第百二話
「…注文したから、料理はもう少し待っててね。…ドリンクは…もう来たみたいだ」
「ありがとう…。それで…さっきの話の続きなんだけど…」
「うん…。この剣が反応するときは、本当にろくでもないことが起こるんだ…。そして、従わないと…。もっと…とんでもないことになる…」
危機的状況を察知する力ってことか…。…ん?
「じゃあ、既にとんでもないことに巻き込まれてるってことか!?」
「…ごめん……」
立ち上がって怒鳴ると、ノスクは下を向いて、しょんぼりとしていた。僕は周りの視線を感じながら、席に座って、ドリンクを口に入れた。少し声が大きかったかもしれない。
「…でも、船とかでもこれたんじゃないのか?」
僕だけじゃ…戦力的に少し不安だ…。せめて…シオンさんだけでも連れてこれれば……。…あれ…なにか忘れてるような気がするな……。
「船だと一週間以上かかるよ…。もうそんなに残された時間はないかもしれないんだ…」
「なるほどな…。……でも、こんな酒場でなにしてるんだ? 遊んでるってわけじゃないんだろ?」
ノスクはバッグの中から、ボロボロになった小さな本を取り出し、テーブルの片隅で広げてあるページを指さした。そこには青く光り輝く剣を持った猫と、黒い線のような雷雲が描かれていた。
「仲間を探しているんだよ。伝説によるとネズミの王はとんでもないやつなんだ」
「…そんなに危ないモンスターなのか?」
「うーん…。モンスターじゃないみたいなんだよ。どちらかというと呪いに近いらしい…。僕も詳しい事はわかんないよ…」
やっぱり、黒い魔物じゃないのかもしれないな…。でもまあ、困ってるみたいだし、協力してあげるか…。
「…伝説ではどうなっているんだ?」
「僕のご先祖様の本には……蒼き剣が光る時、闇の王が復活し、全てを滅ぼすだろう…。滅びの道から逃げるには、蒼き剣の意思と勇者を繋ぐ事…。…って、かかれてたんだ」
「なかなか、物騒だな…。この闇の王ってのが、ネズミの王の事なのか?」
「多分…。過去にも何回かあったなんて、僕も冗談半分に聞いてたけど…。まさか、僕の代のときに光るとは思わなかったよ…。…あっ、料理がきたみたいだね!」
「なかなか、おいしいそうだな…」
「うん。ここの料理はおいしいんだ。冷めないうちに食べよう」
ウエイトレスはミートボールやパン、スパゲッティなどのいくつかの料理を運んできた。僕はテーブルに運ばれた料理を眺めていた。
「わぁ…。これなんて、すっごくおいしそう…。いっただきまーす!」
「…おい、ちょっとまて……」
「…どうしたの? 早く食べないと冷めちゃうわよ」
テーブルには見慣れた赤い服を来た奴がいつの間にか着席していた。そいつはバカみたいに大きな口を開けてスパゲッティを口に入れ、モグモグと食べていた。
「…なんでお前がここにいる?」
「なんでって…。…一緒にきたじゃない? 私が急に出かけたアルを追って空を飛んでたら、制御できなくなって…」
僕は段々とここに来たことを思い出し、頭を押さえた。お酒を飲んでないのに頭痛がする。なんなら二日酔いだ。
「…一人しか連れてこれないんじゃなかったのか!? こいつは連れてきちゃダメだ!」
僕は大きな声をだして追及すると、首をブンブンと横に振っていた。彼にも想定外の事態らしい。
「ぼっ、僕は知らないよ…! どうやって、きたの!?」
「だから、あの水たまりの中に入ってよ…」
「…そんなバカにゃ!?」
「……」
「……ねぇ…早く食べましょうよ」
「……」
「ははっ…はははは…。…食べて、食べてっ! ここは僕のおごりだよ!」
戦力的にかなり不安になってきた…。
「…アリスだけ返すことって……」
「はい…。あーん…!」
「ふぐっ…! うっ、うっ…」
うまい…。
できないのかって言おうとすると、アリスは強引に僕の口にスパゲッティを入れ込んできた。僕の口はスパゲッティで一杯だ。
「…おいしいでしょ?」
「……」
はぁ…。……先に食べるか…。
僕は不安な気持ちを押さえて、とりあえずはお言葉に甘えて料理をいただくことにした。一通り食べ終わると満足そうな表情をしたアリスに声をかけた。




