第百三十五話
僕達の船は薄暗い上空を飛び、あっという間にドワーフの国についた。シオンさんの運転も始めはどこかぎこちなかったが、着くころには揺れもなく快適な運転になっていた。
「あとは降りるだけですね…。…あっ! まてよ…。どこからでよう…」
上のハッチからでると気圧とかで船がとんでもない事になりそうな気がするな…。
「…どうしたんだ?」
「僕もよくわからないんですけど…。上からじゃなくて、隔離された部屋からでないとまずいんです。できれば、自動的に扉が開閉できるような…」
ない…よな…。そんな都合のいい部屋…。
「そういえば、昨日調べたときそんな部屋があったな…」
「えっ!? あるんですか?」
「ああ…。船の地下に隔離されたスペースがあるんだ。…そこがいいんじゃないか?」
本当に誰が作ったんだろう…。この船…。
「わかりました…。…じゃあいってきます!」
「無事に帰ってくるんだよ…」
「はい。シオンさんも…気をつけて…」
僕はシオンさんに別れを告げ、船の地下に歩いていくと頑丈そうな銀色の扉があった。これなら気圧の変化にも耐えられそうだ。
「…これか……」
「アルー! 待ってー!」
「待ってよー! はぁ…はぁ…。色々ありすぎて渡すの忘れてたよ。…はい!」
振り向くとシャルとアリスが息を切らせながら走ってきた。シャルは僕の手のひらになにかをおいた。開けてみると手のひらには小さな瓶がおいてあり、中には青と赤い丸い小さな球体が三つずつ入っていた。
「…なんだ、これ?」
「それはねー。飲むとドワーフになれる薬…。一定時間たったら戻るけど、すぐに戻りたかったら青い薬の方飲んでね。本当はもう少し作りたかったんだけど材料も時間もなくて…」
「いや、助かるよ。これがあれば目立たずにすむし…。ありがと…」
「えへへ…。…おっと! 私は先に戻ってるね!」
シャルは髪をクシャクシャにしながら笑っていた。だが、何かを思い出したようで走ってどこかに行ってしまった。出会った時のようになんとなく悪いことを考えてそうな顔だったが、気のせいだろうか?
あいつ…駆け足でどこにいったんだ? まあいいか…。
「…それでアリスはなんの用事なんだ?」
「…私、あなたに謝らないといけない…。私のせいで魔族に狙われてるなんて思いもしなかった…。それなのに…わたし……」
「だから…気にするなって…。さっきもいったけど、いつかは倒す事になってたと思うし…」
笑いながら誤魔化そうとすると、涙目のアリスはグイッと近づいて、僕を追い詰めてきた。
「アルの性格だったら…。そういう相手は最後に倒すはず…。…そうでしょ?」
「いや…。まあ…。そうだな…」
「やっ、やっぱり…。私のせいで…」
迫力に負けて、つい本音を言ってしまうと、胸の中でアリスは泣き崩れた。どうしていいかわからず、対応に困っていると、アリスの泣き声とは別に妙な声がどこからか聞こえた。
「…ん? なにか変な音…聞こえないか?」
「ぐすっ…。…変な音?」
それは小さな声だったが、誰かの話し声のようだった。僕は耳を澄ますとスピーカーのようなものから、シャルとシオンさんの声が聞こえてきた。
「…アリスちゃん! もっともっとひっついて押し倒すんだよ!」
「シャ、シャルさま…。こういうのはあまりよくないと思うんですが…」
「…って、いってるシオン様も本気で止めないところをみるとみたいんでしょ?」
「まっ、まあ…少しは…」
「アリスちゃん落ち込んでるから元気だして貰わないといけないし…。アルのコップにさっき…。…あれ? なんかこっち見てない?」
「もっ、もしかして、こちらに気付いているのでは?」
「まっ、まさかー…」
「…俺のコップになに入れたんだ? シャル?」
僕がスピーカーに話しかけると、姿は見えなかったが、スピーカー越しのシャルはしどろもどろになり、かなり焦っていたようだった。
「えっ! 聞こえ…。えーとね…。えーと…。えへへ…。そっ、そのね…。そのー変なものじゃないよ。元気のでる薬だよ」
「わっ、私は反対したんだからにゃ!」
「シオンさま、ずるいですー」
こいつら…。
「ははっ…。もうっ、バカみたいね…」
「だな…。そういえば、一個いい忘れてた…」
「…いい忘れてた?」
「…俺のスキルはさ、確かにトラブルを呼ぶんだけど、そのおかげでみんなと知り合えた。本当にそういう意味では感謝してるんだ。アリスやシオンさん…。シャル、みんなと会えて本当によかったよ…」
僕が心の底からそう思っていると、スピーカー越しからシャルのうるさい声が大音量で聞こえてきた。
「…うわぁあん! アルー! わたしもだよぉおー!」
「わっ、わたしもだ…」
「ただ…次、盗み聞きしたら撤回するからな」
「わっ、わかってるよー…。ねーシオンさま…」
「わっ、私は…。その…気をつけるよ…」
まったく…。でも、なんで教えてもない船の機能が使えるんだ? ……まさか…。
「シャル…。まさか、説明が見えるのか?」
「実はそうなんだよー。じゃあ、早速そこの扉を開けるよ」
シャル…。そういうことは早くいえよ…。
「じゃあ、アリス…。いってくるよ…」
「うん…。気をつけてね…」




