第百三十二話
「…うーん……」
なんか 揺れてるな…。ああ、目覚まし機能か…。なかなかいい揺れだ…。
妙に心地良い揺れを感じて、僕は寝ぼけながらありもしない目覚まし時計を探した。
「…ステータス…。目覚まし…とめて…」
「…目覚まし機能は起動していません」
「じゃあ、なんでこんなに揺れてるんだよ…」
「…現在、攻撃を受けてます」
「ふーん…。…なっ、なんだって!? うわぁあああ…! …ぐへっ……!」
船が大きく揺れて傾き、勢いよくベッドから転げ落ちた。僕は鼻を思いっきり打ち、擦りながらなんとか立ち上がった。
「五分前から攻撃を受けています」
「いてて…。…なんで起こさないんだ!」
「…命令されていません。次回から反映致します」
「…ったく応用きかないな。まあいい、早く船長室にいくか…」
僕は揺れる船内の中、倒壁によりかかりながら船長室に向かった。爆音が響く船長室につくと体勢を崩したシャルが僕に倒れてきた。
「アルー、たっ、大変だよ! 攻撃されてる! 今はシオン様がなんとか操縦して…。あっ…。…ぶへっ……!」
「…大丈夫か? シャル?」
「…うっ、うん」
「一体、誰がっ!? …まさか、ゼロってやつがもう追いついてきたのか?」
「ちっ、違う。さっ、さっきから攻撃してるのは恐らくドワーフ達だ!」
「ドッ、ドワーフ!? シオンさんどういうことですか!?」
「勝手に領海に入ったからだ。…あっ、あぶない!」
船の目の前に大きな黒い砲丸が落ちてきた。なんとか避けたかと思ったが、二つにパカッと卵のように割れて中からミサイルがでてきてこちらに向かってきた。
「なっ、なんだあれ!? …ぶっ、ぶつかる!」
「このままじゃまずい。一回深く潜るぞ! みんな捕まれ!」
「えっ!? ちょっと、まっ…。…うわぁああああ!!」
「きゃあああ!」
僕はなんとかシャルを抱え込み、近くの柱を強く掴んだ。床にふせたり、逆立ちしたり、ずり落ちそうになりながらもなんとか耐えたが、大きな揺れは起き上がれないほど続き、あたりの景色が変わり光もささない深さまでくるとそれはやっと止まった。
「わっ、わたひ…。ひぬかと思ったよ…」
シャルは泣きべそをかいて、僕の胸に鼻水をつけていた。大きな鼻水の橋ができていた。
「おっ、俺もだ…」
「ふぅ…。ここまでくればとりあえずは大丈夫だな…」
シオンさんは操縦席にもたれかかり、疲れきった表情で天井を見ていた。そんな中、僕はあることに気がついた。
…ん? そういえば、アリスがいないぞ…。
「…シャル…アリスは?」
「もっ、もひかして、まだ部屋の中かも…」
「まっ、まさか、まだ部屋にいるのか!? アッ、アリスの様子をみてくる!」
この揺れだ…。もし寝てたら、きっと大怪我をしている。僕は急いで部屋のドアを片っ端から開けて探した。
「アッ、アリス、大丈夫か!? くそっ…。ここじゃないのか…。あいつ一体どこに…」
「…こっ、ここだよ。アッ、アル、たっ、助けて…」
部屋のどこからかわからないが、弱々しいアリスの声が聞こえてきた。僕はすぐに部屋に入って、アリスを探した。だが、声は聞こえるが、姿が見えない。
「アリス! どっ、どこにいるんだ!」
「ここだよ…」
「…どこだ?」
「ベットのところにきて…」
僕はベットを覗き込むと壁とベットの間に布団ごと綺麗に挟まって身動きの取れない状態になっている女の子を発見した。
「なんだ…。よかった…。無事で…」
「全然、無事じゃないわよ! … はっ、早くだして」
「ああ…。よし、引っ張るぞ…」
「いっ、いたたっ、痛いってー…。ぬっ、ぬけたわ…」
「…怪我はないか?」
「…えっち……」
「なっ! おっ、俺は心配してんだぞ!」
「わっ、わかってるわよ! それに…あと…そっ、その…昨日はごめんなさい。ボタン…触って…」
「俺も悪かったな…。その…さっ、さわって…」
「さわってないわよ!」
僕は罪悪感に浸りながら謝ると、アリスは顔を赤らめながら大きな声をだした。
「えっ…でも?」
「…私がさわってないっていってるんだからさわってないの!」
…昨日のことはなかったことにしたいのか……?
「……そっ、そうだな…。俺はなにもさわってない。本当に全くなんの感触もなかった」
僕がアリスの意向をくみ取り、そう答えるとアリスは急に真顔になって、僕の顔をスッと真下から覗き込んだ。結構、マジな顔だった。
「いやいや、感触ぐらいはあったでしょ…?」
こいつ、一体俺になにをいわせたいんだ…。無かった事にしたいんじゃないのか…。
「まっ、まあ、感触はあったかもしれないけど…。触ってはないな…」
「…まあ、そういう事にしましょう。…ところで、さっきの揺れはなんなの?」
「うーん…。…シオンさんがいうには、ドワーフが攻撃してきたらしいんだけど……」
「あっ…!」
「どうしたんだ?」
「忘れてた…。ドワーフ王国に連絡するの…。ごっ、ごめん…」
アリスが青ざめた顔になっていると、後ろの方から声がした。振り向くとシオンさんが壁を背にして立っていた。
「どちらにしても間に合わなかったさ…。むしろ、連絡しないほうがいい」
「…どういう事…ですか?」
「入国許可を取るのには、時間がかかるんだ。この前申請したときなんか半年かかった。いくら王族といっても…ニ、三日で許可をだすなんてありえない…。よくて、一ヶ月はかかるさ…」
「じゃあ、どうやって入れば…」
「…決まってるだろ? 素性を隠して密入国さ…。幸い船も足がつかないし…。ただまあ…ここまでガードが硬いとは思わなかったけどね」
「みっ、密入国!?」
「…そうだ」
「そっ、それって犯罪じゃ…」
「…そうだな……。立派な犯罪者だ…。…やめて帰るかい?」




