第百三十四話
「…アルって、ほんとに何者なの?」
「えっ? …今の話、信じるのか?」
「信じるわよ…。やっぱり…私のせいなんだ…。私のせいで…アルが…」
「いやっ、まっ、まあ、俺のことはいいからさ…。そういうことだから…。気にするなよ…」
「なにが…そういうことなのよ…。完全に私のせいじゃない…」
アリスの顔は歪んでいき、頬からは涙が流れていた。僕はその顔に動揺していらない事をポンポンと言ってしまった。僕は自分が思っている以上に女の子の泣き顔に弱かった。前にもこんなことがあったような気がするが…今はそれどころじゃない。
「いっ、いや…。そうじゃなくて…。あ〜もうっ! …どこかのタイミングで四天王は倒さないといけなかったんだ。俺はそういうスキル持ちなんだよ」
「そんな事いわれても…。…ちょっと待って? …今のそういうスキル持ちって、どういう意味?」
「どういう意味って…。そのままの意味で悪意をもった敵を呼ぶんだ……。…忘れてた……。そうだな…。ごめん…。これはみんなに伝えとくべきだった…」
アリスも混乱しているようだったが、シャルはそれ以上に僕の発言に混乱しているようだった。栗色の髪がいつも以上に左右へブンブンと揺れている。まあ、当然の反応だろう。
「えっ? まっ、待ってよ! 今のどういう意味!?」
「えーと…。シャルをのせてキノコの本体をみつけただろ? あれは本来の使い方じゃないんだ…」
「えっ? でも、みつけたよね!?」
「うん…。悪意をもった敵を感知することもできるんだけど、本来のスキルの効果は悪意をもった敵を引き寄せるんだ…。まあ、ゆっくりなんだけどね…」
「…えっ? …えっ? どういう事? 引き寄せる?」
「簡単にいうと、範囲限定のトラブルメーカーっていうか…。…マリシアウルネクストってスキルあるだろ?」
シャルは頭を抱えながら僕の方を見つめてきた。シャルの瞳の奥が輝いている。どうやらスキルを確認しているようだ。
「…確かにあるね。他にもいっぱいあるけど…。これも…もしかして…」
「みっ、みんなに迷惑かけるスキルはそれだけだよ! それに、一見デメリットしかなさそうに見えるスキルなんだけど、トラブルの元凶に速く近づけることだってできるんだ…。あと、このスキルが反応しないってことは、近くに悪いやつがいないって証明にもなるし…」
「うーん…。危ないスキルだけど…。確かにそうだね…」
悩んだ顔をしていたが、シャルの額のシワは段々となくなっていった。少しは納得してくれたようだった。
「まあ、そういうわけで、この話はここで終わり…。時間もないし、どうやってドワーフの国に入るか考えよう。…なにかいい案ないかな、シオンさん?」
「そうだな…。一番簡単なのはこの船を感知できなければいいんだが…。…どうなんだろうか?」
「確かに…。…ステータス、どう? そんな機能ある?」
僕はステータス画面を発動して話しかけた。青い画面には目まぐるしいほどの文字がグルグルと流れていった。
「検索中………。検索完了…。…存在しません」
「…だめみたい……」
「それなら、作戦は君が上空から侵入し、まずはこの船を感知している設備を破壊するのがいいだろう。そして、次の日の早朝に私たちがもう一度侵入する」
「なるほど…」
「船に攻撃を受ければ作戦変更…。アルには一人で本体を探して倒してもらわなければならない。その時は私達が今からくる私のそっくりさんを妨害しておこう。これでどうかな?」
「…よし、その作戦でいきましょう……。作戦開始だ…」
僕達は深海を移動し、ドワーフの国から離れて浮上した。僕は心配しながら窓から外をみたが、海にプカプカと浮かんでいるだけで、特にミサイルが飛んでくるようなこともないようだ。僕はベルトを外して立ち上がると、シオンさんに呼び止められた。
「ここなら大丈夫みたいだな…。じゃあ、いってくるか…」
「待つんだ…。このまま船を上空まで飛ばして降りたほうがいい。攻撃されるリスクを減らすんだ」
「確かにそうですね…」
「それで…どうやって飛ばすんだ?」
「えーと…。シオンさん…その青いレバーを引いてください。それで飛べるみたいです」
「…これか……」
操縦席に座ったシオンさんが青いレバーを引くと、重低音を上げながら、ゆっくりと浮きあがり始めた。だが、シオンさんがレバーを引きすぎたせいで、船がとんでもない角度に傾き始めた。皆は椅子に座っていたからそこまで問題なかったが、僕だけ立っていたので床に倒れて這いつくばった。
「シッ、シオンさん! ひっ、引きすぎです!! もう一回、座るんで待ってください!」
「ごっ、ごめん。こっ、これくらいか…」
船はやや傾きなんとか立っていられるくらいにはなった。僕は立ち上がり外をみると段々と白い雲に近づいていった。
「すごい…。本当に飛べるなんて…」
「私もびっくりだ……」
「よっと…。…シオンさん、ベルト締めたんでもう大丈夫です」
「よし…。雲に隠れながらこのまま上空にいくぞ…」
「はい!」




