第百一話
「……ん?」
……ここは? 確か、水の中に落ちて…それから…。
「ようこそ…ワシがキングだにゃ…」
起き上がり前を見ると豪華な装飾がついた椅子に白いデブ猫が眠そうな目をして座っていた。周りには剣をもち、鉄兜を被った猫の兵士達がズラリと並んでいた。まるで復活の呪文を唱えたあとのレトロなBGMが聞こえてきそうなところだった。
…ここはどこだ? さっきまで森の中にいたのに…。…どういう事なんだ? 目の前の王様っぽいデブ猫に聞いてみるか…。
「…あの…王様ですか?」
「そうじゃ、わしがキングだにゃ。しかし、勇者よ…。空間移動で気絶してしまうとは情けないにゃ…」
…空間移動? そうか…。段々と思いだしてきたぞ…。…って事は……。
僕はよろめきながら、立ち上がった。頭がボンヤリとしているが、この状況を整理すると、さっき急に現れた傘のような剣を持ったあの虎柄の猫に移動系の魔法でここに勝手に連れてこられたのだろう。
「…もしかして、ここ…猫の国ですか?」
「そうだにゃ。ようこそ、勇者よ。我が国へ…。まずはこれを授けよう」
王様が指示すると、きれいな黄金に輝くお盆を兵士が持ってきた。なにか薄っぺらい妙なものが乗っている。
「…これは?」
「それはオウネコマタタビの葉だにゃ。売ればそれ一つで家が建つであろう…。受け取ってくれ。まずは前金だにゃ」
「はっ、はい。…ありがとうございます」
よく見ると、お盆の上にはキラキラと輝く緑色の葉っぱが三枚のっていた。僕はそれを受け取ったが、お盆の方がよっぽど高級感に溢れているように見えた。
これで家一軒…。ただの葉っぱにしか見えないんだけどな…。
「さて、エルフの王からは話を聞いておる。見事、ネズミの王を倒した暁には…」
…ネズミの王?
「…黒い魔物じゃないんですか?」
「…黒い魔物? …まあ、詳しいことは酒場にいるお主を連れてきたノスクに聞いてくれ。では、健闘をいのるぞ」
…どういうことだ? うーん…。状況がいまいち飲み込めない。
「…あの…もう少し詳しく…」
「…まあ、詳しいことは酒場にいるお主を連れてきたノスクに聞いてくれ。では、健闘をいのるぞ…」
くっ、繰り返しやがって…。なんだ、この初期のRPGゲームみたいな展開は…。まあいいか…。城をでよう…。
「では、王様…。失礼します」
僕は城をでて、周りの猫達に酒場の場所を聞きながら辺りを探すと、ニャンダーの酒場と看板にかかれている場所を見つけた。どことなく前に止まった宿屋に似ていた。
「ここだよな…」
酒場に入ると、当たり前のように猫がお酒のようなものを飲んでニャアニャアと談笑していた。このお店は割と広いようだったが、テーブル席は大人気でほぼ満席のようだ。僕を連れてきたあの猫…ノスクをさがすのはなかなか難しそうに思えたが、ふと視線を変えると、誰もいないカウンターに虎柄の猫が背を向けて、ポツンと座っていた。
「…みつけたぞ! おい、いきなり…!」
「きっ、君か! 急いでいたんだ…。本当にごめん…」
文句の一つでも言ってやろうかと思っていたが、何度も頭を下げて謝ってきたので、流石に言いづらくなってきた。まぁ…先に理由くらいは聞いてやろう。
「…で、なんでいきなり連れてきたんだ?」
「君の仲間も連れてきたかったんだけど、この魔法剣には厄介な制約があって…」
ノスクは傘のような青い剣を見せてきた。先端は尖っていたが、切れ味も鋭くなさそうで、遠目で見ると傘にしか見えない。まぁ、安いビニール傘というよりは高級傘のようなしっかりした作りのランスみたいな剣だ。でも、名前のとおりだとしたら、魔法が使える剣だが、パッと見る限りはそんな物騒なものには見えない。
「…厄介な制約?」
「…一人しか別の場所に連れてけないんだ」
「…そうなのか…。でも…だったら、何回か発動すればいいんじゃないのか? ちょっと、面倒くさいけど…」
「うん…。そうなんだけど…。二つ目の制約が更に厄介で…。基本的に雨が振らないと使えないんだ」
「…雨? …でも、雨なんて降ってなかったよな?」
僕は後ろを向いて窓から外の景色を見てみると、窓持ちのいい青空が見えた。どうやら、こっちも降ってないようだ。
「実は例外があって…。この剣には…意思みたいなものがあるんだ…」
「つまり…機嫌がいいときは雨が降らなくても使えるってことか?」
「そう…。君を見つけたとき…何故かこの剣が反応したんだ…」
「…でも、剣が反応したからって俺なんか連れてきても、役に立たないかもしれないだろ?」
「過去にもあったんだ…。似たようなこと…。まっ、ここじゃなんだし…あそこのテーブルに移動しよう」
「ああ…」
後をついていくと、店の奥に予約されていたテーブルがあった。僕がテーブルの前に着くと、椅子を引いてくれたのでしばらく着席して待っていると、ノスクはメニュー表を手に取り、いくつか料理を注文していた。




