第百三十話
梯子に手をかけて中に入っていると、しばらくして上部のハッチが自動的に閉まった。少し感心した後、そのまま降りていくと、床に足がついた。辺りを見渡してみると、長い通路になっていて、いくつかの部屋に別れているようだ。みんなどこに行ったんだろうか…そんな事を思っていると、奥から声が聞こえてきた。声を頼りに進むと船長室のようなところにみんなが集合していた。
「…ん?」
アリスの方をみるとなにか様子がおかしい。よく見るとなにかのボタンを押そうとしている。
「…ったく勝手に押すなっていったのに……。一体…なんのボタン…。……加速装置? アッ、アリス、ダメだ! 押すな!」
僕はアリスに急いで抱きつき腕をあげた。どうやらボタンは押されていないようだった。一安心といったところだ。
「ふぅー…。危なかったー…」
「うわぁ…」
「うわぁ…」
後ろの方からシオンさんとシャルのドン引きしたような声が聞こえてきた。僕は振り返ると困惑した顔をしていた。
「…どうしたんだ? 二人とも変な顔して?」
「とりあえず…左手を離してあげたほうがいいと思う…」
「ひっ、左手だよ…」
僕が左手をみるとアリスの柔らかなものに触れていた。僕は素早く手を離したが、もう手遅れのようだ。
「…アッ、アリス!? ごっ、誤解だ!」
「…なっ、なにするのよ! こっ、このド変態!!!」
アリスがバンッと装置を叩くと、ウイ〜ンと妙な音が聞こえ始めた。終わった…。加速装置のボタンを押してしまったようだった。
「ああっ! バッ、バカ! なんでボタン押すんだ!!!」
「バッ、バカはアルでしょ!? このボタンがなんだっていうのよ!!!」
「みっ、みんな捕まれ! かっ、加速装置だ!!!」
「きゃあああ!!!」
「いやあああ!!!」
「にゃあああ!!!」
「うわぁああ!!!」
次の瞬間、エンジンが甲高い音を上げたかと思うと、船体は大きく揺れて、恐ろしいスピードで岩にぶつかりながら洞窟の中へと入っていった。ガタガタと機体が揺れるなか、しばらくすると洞窟から広い海へとぬけでた。
「……なっ、なんとか収まったな」
「うぷっ…」
「アリス、こんなところでやめろよ」
「わっ、わかってるわよ」
「…私もダメそうだ……」
「…シオンさんまで……!」
「…アッ、アル、目の前だよ!」
「…えっ? やっ、やばい! ステータス、進路を!!」
「…了解しました」
一瞬だけ揺れは収まったが、お次は目の前に現れ続ける岩場をあちらこちらに避け続けなければならなくなった。僕は航路をステータスにマッピングしてもらい、サポートしてもらったものの、一歩間違えればお陀仏かもしれないシューティングゲームをやってたような気分だった。
「……はぁ…疲れた」
こうして、衝撃的なスタートを切り、せっかくの飛空機能を一度も使わないままドワーフの国についてしまった。それもこれもアリスのやつが思いっきり加速装置を叩いたせいで、ボタンが押しっぱなしになっていたのである。まぁ…そんな僕も超高速運転に無我夢中になりすぎて、そんな簡単な事に気付くのに時間がかかってしまった。
「……ステータス…自動操縦に切り替えてくれ」
「…了解しました」
「それにしても……」
妙に…なじむな…。まるで…何回も運転してるような……。……なんて…気のせいか………。
「少し横になるか…。どこかいい部屋は…」
通路に移動して部屋を探していくと、ちょうどベッドのついた小さな部屋が何室かあったので、僕は適当に扉を開けていきその内の一部屋に入った。
「この部屋にするか…」
誰も使ってないわりにはきれいだな…。雰囲気もいいし…。僕好みの部屋だ…。予想より早くついたしもうちょっとだけ寝ておこう…。
「ステータス…ついたら起こしてくれ…」
「了解しました」
「さて…寝るか……」
僕はベッドに横になり毛布の中に入り、僕はこうしてしばらく眠りについた。振り返ってみると…この時の僕は地獄のような運転ぐらいで、まだ幸せだったのかもしれない…。




