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第十五話

「違う! 俺は…」

 言い訳をしようと思ったが、彼女は泡を吹いて気絶してしまった。僕は即座にステータスをメインに切り変えると、化物じみたステータスに確かになっていた。

「えっ、HP十万!? MPも五万って…」

 それにこのスキル…。火属性無効化に水属性無効化、風属性無効化、土属性吸収、氷属性吸収、雷属性吸収、弱点特攻、オールヒールって…。

「よっ、よく倒したな…。裏スキルは…。なるほど裏スキルに雷属性吸収無効ってのがあるのか…。それで倒せたんだな……。…って、冷静に分析している場合じゃない……!」

 ……兵隊達が来る前にアリスには悪いが逃げよう…。




 僕は村から逃げて気付けば例の場所にきていた。黒騎士を倒した場所だ。僕の気持ちとは裏腹に辺りはとても静かだった。

「…まずいな……」

 このスキル一番ヤバいスキルかもしれない…。

 確かに戦った敵の技や魔法を盗むある意味勇者スキルかもしれない。でも、ひどいデメリットもある。まずは外見の変化だ。おそらくゴブリンと黒騎士を混ぜ合わせた酷い外見になっているのだろう。自分ではよくわからないが、あの悲鳴だ。相当ヤバい外見なのだろう。

「…あれ? この兜、顔隠せるのか…。まぁ…今更だけど、隠しとこう…。はぁ…。どうするかな…。これから……」

 そして、もう一つのデメリット…。達の悪い裏スキルも吸収してしまう。

もし、モンスターを無造作に倒してしまい、裏スキルに全属性弱点なんてクソスキルがついてしまったら…。この状態…強いが今後、下手に雑魚モンスターが倒せない……。

「裏スキルのない敵…。あとは四天王…。魔王ぐらいか…」

「……貴方、生きていたのね」

「……」

 …ん? こいつはあの時の女魔人か…。アーデルとかいってたな…。

「……ほんとに心配したわ」

「……」

 こいつ…黒騎士が死んで喜んでたろ…。

「…何しに来たのかって感じね? 私は魔王様の命令で死んだ貴方の体を取りに来たのよ…。ワザワザね…。…聞いてるの?」

「……」

 …何か話したほうが良さそうだな。とりあえず、お礼でもいっておくか…。 

「ふんっ…ダンマリね…。一回も話した姿を見たこともない」

「っ……!」

 …あぶねえー……。もう少しで話すとこだった。沈黙キャラなのね、こいつ…。

「なんで貴方みたいなのが…気に入られて…。いえ、なんでもないわ。さっさと魔王城に帰りましょう…」

「……」

 …魔王城か……。……魔王城だと!?

 アーデルが指をパチッとならして背を向けると、赤い魔法陣が地面に現れて光が僕たちを包んだ。僕が心の中で頭を抱えていると、彼女はもう一度指を鳴らした。終わった……と思ったが、どうも様子がおかしい。さっきまでの赤い光は徐々に薄暗く消えていっているものの、魔法が発動している感じがない。

「……やっぱりやめた…。…魔王様の命令通りにしましょう。…死んだ貴方を持ち帰ればいいのよね」

 振り向いた彼女は、邪悪に満ちた笑顔でそういった後、遥か上空に飛んだ。見えないはずの強烈な冷たいはずの殺意は、灼熱のような熱さを感じる。

「……」

  …なるほどこういう展開か……。…面白くなってきた。

 僕は剣を抜き戦闘態勢に入ると同時にスペルデータを開いた。数々の魔法がズラリと並んでいる。彼女はあたり一面に魔方陣を描きながら、旋回していた。

「さぁ、どう料理してあげようかしら…」

「……」

 武器も出さず距離をとったということは相手は明らかな遠距離魔法タイプ…。こういう相手には得意な魔法を封じてやればいいが…。

「…まずはこれね!」

「…っ!」

 まさか…今度は俺がやられる番になるなんてな…!

 僕は雨のように降り注ぐ雷をかわしながら、スペルデータを確認すると黒騎士が持っていたと思われるスペルが予想通り表示されていた。

「…はははっ! 雷が弱点だったのは本当だった見たいね!」

「…ぐっ!」

 危なっ…! ちょっとかすった…。でも、ステータスを上限まで上げたのは正解だった。戦略を大幅に広げる事が出来る。特に使えそうなのはこの三つ!


〈マジックイーター〉相手の魔力を吸収し、自分のMPに変換する。

〈デスマッチ〉どちらかが勝つまで異空間から逃げられない。

〈マジックコンバート〉魔力をパワーに変換し攻撃力に上乗せすることが出来る。


 ネーミングセンスは昔のゲームみたいだけど、なかなかシンプルで強い魔法だな。これなら…。…というかこれは楽勝じゃないか?

「さて…遊びはそろそろ終わりにしようかしら?」

「…同感だ! …デスマッチ…発動!」

「…なにっ! これは!?」

 辺りは燃えるような真っ赤な炎に包まれていき、空をも飲み込んだ。だが、不思議と熱くはない。気付けば傷だらけの大理石のようなフィールドに僕は立っていた。不思議と昼のように大理石の周りは明るい。

「へえー…。…話せたのね?」

「…悪いがもう出られない」

「なるほど…。これが貴方のフィールド魔法ってわけ…。くくくっ…」

「…何がおかしい?」

「貴方…私に魔法で勝てると思ってるの? こんなもの、私のフィールド魔法で…!」

「…っ!」

 …まさか、上書きするつもりか!?

「……そんな…ばかなっ…。そんなはず…!?」

 巨大な赤い魔法陣が彼女の後ろに現れたが、ヒビ割れたガラスのように崩れ落ちた。彼女は少し取り乱した様子で黒い翼を広げて、空中に浮かんで逃げた。明らかに動揺している。嬉しい誤算だがデスマッチのもう一つの効果…別のフィールド魔法の発動禁止…。つまり、どちらかが勝つまでデスマッチは解除出来ないようだ。

「…さてと……」

 今までの旅で一つ気になっていた点がある。ゲームとかだと回復すれば特に影響はなにもないが、この世界でMPが限界を越えてつきたらどうなるのか…。

「なぜだ! なぜ発動できない!」

 いい機会だ…。あいつで試してみよう。

「…ゲームスタートだ」

 

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