第百十話
「よし…ついたぞ…」
「えっ…。ここって…。…ねえ、間違えてない?」
「いや、あってるぞ…」
「なっ、なんだ…お城じゃない…。…お城?」
僕は逃げようとするアリスの腕を慎重にガッと掴んだ。ミニゲームで鍛えた反応速度をなめるなよ…なんて思っていると、細い腕にしては力が強く、腕をブンブンさせてなんとか逃げようとしていた。
「お前はお留守番だ…!」
「…嫌よ、嫌! 私もいく!」
「背中をつねるような、お淑やかな女性とは危険な場所にはいけないからな…」
「あっ、あれはアルが悪いんでしょ!?」
「はぁ…。それにな…仮にもエルフの王女様なんだ。ルナにもさっき頼まれたし…。アリスを放って置くと国際問題にもなりかねないんじゃないのかな…」
「そっ、それは…そうかもしれないけど…」
「門番が近づいてきてる…。…あんまり騒ぐと、せっかく誤魔化した噂が真実に変わるんじゃないのか?」
「ぐっ…」
「…どうかされましたかにゃ?」
近づいてきた門番に事情を説明すると、門番は慌てて仲間を呼んでアリスは城の中に連れていかれた。アリスの背中は丸くなり、借りてきた猫が連行されているように見えた。
「……ちょっとだけ、ご機嫌をとっとくか…」
僕は近くの雑貨屋にいき、ポーション等の回復アイテムを買った後に、ネコ型のおまんじゅうを買って空を飛びアリスを探した。
「いたいた…。なにしてんだ、あいつ…」
アリスは窓ガラスに張り付き、僕を睨みつけていた。僕が空を飛んで窓に近づくとアリスは窓ガラスをゆっくりと開けた。
「作戦成功してよかったわね…」
「そんな睨むなよ…。はい…プレゼント…」
アリスはお饅頭の紙包みをビリビリと裂くと、僕の顔を睨みながらお饅頭をムシャムシャと食べ始めた。
「……うまそうだな…。僕も一口…。…いてっ!」
アリスはお饅頭に伸ばした僕の手を叩くと、何事もなかったかのようにムシャムシャと食べ始めた。僕は手をさすりながら話した。
「はぁ…。…実はアリスにやってもらいたいことがあったんだ」
「……こんなお城の中で?」
「シオンさんやシャルがきたときに状況説明できるやつがいるだろ? あの王様、適当すぎてわかんないと思うんだよ…」
「まぁ…そういうことなら…」
「じゃ、いくからな…」
アリスは少し納得したようで睨むのをやめてくれた。僕が機嫌が治ったのを確認し、窓から飛び立とうとすると、アリスは呼び止めてきた。
「…アル!」
「…どうした?」
「…無事に帰ってこなかったら、そうなるからね!」
「おっと、投げるなよ…! …そうなるって……。ああ…そういうことね…。…りょうーかい!」
アリスはお饅頭の中から一つを手に取り僕にポンっと投げてきた。僕は怒った顔の猫饅頭を口に加えて空に飛び立った。
僕は誰もいない林の中にきた。ここに来た理由は二つ…。一つはMPを補充する為だ。僕はスネークイーターを解除して魔人の姿になったが、相変わらずとんでもないHPとMPだ。誰かに見つかる前にさっさとチャージしよう。
「……ん? …あれ? MP…多くないか?」
僕はステータス画面からアイテムデータを選択したが、魔石のMPが二百万になっていた。強化なんてした覚えは…。
「……まてよ…。強化…強化か…」
……心当たりが一つだけある…。ノームのやつか…。
考えてみれば土属性のノームなら魔石のポテンシャルを最大限に増やせるのかも知れない。僕はスネークイーターを発動して、元の姿に戻った。
「なかなかやるじゃないか。帰ったら褒めてやろう。さて…次は新スキル試してみるか…。…えっ? …うわぁあああああ!」
ステータス画面からスキルを操作しようとしたときにある異変に気付き、あまりの驚きに尻もちをついてしまった。元の姿に戻っていたはずなのに、一瞬右手が元に戻っていなかったのである。
「はぁ…はぁ…はぁ…。なっ、なんだったんだ…いまの…。いや、なにを驚いているんだ……。別にいいじゃないか…。現実世界じゃないし…」
この世界は所詮、僕のいた世界じゃない…。関係ないじゃないか…。ここでの姿なんて…。…でも、現実世界に影響がないなんて…本当にいい切れるのだろうか?
「……」
スネークイーターは、もしかすると解除時間によって…もしくは解除回数によって、効果が弱まるのかも知れない…なんてこと…。
「ないとは言い切れない…か…」
あまり…スネークイーターを解除しないほうがいいな…。さて…予定通り新スキルを試してみるか…。
「さて、スキル…ドゥラスロールの説明は…」
〈地の虚構を従え、真実となせ〉




