第百四話
周りを見渡すと、さっきから誰一人話を聞いていない。聞き耳を立ててる感じでもない。呑気にどんちゃん騒ぎしている連中ばかりだ。
「だめみたい…。まあ、この僕でも剣が光るまで嘘だと思っていたから仕方ないよ。王様も半分嘘だと思っているくらいだし…。一応、手伝ってはくれてるけど…」
「なるほどな…。でも、ここで仲間を集める意味なんてあるのか? 二人しか空間移動できないのに…。…っていうか、複数人で空間移動魔法が発動できるかテストしてみたのか?」
「うん…。その……旅行にいくとき…ね。……ごめん…」
「…まぁ…便利だもんな……」
「でっ、でもね、仲間を集める事には意味があるんだ。空間移動を使うには移動先の場所がイメージできないとダメなんだよ。だから、一回は自力で行かないといけないんだ…」
「ふーん…」
ノスクは申し訳なさそうな顔をしていた。僕は目の前に置かれた香ばしい匂いのするパンを手に取ってかじった。
でも、なかなか面白い魔法だな…。一回いけば雨の日なら何回でも行けるのか…。まぁ、MPは消費するのかもしれないけど…。
「雨の日は通勤ラッシュを避けれるってことか…」
「……ツウ…キン…ラッ…シュ?」
「……今のは忘れてくれ。破滅の呪文だ…」
「うっ、うん…。それで…今からいくところは本当に恐ろしいところでさ…」
「…どこにいくんだ?」
ノスクがさっきの本を開いて指差すと、そこには遺跡のような絵が書かれていた。なんか禍々しさを感じる挿絵だ。
「…闇の王の墓場さ。今まで倒した尻尾を封印しているのが…。ここってわけなんだ…。まぁ、そこにいってもなにもないかもしれないけど…。現状、なにもヒントがないんだ…」
「なるほど…。…でも、なんで尻尾だけなんだ?」
「確かに不思議ね…」
「僕もよくわからないけど、倒したら尻尾だけになるらしい…。本当に不気味で…呪いみたいだろ?」
キノコのモンスターみたいに増殖するタイプだと厄介だな…。
「…なんとなくわかったよ。…でも、ギルドみたいなとこに協力してもらえば早くないか?」
「それがここなんだよ…。あそこに貼ってあるだろ?」
ノスクは張り紙が沢山貼ってある壁を見ていた。僕達は立ち上がり確認すると、確かに書いてあった。
〈依頼 闇の王の討伐〉
〈危険度 S〉
〈期間 討伐完了まで〉
〈報酬 不明〉
「…報酬不明?」
「…ひどくない?」
「仕方がないだろ…。実際…僕が報酬払うわけじゃないし…。討伐したら王様に払って貰わないと…」
猫の足跡がついたその依頼書をみて少し考えたが、こんな報酬じゃ誰もよってこないだろう。なにかいい方法は…。…そうだ!
「うーん…そうだ! …そういえば、ちょうどいいものがある」
「…どうしたの?」
「…そっ、それは……!?」
「王様に金色の葉っぱを貰ったんだ。これを報酬にしよう」
「きれい…。それって…もしかして…オウネコ…むぐぐ!」
ノスクがすぐに口を塞いだが遅かったようだ。周りの猫達が一斉に立ち上がり、獲物を狩るようなギラギラとした目でこちらを見ている。なにかまずいことをいってしまったか…と思っていると、ノスクは慌てた様子で僕の背中を急にさすり始めた。
「おっ、お酒の飲み過ぎだにゃー! ほら、みっ、みず、飲むにゃー!」
急に焦ってどうしたんだ? やっぱりまずい事でもいってしまったのか? …まあ、話をあわせておこう。
「うっ、気持ち悪くなってきた…。ちょっと、外の空気を吸いたい…」
「そっ、そうだにゃ! よし、外に行くにゃー!」
「もう…まだ食べたかったのに…」
僕は千鳥足でノスクとアリスに肩に抱きついて、人気のない路地まで運んでもらった。食いしん坊のアリスはちょっと不機嫌になっていた。




