第百話
僕は警戒しながら周囲を確認した。その奇妙な声は全方向から聞こえ、上空から聞こえてくる事以外は、まるで位置がわからなかった。ただ、声も大きくなり、段々と近づいている気がする。
「…ぃや〜!」
「……」
不気味なモンスターだ…。どこだ…。どこにいる…。
「…はじめまして!」
「…でたな、モンスター!」
僕は剣を抜いて、さっと振り向くと帽子を被った虎柄の猫がビクビクしながら立っていた。なぜか晴れなのに青い傘を持っていて黒っぽい長靴を履いている。でも、よく見るとどうやら傘じゃなくて剣みたいだった。
「モンスターって…。ひっ、ひどいよ…」
「ごっ、ごめん…。勘違いみたいだ…。…君は?」
「ぼっ、僕はノスク…。君を迎えにきたんだ」
「…俺を?」
「うん…。説明はあっちでするから早くきて…。もう、そんなに時間がないんだ!」
虎柄の猫は僕に近づいて傘のような剣を手に持ち剣先を地面に刺すと、そこから水たまりのようなものが広がってズブズブと僕たちの体はその水の中に入っていった
「…ええっ!?」
「…さあ、いくよ!」
「ちょっ、ちょっと、なんだこれ!? 沈んでく…。…おっ、おい、どこにいくつもりなんだ!?」
「猫の国だよ…。ごめん…。すぐつくから、少し黙ってて…」
「いや、もっと説明を…」
「……」
その猫は魔法に集中しているようで、まるで話を聞いてなかった。僕は一旦、その水の中からでようとしたが、ぬかるみにはまったみたいに足を動かすことができなかった。
「…きぃやぁあああ!」
「なんてこった…。まずいぞ…。こんな時にさっきの妙な声が近づいてくる…。…ん?」
「…誰か止めてぇええ!」
「……って、アリス!? なにやってるんだ!? あのバカ…!」
上空でグルグルと旋回しながら、赤いものが飛んでいたので、僕は風魔法を発動して引き寄せた。
「…いやぁあああ!」
…なんだ? 風魔法がアリスの中心から発動してる…? なるほど…。そういうことか…。
どうやら、アリスの風魔法が不安定に発動して、この辺りを破れた風船のように回っていたようだった。
「だっ、誰か…助けて…」
「アリス、風魔法の発動を解くんだ!」
「…アル?」
上空から目を回したアリスがゆっくりと落ちてきた。僕は本当のお姫様にお姫様抱っこをした。
「もう大丈夫だ…。全く…」
「うぅ…」
「…どうした? …泣いてるのか? …ん?」
小刻みに震えていたので、心配して顔を覗き込むと、段々と青りんごのようにアリスの顔色は悪くなっていった。
「うぅ…。なんか…でそう…」
「…やっ、やめろ! こんなところでだすな! まって…。溺れる…。…おっ、溺れるー!! 俺、泳げないんだぁああー!」
アリスを持ったせいで、更にスピードをましてズブズブと沈んでいた。僕は深い深い水たまりの中に落ちていき、そんなこんなで気付けば猫の国についていた。




