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クソスキルのせいでハードモードでニューゲームしたref 〜人生はクソゲーの連続だ!〜  作者: 九楽
第六章 孤絶のドワーフ王国編

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第百四十八話

「いないって…。なっ、なにかの間違いじゃないのか?」 

「まっ、まって…。いっ、いた…。でも、おかしい…。どういうこと…。活動が停止している? なにこれ…。封印が!? まずい! なにかが…」

 ウィンディーネが何かを僕達に伝えようとした瞬間、どこからか爆発音が聞こえ、地を震わすような声が聞こえてきた。

「…ギャァアアアアアアォオオオオ!」

「なっ、なんだ!? この叫び声!? まさか…」

「やっ、屋根の上になにかが落ちてるよ!?」

 窓の外を見ると、あの黒い尻尾がまるで雨のようにぼとぼとと落ちていた。一体どこからこんなものが降り注いでいるのかは分からないが、かなりまずい状況だ。

「こっ、これは一体…」

 どうすればいい…。逃げる場所なんてないぞ…。

「アッ、アル!?」

「どうした!?」

「そっ、それ…」

 驚いたシャルの方を見ると、何故か僕の右腕を見ていた。視線の先に目をやると右腕があの恐ろしい魔物の姿になりつつあった。

「なんだよ…これ…。なっ、なんでだ!? 解除してないのに…。広がっていく!」

「まさか、あっ、あなたは…」

 ウィンディーネは僕の右腕を見つめ、驚きつつも何故か納得しているような顔をしていた。ただ、体中に激痛が走り、それどころではない。どんどん視界がぼやけていき、呼吸もまともにできない。

「…ぐぅぁああああ!」

 まずい…。痛みのせいでリカバリーがうまく発動できない。気を失いそうだ…。

「…ケタ……」

 …誰だ? 今の声…。

「はあ…はぁ…」

「ヤット…ミツケタ…。ワタシタチノ…ユニオン… !」

「…っ!」

 その奇妙な寒気のする言葉を聞いたあと、僕は気を失った。






「…こっ、ここは?」

 なにも見えない…。よくわからないけど、いつものあの変な夢なのか?

「やぁ…。かなりまずい状況になったね…。まさか、君の中にあの尻尾が紛れ込んでいるとはね。気づかなかったよ…」

 やはりいつもの空間のようだったが、声の主はまた少しだけ大人びていた。

「…今、どういう状況なんだ?」

「目の前にテレビがあるだろ? 見てみなよ」

「…テレビ?」

 僕が探していると、プツンと音がなり目の前に映像が流れ始めた。テレビの中の僕は元の姿に戻っており、船の中のソファーに寝かされて、うめき声を上げていた。どうやらウィンディーネが全員を船に転送させたようだ。テレビから流れてくる皆の話声を聞いていると、かなり危険な状態のようだ。

「これが今の君の状態…。なにもしなければ、あと一時間で君は死ぬんじゃないかな?」

「……すごい他人事だな…」

「客観的にものをみてるっていってほしいね…。…君だってこっち側から観てるとそう見えるだろ?」

「……」

「まぁ…いいか…。それでね…。少し説明すると…今の君はウイルスに感染してるんだ」

「…ウイルス?」

 テレビにはレトロゲームに出てきそうなウイルスが、僕の体を蝕んでいる簡易的な映像が流れた。どこかでみたようなピコピコと光るかわいいウイルスであればよかったのだろうが、事態はそんなに可愛らしいものじゃなさそうだ。

「そう…。君の世界にもあっただろ? えっと…コンピュータウイルス…。イメージはあれに近いよ…」

「全然、わからないんだけど…」

「つまりね…。君が悪魔になりかけているから、別の悪魔に侵入されたんだ…」

「……」

 そうか…。裏スキルのせいで強くなったけど、そんなデメリットもあったのか…。今回の敵…今までとは異質だな…。

「ただ…これはチャンスでもあるんだ…」

「…こっちからもいけるってことか?」

「鋭いね…。…ってことで捕まえといたよ」

「はっ、はやっ…。なんか…あっけないな…」

「…バトル展開でも期待してたのかい? ………さぁ、食べるんだ」

 テレビ画面の前にボトッと尻尾が置かれた。目の前の尻尾は弱っているみたいだが、ウニョウニョと動いている。

「別にそうじゃないけど……。…たっ、食べる!? ……なんでだよ!」

「こんなところでやめたくないだろ?」

「いや、まあそうだけど…」

「君の言いたいことはわかるよ。マヨネーズ、ケチャップ、醤油、好きなもの使うといい…。ポン酢も用意しよう…」

 ガシャっと音がなると、目の前に次々と見慣れた調味料が現れた。僕はおもむろに調味料を二つ手に取った。

「じゃあ、醤油マヨにって…違う! …こんなもの食べても大丈夫なのか?」

「ワクチンってやつだよ…。食べなきゃ…君、死ぬよ?」

「…うっ、うーん……。でも…。…流石に…これは…」

「死を前にしたら…こんなものでも食べなきゃいけない時だってあるのさ……」

「…わっ、わかったよ……! わかってるけど……。うっ…」

 仕方ない…食べるか…。口の中で、もぞもぞと動いて気持ちが悪い…。

「……ん?」

 いや…でも…なかなかおいしい?

 初めはその姿に抵抗があったが、一口食べるごとに抵抗はなくなっていった。僕は微妙な気分になりながらも、調味料を変えていき食べ比べをしていた。




「………ごちそうさまでした…」

「食べ終わったみたいだね…。ほら、テレビを見てみなよ…」

「やはり安定の醤油マヨだったな…。ポン酢もなかなかよかったけど…。…テレビ?」

 テレビを見ると右腕の侵食が少しずつ引いていった。どうやら治っているみたいだ。

「全く優秀なステータスだね…。ふっははは…」

「…笑うとこあったか?」

「ああ、ごめんごめん…。君の優秀なステータスの事を思いだしてね…」

「…なんの話だ?」

 そいつはなんの前触れもなく唐突に笑いだした。僕は振り返って探してみたが、そいつの姿はどこにも見えず、声だけがどこからか聞こえてきた。

「この国に入ったとき急にスキルが使えなくたっただろ? それはね…。感染に気付いたステータスが、上空三千メートルで君のスキルを全て遮断したんだ」

「……」

 なるほど…。それで使えなかったのか…。

「君の必死な顔…。なかなかよかったよ…。パラシュートつけてるのに…。この顔…。くっははははっ…」

 テレビ画面には僕が大きな口を開けて、バカみたいに焦っていた。それを見て少しだけ情けなくなった。

「ひっ、必死だったんだぞ…」

「なかなかよかったよ…。ここまでの君のプレイ…。君の記憶の中に眠るどんなゲームよりも面白い…。最高の主人公だよ…」

「そりゃどうも…」

「さぁ…準備はいいかい?」

「ああ、戻してくれ…」

 僕が立ち上がると辺りが光り輝き、僕はまたあの世界に戻っていた。





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