第百三十九話
「ここか……」
奥へ進むと想像以上にきらびやかな世界が広がっていて、カラフルな光が僕を包みこんだ。ここはここで異世界と言っても過言ではないだろう。
「………すっ、すごい……。ここがカジノか…」
こんなに光があたっているのに誰も気づいてないみたいだな…。…あれ? このドワーフ…老けてる?
僕は隣にいるドワーフの横顔をじっと見ると、小さくて気がつかなかったがやはり老けている。周りを見ても幼く見えるドワーフはかなりいるがどうやらコビットと違ってドワーフは表面上も年を取るようだった。
「……ふーん…」
そういえば、兵士たちも少し老けていたような…。まぁいいかそんな事…。さて、どうやって探すかな…。まぁカジノに捕まってるっていわれるくらいだから、相当熱くなってるドワーフなんだろうけど…。
「こっちか…?」
そのまま、さらに進むと奥にはRPGゲームでもでてくるスロットやカードゲーム、ルーレットといったものがあり、想像通り熱い世界が広がっていた。
「……」
楽しそうだ…。……いっ、いかん! 雰囲気に飲み込まれる…。こんなとこで、遊んでる場合じゃない。まずは透明化をとくか…。
人のいない場所を探そうとすると、遠くの方で酔っぱらいらしきドワーフが黒服にどこかへ連れていかれていた。ドワーフの顔色が悪いところを見ると、恐らくトイレに連れて行かれてるんだろう。ちょうどよかった。そこで透明化を解除しよう。
「……」
それにしてもこんな薄暗い地下にトイレがあるのか? …なっ!?
前をみるとドワーフは驚いたことに勢いよく牢屋に入れられた。僕は隠れて会話を聞いていたが、淡々と話した後に黒服達はカギを締めて出ていった。
「準備ができたら呼びにくる…。それまで大人しく待ってるんだな。……百万…キッチリ返してもらうぞ…」
「たっ、助けてくれー! 頼む! 助けてくれー!」
「……」
あっ、哀れだ…。
僕がそんな事を思っていると後ろの方から怒鳴り声がした。怒鳴ったのは別の牢屋の中にいる人物だった。
「うるせぇー! ピーピー泣きやがって…。泣きたいのはこっちだ…。ぐすっ…」
「…もっ、もう、終わりだ」
「どうせ、そのぐらいの額ならすぐ開放だ…」
「ほっ、本当ですか!?」
「ああ…。何度も通ってるから間違いない。これに懲りたらもう二度とくるなよ…」
僕はその説教ほど薄っぺらなものはないように感じたが、牢屋を見ると重なれば重くもなることを知った。
「……はっ、はい…。とっ、ところで、貴方はいくら負けたんですか?」
「…一億だ!」
「ひぇっ…。うっ、上には上がいるもんですね」
こいつ、ろっ、ろくでもないやつだな…。自分のこと置いといて…。…ん? …何度も?
「まぁ大体は剣とか盾を作って返したんだがな…。せっかく作業場からでたのにまた上限いっちまった」
…まっ、まさか!? こっ、こいつ、なのか!?
「すっ、すごいですね…。でも、真面目に働けばお金に困ることないじゃないですか? …なんでまたカジノに?」
「ああ…それは…」
檻の中の人物が答えようとすると、入口の扉がドンッと音をたて開いた。どうやら黒服が戻ってきたようだった。僕は急いで通路の奥に隠れて様子を見ていると、黒服はさっき放り込んだドワーフの前で立ち止まった。
「手続きがあるからさっさとでてきな…。釈放だ…」
「本当だ…。よっ、よかった…」
年老いたドワーフは牢屋からだされた後に黒服に連れていかれた。牢屋の中にいるもう一人のドワーフは下を向き、大きなため息をついた。
「はぁー…」
「……」
さて、どうするかな…。そもそも本当にこいつなのか? …というか仮に本人だとしても時間もないし、他の方法を探したほうがいいんじゃないか? うーん…。
「……悪魔と契約でもするかな…」
「…ったく、気になるワードいいやがって!」
「なっ!? だっ、誰かいるのか!」
…しまった。つい声がでてしまった。
「おっ、俺以外に誰もいないよな…。まっ、まさか…。……いや、きっと空耳だ。ねっ、寝よう…」
牢屋の中にいるドワーフは震えながら毛布の中に入り込んだ。よほど怖かったのか毛布は小刻みに震え続けていた。僕はそんな様子を見て、悪魔に話しかけられるという展開をあるゲームと重ねていた。
なるほど…。悪魔か…。ちょうどいい…。その手でいこう…。




