第百十三話
「…そういえば、どうやって開けるんだ? 流石に重すぎて開けれそうにないぞ?」
「うーん…。どっかにレバーとか…。ないね…」
「…ん? ノスク! 剣が光ってるぞ!」
「えっ!? ほっ、ほんとだ!」
ノスクが扉に近づくと、傘のような剣は青く光り、急にポツポツと雨が降りだした。そして、拡散した青い光が集まっていき線状の光が扉に当たると、音をたてながらゆっくりと重そうな扉が開いた。
「…ひっ、開いたな」
「…うん」
「…だな」
「…ですね」
あまりの不思議な事態に僕達は開いた扉をじっと見ていたが、特にこれ以上はないようだった。僕達はランプに火をつけて、警戒しながら石畳を歩いていると、後ろの方で先ほどの大きな音が聞こえてきた。どうやら扉がしまったようだ。
「…なんだこれ?」
そのまま歩いていくと、青い石版が置いてあった。なにか書いてあるようだ。
「よめない…。ノスク、わかるか?」
「うーん…。これは古い猫語かな…。たぶん、こう書いてあるよ…。彼の地の…恐るべき…大罪の化身を…勇者と共に…封印する…。これより…先は…青き剣と共に…。あとは文字がかすれてよく見えないや…」
…大罪の化身? …どういう意味だ? それに、青き剣と共にって…。まあ、進めばわかるか…。
「よし…ここからは隊列を変更して進もう」
「隊列?」
「ああ。先頭は…」
僕はノスクを先頭にして次にアバン、ルナ、僕の順番で歩いた。まあ、職業別にいえば、遊び人、盗賊、戦士、勇者ってところか…。なんか頼りないな…。逆勇者フォーメーション…。
「…なっ、なんで、僕が先頭なんだにゃ!?」
「僕は回復魔法が使える。みんなが無傷で帰るっていう前提を忘れないでほしい」
つい忘れてしまいそうになるが、この世界はゲームのようでゲームじゃない。まあ、ポーションを使ったり、寝たりすれば回復する事ができるけど、リカバリーツーになってくると話は変わってくる。回復役である僕は絶対に死ねない。
「やっぱり、夢じゃなかったんだ! アルのあの魔法!!」
「俺も夢かと思っていたぜ…。あんな恐ろしい魔法初めてだ…」
「ええ…。私も変な夢かと思っていましたが、現実だったのですね。……恥ずかしかったです…」
「ごめん、ごめん…。でも、危ない魔法だからなるべく怪我しないようにね?」
「うん…。わかったよ…。アル…僕も頑張る…」
ノスクは剣を抜くと、脚をブルブルさせながら、ゆっくりと前に進み始めた。流石に入口が頑丈な扉でしまっていただけあって、モンスターがいる気配はないが、下手に安心もできない。こういった遺跡にはとんでもないトラップがあるのがお約束だ。僕も警戒しながら慎重に歩いていると、妙に青白く光る空間が前方に見えた。
「いたっ…!」
「…大丈夫か?」
「ひどいトラップだにゃ…。誰がこれ外したんだよ…。もう…!」
ノスクは床板の外れた箇所に引っかかり、盛大にぶっコケていた。ノスクは顔をさすりながら立ち上がると、壁に立て掛けてあった外れた光る床板をはめた。
「確かにな…。でも…なんか…変わった部屋だな…」
「だめだニャ…」
「びくともしねぇ…」
そのなにもない部屋の中には硬い扉があり、何度も押したが全く開かなかった。ノスク達はグテっと扉に寄りかかった。
「なるほど…。仕掛け扉か…。ノスク、手帳を見せてくれ…」
「うん…」
「なにも書いてないようですね…」
「そんなことはない…。どこかに…。ノスク…前のページに戻ってくれ!」
「…えっと…どこ?」
「そこだ…。なるほど…。少し借りるぞ…」
手帳をペラペラとめくっていき、女性のような絵をみるとピンっときた。僕は手帳を持って空中へ浮かんだ。
「みんな…俺の指示どおりに床板をずらしてくれ!」
パズルのように床板をずらしていくと、一枚の絵ができあがっていった。これを手帳の絵と全て同じようにすれば扉は開くだろう。
「あとは…こいつをハメるだけだな…。よっと…。これで開くはずだ…」
「アル様、流石です…」
感心した様子でルナは小さく手を叩いていた。僕は口元を触りながら、カッコよく決めた。
「ふっ…。俺ぐらいになれば、こんなもんは朝飯前だよ…」
「ねぇ…アル…。開かないんだけど…」
ノスクは微動だにしなち扉を指差した。僕はそれを見て、ガクッと肩を落とした。
「たっ、多分…ロックが外れるタイプなんだよ!」
「そうですよ。貴方は早とちりしすぎです!」
「じゃあ、開けるよ…。はぁ…はぁ…。開かないんだけど…」
「そっ、そんなはずは…。うぉらぁーー! はぁ…はぁ…よいしょー! ……ダメだ。びくともしない…。なんで開かないんだ…。…ん? あっ、あれ…!?」
僕も思いっきり扉を押してみたが、全く開かなかった。だが、ふと扉に寄りかかると、扉は横にズズズッとずれていった。ノスクは疲れきった声をだした。
「…もしかして、最初から横にずらすんじゃなかったの?」
「…しっ、失礼ですよ! アル様はあんなに自信に満ち溢れてたんですから、少しは気持ちを察してあげてください! 全く…もう…」
「…お前が一番ひでえよ」
「よっ、よし…扉も開いたことだし…。次に進もう! ほら、…早く早く!」




