アル④
「ん…ぅ…」
寝苦しさに眉をひそめながら、アルはギチギチと身体を動かす。
重い……身動きが取れねぇ……。
うっすらと目を開けると、暗闇に慣れた視界が少しずつ輪郭を捉え始める。
なかなか起動しない頭で記憶を辿る――メシを食って、珈琲を飲んで……そうだ、リューネは?
勢いよく身を起こそうとした瞬間、右腕にずしりとした重みを感じる。
何かが乗っている。
「………は?」
視線を向けると、すやすやと穏やかな寝息を立てるリューネの頭が、しっかりとアルの腕に寄り添っていた。
さらに、ぎゅっとしがみついている。完全に安心しきった表情。
規則正しい呼吸が、静かな部屋の空気に溶け込んでいる。
(よく今まで落ちずに眠れていたものだ。いや、感心してる場合じゃねぇよ)
毛布が掛けられている。
(これはベッドルームのやつだ……えっと、つまり……俺が寝落ちしたのか?寝落ちした俺が悪いのは仕方ねぇとして、ソファで同衾……?ベッドルームがあるの分かったなら、そこで寝ろよ……コイツは……どうしてこう……)
「はぁぁぁ…」
アルは深々と息を吐く。
リューネの無防備さには、ここへ来てずっと振り回されっぱなしだった。
こうして寄り添われて、まるで頼られているかのような感覚に、妙な胸のざわつきを覚える。
(……とにかくベッドに運ぶか)
慎重に動き、リューネを毛布ごと抱き上げる。その瞬間、膝裏の布の感触がない事に気付く。
(シャツだけか――服が大きすぎて眠りにくかったのかもしれねぇな。)
探して着せるのも面倒だ。ロングパンツは諦めた。
そのままベッドに寝かせると、リューネは無意識のまま、ぎゅっとアルの服を掴む。
アルはまた一つ深いため息を零した。
(……ったく、どこまで手がかかるんだよ)
覚悟を決めて、リューネの隣に横たわる。
毛布を引き寄せ、体を包み込む。
(さっきまでソファで同衾してたんだ。もう今更だな……)
枕を手繰り寄せ、眠りに落ちていく彼の身体をそっと抱き込むとふわりと香る石鹸の匂いが、微かに鼻腔をくすぐった。
「お前、こんなに俺を翻弄して……どうすんの?」
耳元で囁くと、リューネがくふっと笑みを浮かべたような気がした。
それに気づきながら、抱きしめる力をわずかに強める。
髪へと唇を落とし、アルも静かに眠りへと落ちていった。




