第百二十八話
僕達は城の中に入るとシオンさんとシャル…。そして、ルナがすでに待っていた。シャルはこっそりと駆け寄って来て僕の腕を引っ張り、アリスに聞こえないように小声で話しだした。
「…仲直りできた?」
「…まぁ……」
「そっか! よかったね! ダメだったら、アルとアリスに作戦そのニを実行しようかなと思ってたんだよ」
「作戦…そのニ?」
「うん、そうだよ! 少し、記憶をゴニョゴニョと…。まっ、まあ、気にしないでよ。仲直りできたんだしね。シオン様が聞きたいことがあるんだって…。こっちきてよ…」
こいつ…なにかとんでもないことを考えてるんじゃないかと思ったが、これ以上は深く詮索しないことにした。僕はシャルに引っ張られながら、アリスに蹴られたところをさすった。
「…シオンさん、聞きたいことってなんですか?」
「君があの剣を持っているんだよな? 私が戻った時にはなかったんだが…。もっ、持っているんだよな?」
「大丈夫ですよ…。預かってます…。ドワーフに直してもらうんでしよ?」
「ああ…。私もあまりのショックにそんな簡単な事に気づかなかったよ。…でも、直らなかったらどうしよう」
たしかに直らなかったらまずいな。…ん? …直らなかったら?
「あっ…。リカバリーがあるの忘れてた…」
僕はバッグからノスクの剣を取りだして床に置いた。ガラスのようにキラリと反射している。
「そんなところに入っていたのか…。なにをするんだ?」
「まぁ見ててください…。もしかしたら直せるかも…。…リカバリー!」
全く僕としたことがすっかり忘れていた。…ん? なっ、なんだこの剣……。なにかがおかしい……。…まずい! …これ以上は!? 魔力が逆流してきた!
「なにも変わってないみたいだが…。…というか、変な音がしなかったか?」
「はぁ…はぁ…。なっ、直せませんでした…」
でも、なんなんだこの剣…。なんていうか…広すぎる。
リカバリーを発動するとそれは剣の大きさなのではなく、例えるならまるで無限に広がるような空間だった。
「…そっ、そうなのか?」
「もしかして…とんでもないものを壊しちゃったのかもしれない…」
「そっ、そうか…。とんでもないものか…。それはそうだよな…。勇者の道標なんだから…。本当に私は…」
「だっ、大丈夫ですよ。たっ、多分…」
「……」
「ドワーフの国にいってから考えましょう! あっちには凄腕がいるんでしょ? すごい技術で直してくれますよ!」
「そっ、そうだな!」
内心不安になりながらもシオンさんを元気づける為、精一杯演技をしてみせた。そんなことをしていると一匹の兵士とルナに近づいてきた。
「アル様…。部屋に食料や飲水の準備ができたそうなので、バッグを貸してもらってもよろしいでしょうか?」
「ああ…。よろしく頼むよ」
僕がバッグを渡すと兵士が部屋に入り、しばらくするとルナがでてきた。ルナはバッグを不思議そうな顔をして見たあと僕に返した。
「…準備ができました。本当に不思議なバッグですね。兵士達も驚いていました」
「準備もできたし…。…よし! 海に行こう!」
「まっ、待って下さい! そっ、そっちではありません」
「…えっ? でも、船は海にあるんだろ?」
「いえ、城の地下にあるのです」
「…どういう意味なんだ?」
「…移動しながら説明します。ついてきて下さい」
ルナの後について行くと、地下へ地下へと向かいだした。螺旋階段を降る時にそっと下を覗き込んでみたが、奥深くにそれは続いているようだ。別にルナの事を疑っているわけではないが、こんな城の地下に船があるなんて信じられなかった。
「…あと、どれくらいでつくんだ?」
「もう少しです…。あっ! 見えてきました」
ルナが小走りになり、重そうな扉を開けると、眩い光が差し込んできた。少し時間が経ち、目が慣れてくると、数え切れないほどの本棚が見えた。
「沢山あるな…。でも、こんなところに図書室って…不便じゃないか?」
「そうですね…」
「…じゃあ、なんで?」
「…ここは後から作られたのです」
ルナの言葉の意味を考えながら後をついていくと、更に奥に厳重に鍵のかかった扉があった。ルナはその扉を開けて、その部屋の奥の本棚を動かすと鍵のかかった小さな扉があらわれた。
「…ここなのか?」
「はい…。ここも後から扉をつけたそうです…。誰かが作った恐ろしい兵器を隠す為に…」
「…恐ろしい兵器?」
ルナは鍵を開けて中に入って行った。シャル以外は中腰になり更に下へ下へと階段を降りて進んでいった。




