執拗に浴びせ続けた。
「ぐっ! …ぐぅぁあああ! ゼッ、ゼロ、早く!」
「はははっ……。すぐに殺しておかなくて残念だったな…。さて、おしゃべりはここまでだ…。まずはお前を殺して……その後は………」
「…くくくっ……。…その後はなんだ?」
「……魔法が…魔法が発動しない…。まさか…」
「残念だったな…。すぐに殺しておかなくて……」
「私の魔法を封じたのか…!」
「お前にその後なんてものはない…! これで終わりだ…」
「…まっ、まて! 私に協力してくれれば寿命をやる!」
ゼロは剣を振り下ろしたが、その言葉に動きが、止まった。奴はニタリと笑い、こちらを見た。
「寿命だと…」
「そこにいるヤツを消せ! そうすれば、お前に命を…」
「くっくっくっ…なにをいうかと思えば…。お前たちを殺した後は元より生きる気はないさ…。せいぜい、苦しんで死ね…」
右手から放たれた火の魔法が、やつの頭を包みこんだ。奴が叫び声をあげると、ゼロは満足そうに笑っていながら、剣をもう一度振り上げた。
「…グギャアァァア! …クッ、クソォオオオ! …おっ、お前たちも、シネェエエエエ! 道連れだぁああああ!」
「なっ、なんだ? このフロア、縮んでないか!?」
「ちっ…。この空間に入ったのは失敗だったな。まあいいか…。一番殺したいやつは殺せたんだし…」
「おっ、おい! 諦めてる場合じゃない! はっ、早く、この空間からでるんだ!」
天井の岩が崩れ落ちる中、ゼロは諦めた様子で地面に座った。僕は慌ててゼロの腕を引っ張ったが、頑なに起きようとしなかった。
「…どうやって?」
「どうやってって…。それは…」
「お前も諦めろ…。あそこで火だるまになってるやつが解除しなきゃ無理だ…」
「そっ、そうか! その手があった。まだ、間に合うか!?」
「…ギャァァァぁァァァ! …グハァ…!」
「……」
すぐに断末魔をあげている黒い物体へ剣を振りかざし頭を叩き斬った。苦い気分のまま、急いでステータス画面からスネークイーターズを解除し、再び黒騎士になった。さっきはすぐに元の姿に戻ったが、一応は安定しているようだ。
「……よしっ…」
相変わらず凄いHPだ…。そんな事より…どこだ……。多分あるはずだ……。……あったぞ! …空間操作のスキル!
「トドメを刺しても無駄だ。こいつがそんなヌルい魔法を使うわけない…」
「違うさ…。…僕がこの姿になった理由を教えてあげるよ」
僕が地面に手をつくとモグラのようにピョコンと地面から少年がとび出てきた。今までなんの動揺もしていなかったゼロもこの子の事を見ると流石に動揺しているようだった。
「おいっ、相棒! 早く逃げないとヤバいぞ!」
「なっ、なんだ…こいつはっ!」
「大丈夫だから…。少し静かにしててくれ…」
リカバリーに似てるな…。この感覚…。
僕は感覚を研ぎ澄まし、迫りくる空間を解除した。目を開けるとガラス細工が壊れたように空間が崩壊し元の空間に戻っていた。
「なっ…!? …一体…どうやって?」
「これが俺のスキル…。倒した相手のスキルとかHPを無条件に吸収できるんだ」
「まっ、まさか、お前が魔王か!?」
「ちっ、違うよ…。それなら、四天王が攻撃してくるわけないだろ?」
「確かに…そうか…」
ゼロは不安定な体勢で起き上がり黒い剣を向けてきたが、僕の言葉に納得してくれたようだ。黒い剣を鞘にしまい、右手を押さえて座り込んで、隙らしい隙を初めて見せた。余裕そうに見えたが、流石に満身創痍のようだ。
「…ん? 怪我してるな…」
「…気にするほどじゃない……。おっ、おい! …私に触れるな!」
「いいから、みせてみろって…。回復してやるからさ…。…リカバリー!」
腕からは血が流れて、地面にポタポタと落ちていた。僕は元の姿に戻ると、少し強引にゼロの身体に触れた。振りほどこうとしていたが、僕はその腕を離さなかった。
…なんだ? 他の人と違って組み方がなんか変な感じだな…。色々と治しておこう…。
「…おっ、おい! くすぐったいからやめろ!」
「動くなって……。よし…終わった…。なんとなくだけど、多分…寿命も伸びたんじゃないのかな?」
「そんなわけ…。HPの最大値がもとに戻ってる!? …わっ、私は死なないのか?」
「いや、まあ…。いつかは死ぬけど人並みには生きれるんじゃないのかな?」
僕は感謝されると思っていたが、予想外のセリフを吐かれて震えた手で胸元を掴まれた。よく分からないが、事情を説明すれば落ち着くだろう。
「…なぜ、治したんだ! 元に戻せ! こっ、これじゃ、私は…。私は…。奴らに復讐しないと…」
「元に戻せっていわれても形覚えてないし…。…というか、そんな事しなくてもいいよ。俺が最後の四天王と魔王を倒してやるからさ…」
「…最後の四天王?」
「ああ、残りの二体はここにくる前に俺が倒したんだ。だから、もう一体で最後だ」
「まさかっ…そんなっ…。…くそっ!」
「…っ! なにするんだ…!」




