第百二十九話
「つきました…。皆さん、足元に注意して下さい。明かりをつけます…」
ルナが明かりをつけ下の方を見ると海水に沈んだ銀色に輝く流線形の船があった。五十メートルくらいの大きさの船は、サビもなく不思議なほど綺麗だった。
「…これが恐ろしい兵器? そんな感じには見えないけど…」
「…はい。私もそう思います…」
「…そうなのか? でも、なんで水の中に…。……ああ、潜水艦か!」
「違います…。まぁ、そういう機能もあるのかもしれませんが…」
「そっか…。ちょっと沈んでるから潜水艦かなんかかと思ってたよ。じゃあ、雨水か……。……いや、あそこにものすごく大きな穴があいてるのか?」
暗くてよく見えないが船の先端の更に先には巨大な穴があいていた。僕はそれを確認する為、階段を少し降りると塩の匂いがした。
「…はい。ここはもともと海水などなかったと記録には書かれていました」
…ん? …どういう意味だ?
「あの穴からここに入れたんじゃないの? やっぱり、潜水艦なんじゃ……」
「違います。あれは数世紀前の王様が面白半分でこの船を起動して開けてしまった穴です…。ちなみにここから海まで十キロ以上あります」
「……そっ、そんな恐ろしい船なのか!?」
「はい。その後、王様は恐ろしくなり、壊そうとしたのですが…。この船にはキズ一つ入らなかったそうです。ですから、こうやって厳重に保管してあるのです…」
「なっ、なるほど…」
「取り扱いにはくれぐれも気をつけて下さい。特に…変なボタンは絶対に押さない様にしてくださいね…。本当になにが起きるかわかりません」
「わっ、わかったよ…。十分気をつける…。ちょっと下に降りてみるか…」
空を飛び、ゆっくりと船の頭の部分に降りてステータス画面を開いた。船は辺りの光りに照らされて、妙な光沢を放っている。
「よし…ステータス! これを飛空艇に改造してくれ!」
「了解、実行開始………。エラー発生……。実行中断しました」
「エッ、エラー発生!? だっ、大丈夫なのか?」
突然の赤文字に驚いたが、更に驚くような事をステータスは言い出した。僕は口をポカンと開けたまま聞いていた。
「報告します。飛行機能の取付の必要はありません。この船にはすでに備わっています」
「…はい? …備わっています? …飛行する機能がって事?」
「…はい」
……誰がこんなもの作ったんだ? こんなところに隠して……。まぁいいか、ありがたく使わせてもらおう…。
「…でも、どうやってここからでればいいんだ?」
「…飛行だけではなく潜水も可能になっています。説明書を作成しますか?」
「えっと…。はい、お願いします…」
ステータス画面からは小さな画面表示が次々にあらわれ、文字が読めないほど高速で変化していった。
「了解しました…。解析します……。解析完了…。作成しました…」
「はやっ…。…説明書はどこに?」
「注視して下さい。自動的に表示されます」
僕は言われた通りに注視すると、水中の中に青い小さな画面が現れて入口と書かれているのが見えた。
「了解…。さてと、中に入るか…。入口は…沈んでるな…。ステータス、少し浮かばせることはできないのか?」
「了解しました。遠隔起動して浮上させます」
「ステータス、本当に有能だな…」
「ありがとうございます」
しばらくすると重低音が鳴り響き、船が少しずつ浮かびあがっていった。動力部が動き始めたようだ。
「よし、みんなを連れてくるか…。…ん? …って、もうきたのか…」
僕が振り向くとみんなはすでに入口付近に集まっていた。浮き上がった船をみて、驚いているようだ。
「すっごいわね! アル! 入口どこなの?」
「すっ、すごいよー!」
「…ったく、入口はここだ。先に入ってていいけど絶対に変なボタンを推すなよ。いいな、二人とも!」
「りょうかいー!」
「りょうかいだよ!」
「…大丈夫なのか……。こいつら…」
僕は蓋のような船の入口の扉を開けると、元気よく二人は船の中に入っていった。シオンさんの方を見ると驚いてはいたようだったが、二人とは対照的に冷静そうだった。
「…君には驚かされるよ…。全く君といたら退屈しないな…。さて、私も中に入るか…」
「気をつけて下さいね」
シオンさんが中に入るとルナが近寄って来た。ルナは驚いた様子で、船を見つめていた。
「…すごいですね。船が動いているのを初めてみました。千年以上は経っていると思うんですが…。まるで…昨日まで動いていたような気さえしますね」
「千年以上も!?」
「本当にアル様は不思議な方ですね…。アル様と少しの間でしたが、旅ができて光栄に思います…。お気をつけて…」
「ルナ、色々とありがとう。あっ、あと、ノスクの事頼むよ。剣は直すからって伝えておいてくれ」
「わかりました。私の方は彼の根性を叩き直しておきます」
「ほっ、ほどほどにな…」
「はい! おまかせ下さい!」
ルナは笑っていたが、目はギラギラと輝いていた。一瞬、ノスクの泣き顔がうかんだけれど、まぁ、大丈夫だろう。僕はどこかにいるノスクに向かって、心の中でエールを送った。
「じゃあ、いってくるよ」
「本当にお気をつけて…」




