第百四十九話
「…ん?」
どうやら戻ってきたみたいだけど皆の様子が変だな…。まさか…まだ戻ってないのか? …特に問題なさそうだけど?
起き上がって自分の体の状態を見ていると、ウィンディーネはオバケでも見るような顔をしながら話しかけてきた。
「あっ、あなた…。今、死にかけてたのにどうやって…。…まさか、契約したの!?」
「…契約? 契約っていうか食べたんだよ。悪魔の精神を…。…あれ? 精神は精霊だから、一体…なに食べたんだ?」
「…寝ぼけてるの? でも、確かに契約してる感じもないし…。不思議な人間ね…」
…契約? なんの話だ…?
困惑していると、誰かが大きな声をあげて後ろから抱きついてきた。振り返ると、シャルは鼻水を垂らしながら僕の服をベチョベチョに汚していた。
「アッ、アルー! 心配したんだよー!」
「シャッ、シャル、抱きつくなって…。っていうか、きっ、汚いぞ…」
「だっ、だってー…」
「心配かけて悪かったな…。そういえば、ドワーフの国はどうなったんだ!?」
「最悪ね…。アル、これ…見てみて…」
「アリス…なんだこれ…? …なんで、こんなに黒いんだ? まっ、まさか…。…これ全部…」
「みたいね…」
モニターを見ると、大地が黒くなり段々と広がっていた。なにかの悪い冗談かと思いたかったが、操縦席にいるアリスがモニターを操作して拡大すると、見慣れたくもない見慣れた黒い尻尾がそこにはあった。
「ウィンディーネ……どっ、どうすればいい……?」
「まあ、封印が効いてるみたいだし、そこまで襲う力もないと思うわ…。捕まっても恐らく殺しはしないでしょ…。あの時のようにね…」
「…あの時?」
「ええ…。ドワーフ達は貴重なエネルギー源…。生かさず殺さずね…。でも、不思議ね…。あなたは殺されかけていた…。…なぜかしら?」
「…さあ?」
正直、わからない…。
「とぼけるなら、私にも考えがあるわよ。正直にいいなさい!」
「だから、わかんないんだって…」
「あくまでしらを切るなら…」
…ん? …なんだ…これ?
ウィンディーネは片手をあげて僕の方へ向けると、コップの中の水が宙に浮かんだ。フヨフヨと飛んできたその水を僕が触ろうとすると、ギュルギュルとカッターのように高速で回転し始めた。
「…おっ、おい!?」
「…さぁ…どうする?」
「ちょっとまてって…! うーん…。確か…ユニオン…とかいってたけど…。ほんとに知らないんだ…」
「…ユニオン? 誰がそんな事いったの?」
「あの時、気絶する前だよ…。…聞こえなかったのか?」
「…聞こえなかったわ……」
「うっ、嘘じゃないからな…」
まっ、まだ、回転させてるな…。
更に目を細めて、ジッーと僕の方を見てきた。完全に僕の事を怪しんでいたようだったが、ウィンディーネが手を横にやると、水でできた刃はすーっとコップの中に戻った。
「時間もないし…。まあ、とりあえずは信じましょう。皆に聞く限りでは契約者じゃないみたいだしね…」
「助かるよ…。ところで、さっきから気になっているんだけど…契約者ってなんなんだ?」
「…今、捕まっているドワーフには二つの選択肢があるわ。一つは餌として生き続けること…。もう一つは操ってるやつと契約して、力と自由を与えられる代わりに忠実な下僕になるかよ。それが契約者…。…ちからがほしいかー?とかいわれなかった?」
悪そうな顔をしながら、ウィンディーネは声色を変えていった。力が欲しいかなんてセリフゲームの中でしか聞いたことがない。
「いわれてねぇよ…」
「まあそうよね。やつは倒してるんだし…」
「…やつ?」
「かつて悪さしてたドワーフよ…。でも、おかしいのよ…。…封印を解こうとしてるやつがいる。…あなたじゃないわよね?」
「ちっ、違うわ…。ところで、時間がないってどういう事なんだ?」
「外を見て…」
ウィンディーネは窓を指差した。窓の外を見ると尻尾がまるで火山が噴火したようにでていた。
「ああ…。なんかすごいでてるな…」
「…でしょ? このままいくと数時間後に大陸が沈んじゃうのよ」
「へー…。…はあ!?」
「おっ、おい…。ちょっ、ちょっと待ってくれ…。今のどういうことなんだ?」
「…エリック?」
エリックもつれてきたのか…。まあ…あそこに置いていたら危ないしな…。
「どういう事って簡単よ…。あれだけ尻尾をだし続ければいずれ下に大きな空間があくわ。それで大地には尻尾だらけ…。沈むわよ…」
「そんな…。あっ、あんた達がやったのか!?」
パニックになったエリックは腰につけていた巨大なハンマーを取りだし構えていたが、ウィンディーネにコップの中の水を思いっきり顔にぶっかけられていた。




