第百四十二話
僕は後をついていき、街外れというか街から遠く離れた不便そうな場所にあるエリックの自宅についた。お世辞にも綺麗とは言えないそのボロボロの家には、荒れ果てた畑があるだけで他にはなにもなかった。
「ついたぞ…。…あれ、どこにいるんだ?」
「…どうやら…追っ手はきてないみたいだな…」
「いっ、いたのか!? …あんた、どこにいる!?」
「まあ、家の中で話すからさ。早く鍵開けてくれ」
「あっ、ああ…」
鍵を開けて中に入ると、驚いたことに本だらけの部屋だった。別にギャンブル雑誌とかそういうのではなく、色々な難しそうな分厚い本が無造作に置かれて本の柱ができていた。
「本…好きなんだね」
「好きっていうか…。まあ…座ってよ…。おっ、お茶でいいかい?」
「なんでもいいよ」
僕は透明化をといて古びた硬い木の椅子に体重をかけると、ギィギィと壊れそうな音がなったので僕は慎重に座った。
「すまん…。お茶が腐って…。うぉおお! ビッ、ビックリした…」
「…大丈夫か?」
「実は幻聴とか幻覚の類とかだったってオチではないよな…」
「そうだとしたら、牢屋からでれてないだろ?」
「いや、まぁそうか…。そうだな…。…で、なんなんだ? 頼みたいことがあるって?」
「…実は魔法やスキルが使えるようにしてほしいんだ」
「…はぁ?」
エリックは、すごく不思議そうな顔をしていた。なにか変なこといったみたいだが、心当たりがない…。
「…魔法はわかるけどスキルってどういう意味だ?」
「…使えないんだろ? この国?」
「スキルは使えるさ…。俺も剣を打つとき使ってるからな…」
「そうなのか?」
…どういうことだ? じゃあ、なんでステータスが使えなかったんだ…。…ってことは、ステータスは魔法? でも、それならスキルポイントは触れないはずだ…。うーん…。
「…なぁ、ルア?」
「…ルア?」
「変なやつだな…。お前の名前だろ?」
そういえばそうだった。まぁ無事にカジノからでれたし名前くらい教えておくか…。
「ごめん…。本当はアルっていうんだ…」
エリックは反対側の席に座った。エリックは目を細めて僕の方を見ていた。怖がられているというか、怪しまれているようだった。
「アルねぇ…。…で、どんな魔法を使いたいんだ?」
「戦闘用の魔法が使えるようにしてほしいんだよ」
「せっ、戦闘用!?」
「どうしたんだ? 簡単に作れるんだろ?」
「さっ、流石にそれは無理だ…」
「どうして?」
「どうしてって…。…わかるだろ!? このドワーフの国でそれを作れってことは兵器を作れってことだぞ…。あんたには感謝してるけど、そんなもの勝手に作ったら…」
まあ…犯罪者になれっていってるようなもんだよな…。
「わっ、わかった…。作らなくていいよ…。じゃあ…」
「…なんだ?」
僕はこの国にあるセンサーを破壊したいんだけど…って言葉を引っ込めた。
「いっ、いやなんでもない…。でも、なんで、この国は魔法が使えないんだ?」
「それは…ちょっと待ってな…」
エリックは本の海から一冊の本を取りだした。その本には読みづらかったが、ドワーフノタイザイと書かれてあった。
「…それは?」
「昔から伝わるおとぎ話だ…。でもここに書いてある内容…。笑われるかもしれないけれど、俺は真実だと思ってるんだ…。色々理由はあるんだが…。まぁ聞いてくれ…」
「ああ…」
「昔々、あるドワーフは強大な力を手に入れようとして悪魔を復活させました。しかし、儀式は失敗して悪魔を中途半端に復活させてしまいました」
彼が話しながら、次のページを開くと、ノスクの持っていた本と全く同じデザインでそれは描かれていた。僕はつい驚いて大きな声をだしてしまった。
「…やっ、闇の王!?」
「なんだ? 知ってるのか?」
「いっ、いや…ごめん…。早く続きを…」
「じゃあ…。中途半端というのはそのままの意味で、生も死もない中途半端な存在として復活させてしまいました。ドワーフ王は途方に暮れて、とある国の勇者に助けを呼びました」
「うん…」
「勇者はドワーフ王とコビット王…。そして、地、雷、水、三体の精霊の力を借り青き剣を作りました」
「…それで?」
最後のページを開けると、青い剣を持った勇者に踏んづけられて悪魔が倒されていた。街の人達はその姿を見て歓声を上げ、青い剣がキラキラと光り輝き、明るく照らしていた。
「皆の力を合わせて、なんとか悪魔を倒しました。しかし、悪魔は復活を繰り返しました。そこで、この国を青い剣の力で魔力のない国に変えて悪魔の力を無力化したのです。こうして、ドワーフの王国は永遠に魔法の使えない国になりました…。ちゃんちゃん…」
「…最後の絵おかしくないか? 悪魔を倒したのは猫族だろ?」
「…なんでそう思うんだ?」
「いや、なんでっていうか…」
しまった…。いらないことをいってしまった…。
「…初期のおとぎ話だな? …そうだろ?」
「ああ! そっ、そうだよ…。はははっ…」




