第百八話
「なるほど…。わかったよ」
「……皆さんはそれで国外にでたのですか?」
「多分違うと思うよ。僕の父さんは母さんと一緒に世界旅行中さ…。まあ、最近はノル様と一緒になにかやってるみたいなんだけど、よく教えてくれないんだよね」
僕がふと白猫の方を見ると複雑そうな顔をしていたが、ノスクがノル様というワードをだすと、白猫は尻尾を振りながらすごく食いついていた。
「ノ…ノル様はお元気なのですか!?」
「便りによると元気そうだよ…。アルも最近あったんでしょ?」
「元気そうだったけど…。なにかをしてるって感じじゃなかったけどな…。…まぁ…他のみんなもそうだけど、宿屋を経営してるくらいかな」
「そうなんですね…。宿屋…。……後で詳しく教えてください」
白猫はものすごく興味がありそうな目をしていたが、今はあの宿屋でイベントを発生させないほうがいいだろうと思い、話をそらすついでにノスクに気になっていたことを聞くことにした。
「わっ、わかった…。また今度ね…。…そういえば、ノスクの師匠のフォレス様ってなんの師匠なんだ?」
「……僕は完全に闇に堕ちてた…。でも、そんな時…心の師匠フォレス先生と出会ったんだ」
「…それで?」
「師匠はそれでもいいって言ってくれた。僕は…そんな優しい言葉が嬉しかった…。その言葉に救われたんだ…。僕が闇から帰ってこれたのは師匠のおかげなんだ…。本当に…本当に師匠からは沢山の事を教わったんだ」
「…いい師匠だったんだな」
「うん。師匠はいってた…。最後に師匠とあった時のあの言葉が今でも忘れられないんだ…」
「…なんていったんだ?」
ノスクは少し恥ずかしそうにして頭を掻いていた。こそばゆくなるような恥ずかしいセリフなのかと思っていたが、正直、聞いたことを後悔するくらいしょうもなかった。
「それはね…。…エルフのおんにゃの子にモフモフされまくってくるのにゃー。そして、僕はおんにゃの子の世界制覇するにゃー!…ってね」
「…あいつクズ猫じゃねえか!」
「最低ね…」
「しっ、師匠はクズ猫なんかじゃないにゃ! ちょっとだけエッチなだけだにゃ!」
闇と決別する試練的なイベントかと思っていたのに…。なんかがっかりだな…。
「はぁ…とんだパラディンだな…」
「いっ、いわなきゃよかったにゃ! …ん? パラディンってなんだにゃ! まっ、まさか悪口かにゃ!」
「むしろ…いい言葉だよ。昔、やったゲ…。ごっほん…。昔、あった人で同じような人がいてね。闇に堕ちてたんだけど、闇と決別して世界を救ったんだ」
「かっ、かっこいいにゃー。今はどこにいるんだにゃ?」
ノスクは目を輝かせながら聞いてきたので、僕は自分の胸を指さして答えた。
「ああ…ここにいるよ…」
あのゲームは色々な意味で思い出深い…。ラスボス手前でセーブして次の日ゲーム機のスイッチを入れたら、オープニングの飛空艇が流れてきて泣きそうになったのは今でもいい思い出だ…。ダメなのはわかっているけど、現実を受け入れたくなくて何回再起動スイッチを押したか…。
「まっ、まさか…。しっ、死んじゃったのかにゃ!?」
「いや、生きてるよ…。今も…誰かの世界を救ってるさ…」
まあ、最近だとリメイクしてセーブデータが消えるなんて事はなくなったからいい時代だよな…。本当にあの頃のゲームは衝撃に弱かったなあ…。
「なんだかカッコイイにゃ…。それに比べて僕は本当にだめな猫だにゃ…」
いや…意外と似ているのかもしれない…。
「まあ、俺がいうのもなんだけど、ノスク以上にダメ人間だったよ…」
「ぼっ、ぼく以上に!? …ニャートだよ!?」
「うん…。でも、世界を救ったらそんなの帳消しだよ」
「そっか…。世界を救ったらか…」
さてと…。あとはさっきからずっとひれ伏しているこいつに声をかけるか…。
「おい、黒猫…」
「本当にすまにゃぁあい!」
黒猫は思いっきり、僕に抱きついてきた。敵意のないことはわかったが、体が大きく黒豹に襲われているみたいで普通に怖かった…。
「わかった! わっ、わかったから、抱きつくな! はぁ…はぁ…。やっと…離れたか…」
「でも…かねが…かねがいるんだ…。施設にいる小さい奴らに食わす為に…」
「そっか…。じゃあ、やるよ…」
僕はポケットのマタタビの葉を全て渡した。まぁ…僕がこんな物持ってても仕方ないだろう。
「…えっ!? くっ、くれるのか!? …俺が嘘をついていたらどうするんだ。こんな大金…」
「信じるさ…。まぁちょっとした罪滅ぼしだよ。受け取ってくれ…。…でも、これが最初で最後だからな」
僕は過去を思いだしていた。それは、ある冬の寒い日…僕は町中で捨て猫に出会った。でも可愛そうだなと思うだけで…僕はなにもできなかった…。あの猫がどうなったのか僕は知らない。何故なら結末を見ないように、その道をしばらく通らなかったからだ…。
「…おっ、俺には心当たりがないぞ…」
「気にしないでくれ…。まっ…ただの気まぐれだ…。…さて…そろそろいこう…」
「うっ、うん」
「ええ…」
「…まっ、まってくれ! おっ、お前たち、これを持って帰れ! 絶対になくすんじゃねえぞ! …俺にはやることがある」
黒猫がマタタビの葉を手渡すと、猫達は心配そうにこちらを時々振り返りながら何処かへ行ってしまった。
「…なんなんだ?」
「…あんたに俺の命をやる!」
命をやるか…。
「じゃあ、命令だ」
「なんでも聞くぜ!」
「絶対に死ぬな…。死ぬような戦いをするな。死にそうになったら逃げろ…。命を大事にだ…。…いいな?」
僕は黒猫の目をジッと見ながら命令した。僕の命令に黒猫は驚いていた。
「あっ、あんたもボスと似たようなことをいうんだな…。あんたの…あんたの名前を教えてくれ」
「アルだけど…」
「わかった…。あんたの名前覚えたぜ。…俺の名はアバンだ。よろしく頼む…」
さて、仲間も増えたしそろそろいくか…。
「よし…みんないくぞ…!」
「うっ、うん」
「おう!」
「ええっ!」




