第百三十六話
僕が中に入ると一つ目の扉が閉まった。そして、二つ目の扉が開き部屋の中に入ると、壁にはリュックサックとゴーグル付きのマスクと厚手の服がかけてあった。
「…なんだ? このリュックサック?」
中を開けてみるとそれはパラシュートのようだった。正直つける必要もないが、気づいたから僕はすでに装備してしまっていた。
「…空飛べるから必要ないけど、せっ、せっかくだしな〜」
けっして、昔やったゲームの装備品に似てるからとかそういった理由ではない…。念の為だ…。
「アルー。少し待っててねー。なんかハッチを開ける前に調整しないといけないみたいだから…」
「了解…」
自身の姿をみると、なかなか様になっている。まるでどっかの兵士にでもなったようだった。
「アルー。準備オッケーだよー」
「こっちもオッケーだ。開けてくれ」
ゆっくりとハッチは開いた。部屋の中は風が吹き荒れ、オレンジ色に輝く日差しが差し込んでくる中、一歩一歩開いたハッチに歩みを進めた。
「…綺麗な日の出だねー」
「よし…いくか…!」
僕は倒れるように船から飛び降りて、風を感じながら地面へ落ちていった。
昔やったゲームを思い出しながら、怖い気持ちを抑えて少しずつ目を開いていくと、街や村が点にしか見えない。…っていうか……。
「……こわっ!」
……ゲームみたいに簡単じゃないな…。なかなかバランスとるの難しいぞ…。
「こっ、こんな感じか…」
両手と両足を広げてバランスをとると、抵抗を受けて服がバダバタと揺れ、少しずつ速度が落ちていった。でも、成り行きとはいえ、僕がスカイダイビングをするなんて思わなかったな。でも…。
「…いい景色だ……」
僕は朝焼けの空を飛び回りながら、あたりの景色を見渡した。さっきまで怖かったのに不思議と少し楽しいことに自身も驚いた。こんな経験もできたし、この世界にこれて少しはよかったのかもしれない。
「……」
地面も近くなってきたし、そろそろ魔法を発動してスピード落とすか…。
「……ん?」
速度が落ちない……。おかしいな……。
「……あれ?」
どういうことだ…。魔法が発動しない……。
「……」
まっ、まさか…。
「……ウソだろ…!?」
僕は顔面蒼白になり、冷や汗を垂らしながら、指を前にだして魔法を唱えた。
「…ファッ、ファイアーボール!!!」
……なにもでない。魔法が使えない…。…そっ、そんな、バカな!? …そっ、そうだ! スキルがあったんだ! スキルで空を飛べば…。
「…ステータス!!」
…ひっ、開かない…。ステータスが…開かない…。
「おっ、おい、ステータス! ひらけって! このままじゃ地面にぶつかる!!!」
…だっ、だめだ! でも、どうしろっていうんだ!? くそっ! せめて、ポーションを体にぶっかけて…。
「……」
……ただの袋じゃないか…。
神様からもらったバッグはただの袋になっていた。他の装備もただの剣や服になってる可能性がある。つまり……。
「……もっ、もうだめだ…。じっ、地面に…ぶっ、ぶつかるー!!! なっ、なんの音だ!? ……ぐへっ…」
上に引っ張るような衝撃があったあと、スピードが徐々に落ちていった。どうやらパラシュートが開いたようだった。
「はぁ…はぁ…。助かった…」
ネタでつけたから完全に忘れてたな。本当につけといてよかった。でも、異世界にきてまで、こういう変な冷や汗のでる体験はいらないな。
僕は風に揺られながら、ユラユラと下に降りていた。そんなとき、もう一汗かくようなことが起きた。もちろん冷や汗の方だ。
「…あれ? ……どうやって操作するんだ?」
……わからない…。紐も操作部分もついてない…。まずい……。このままじゃ木にぶつかる!!
「…………うわぁあああ! …ぐへっ……!」
僕は必死に操作部を探したがそれらしいものは見えず、ただただ風に流されていった。 僕はそのまま大きな木に思いっきりぶつかった。木の枝が絡まって少し痛いが、木の葉がクッションになり、そこまでダメージはなかった。




